アメリカの２ヶ月連続５０万人台の雇用者減少について

■悪材料出尽くしで新大統領へバトンタッチ

アメリカの失業者数はすごいですね。昨年１２月は５２万４０００人も雇用者（非農業部門）が減ったそうです。１１月が５８万４０００人の減少でしたから、２ヶ月連続の５０万人台の減少だそうです。

リーマンの破綻を契機に一気に増えてきたね。これで、２００８年は１年間の合計で２５８万９０００人の雇用者減少だそうだ。厳しい数字だ。

いつ以来ですか。

１９４５年に２７５万人もの減少があったようだ。それ以来だから６５年も前だね。

あら、じゃあ、あなたのお歳と一緒じゃあないですか。あなたは、大不況と、ご縁があるのですね。ああ、嫌だ、かんべんしてくださいよ。

生まれた時が不況だったかどうかは分からないけど、両親は苦労しただろうね。小学校へ行く頃になって、僕の場合、弁当を持って行けなかったから、ひもじい思いをした記憶はある。しかし、小さい頃は、「それが普通」と思っていた。良い時を知らないのだから。同じように考えれば、今の若い世代の皆さんにとっては、むしろ良いことかもしれない。贅沢を知らないのだからね。社会全体に浮かれた気分がなくなり、勉強と努力の大切さが言われるようになることは、これからの日本には良いことだ。

すぐ、あなたは、人ごとみたいに言うのですから。子供たちの苦労も考えてやらなくてはいけませんよ。

お小遣いくらいは上げるけど、自分たちの生活は自分たちで築いていかなくてはいけない。自然界に生きる動物は、みんな、自分の命を守ることに全力なんだ。お説教になるから止めておくよ。

６５年前のアメリカはどのようにして不況から脱出できたのですか。

ひとことで言えば、政府の力に頼った。民間だけの力では無理だから。

どうして。元気のよい企業だってあったでしょうに。


■１１月分発表の時ほど株価には響かなくなった

仮に、あったとしても限界がある。どこかの大きい企業が破綻すると、みんな萎縮するようになる。今のアメリカがそうだね。そうすると、現金決済でないと取引きできないとか、銀行は企業にお金を貸すのをためらうようになる。子供に貸すのなら、返って来なくても、仕方ないで済むけど、企業間ではそうはいかない。民間同士では経済が動かなくなる。結局、政府が道路、橋、河川工事などにお金をつぎ込んで仕事を作り出すんだ。それをきっかけに経済を活発にする。

今度もそうなの。

そうだよ。オバマ新大統領は７０兆円とか８０兆円と言われているけど、政府がお金をつぎ込んで仕事、言い換えれば「需要」を作りだすことを約束している。

そのためですか。雇用統計の悪い数字が出たのに、前週金曜日は、ＮＹダウが１４３ドルしか下げなかったのですね。大きく下げてもおかしくない雇用数字だったのに。１１月分の雇用統計を発表した時は３００ドルくらい安かったと思うわ。

いいところに目をつけたね。ＮＹダウは、悪い材料に、だんだんと慣れてきたというか、影響を受け難くなってきた。マーケットは、経済の悪いことは十分に承知している。「１００年に一度」、という言葉が今では世界の共通になっているほどだから。いまさら悪いことを言われるよりは、むしろ、ここはオバマ大統領の策に期待している。

■「大統領就任１００日間」に注目で４月頃がポイント

悪いところは、ブッシュさんが任期の間に、全部、出し尽くしたということですか。

そうだね。ひとつの企業でも、経営再建をするときは、悪い材料を出したうえで新しい社長にバトンタッチする。ところで、「好調持続」と「再建」は、どちらが難しいと思う？

それは、「再建」でしょう。

実は、再建のほうが楽という経営者は多い。社内がまとまりやすいプラス効果もある。「会社を潰すな」、と全員が一致団結して良くなった例は多い。今のアメリカは国民がひとつになって経済を立て直そうと言う気持ちになっている。好調な時は、組合の要求は強いし、社員の気持ちに緩みも出るから競争力が落ちて行く。今度のアメリカは、好調が続きすぎて、投機（バクチ）に手を出してしまって一気に悪くなった。

じゃあ、ＮＹダウは、しばらくは強いの。

強いと思うよ。「これ以上は悪くならないだろう」という心理と、「政策の効果がどのていど出てくるかを見極める」動きだと思う。「大統領就任１００日間」がポイントと言われるから、４月くらいがめどになるだろうね。仮に、政策の効き目がないようならドルが売られて「金相場」が急騰すると思うよ。金相場の動きも見ておくといい。前週、金関連で住友鉱山が急伸したんだ。

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