買い方と売り方の心理から見た今後の相場

■企業業績悪化で売り方優勢も意外に底堅く買い方に自信の芽

早いですね、今年も２月です。振り返っていかがですか。年初の出足は良かった相場でしたが。

そうだね、日経平均は１月７日には９３２５円まで上昇して、昨年１１月以来となる９０００円台に乗せたから、今年はいけるという期待を持たせるものだった。

どうして、だめになったのですか。あなたみたいに。

「あなたみたい」は余計だよ。歳なんだから、正月早々、そんなに頑張れないよ。ともかく相場では、ひとつは、昨年１１月５日につけていた戻り高値９５２１円に接近したことがある。

「戻り高値」というのは、どのような高値のことですか。

１０月２８日に２００３年の安値を切って６９９４円の最安値をつけたことは覚えていると思うけど、その最安値をつけた後に戻した高値のことなんだ。入院患者さんのデータが、一旦、良くなったのと同じだと思えばいい。しかし、その後、なかなかデータが良くならないため、退院できないでいるのと似ている。

じゃあ、今度の相場を見る上で、「戻り高値の６９９４円」は大切なんですね。ここを抜いてくるようなら、めでたく、相場も「退院」ということですか。

両手を挙げて健康体になりました、ということではないけど、少なくとも、緊急の最悪期は乗り越え、退院はできる。たとえば、「新値３本足」というチャートがあるんだけど、説明すると長くなるので端折るけど、このチャートが昨年１１月５日の９５２１円を抜いてくると、かなり大きい相場に発展するとして、チャート派は注目している。一方、信用取引で売っている人は、そうなったら損が発生するから上には行かせたくない気持ちは強いんだ。

信用取引で売る、というのは自分では持っていない株券を借りて売る行為で、「カラ売り」というのでしたね。相場が下がると、判断した時に借りて売るのですが、思った通りに下がらないと大変ですね。

そうなんだ。年初から、売り方はかなり売り攻勢をかけていた。業績が悪いから、最低でも１０月の最安値の６９９４円まで下がる、うまく行けば安値更新も見込めると思っていた。しかし、１月２６日に７６７１円まで下げたものの、それ以上は下がらず、逆に８０００円台を回復している。売り方は、少し迷いが出ていると思われる。

■次の業績材料は５月まで空白で当面は買い方優位の展開に

株というのは、材料も大切ですけど、「買い方」と「売り方」の戦いという目で見ることも大切なんですね。

その通りだと思うね。昔の北浜はすごかったよ。売り方と買い方の戦いがしょっちゅうで、仕手戦というんだけどね、中山製鋼などは大相場になった。しかし、自殺者も出たりして戦いの後はよくなかった。今は、個別銘柄での大きい戦いはないけど、マーケットは、必ず、買い方と売り方で成り立っているから、買い方、売り方のことを見ることは大切なんだ。今は、買い方と売り方の小競り合いの状況だと思う。年初から２月６日まで立会い日数は２４日間だけど、高い日が１２日、安い日も１２日間とまったくのイーブンなんだ。このあたりにも両者の力が拮抗していることが分かる。

これから、力のバランスがどちらかに崩れますか。

たとえば、「中間値」という見方から判断するやり方がある。ある期間での高値と安値の中間値段だけど、この中間値は、買い方と売り方の均衡点でもあるんだ。「３８度線」のようなものなんだ。今年の高値は９３２５円、安値は７６７１円、中間値は８４９８円で週末６日は８０７６円だから、今は買い方がやや不利と見ることができる。この高値と安値の期間を長期にとれば、中長期で両者の力のバランスを見ることに役立つ。たとえば、２００７年２月の高値１万８３００円と、０８年１０月の安値６９９４円で見れば中間値は１万２６４７円となって、買い方が大きくやられている姿が浮き彫りになる。この中間値１万２６４７円まで戻るには、アメリカの経済が再生されて、景気企業業績が良くならないとだめ、ということが分かると思う。

そうですね。さっき出てきた戻り高値（１１月９５２１円）で見ると、どうなるの。

中間値は８５９６円で、今年の高安の中間値よりは少し上になる。こうして見ると、８５００円どころが相場の「分水嶺」といえるだろうね。今後、８５００円台に乗せ中間値を超えて来るようなら売り方が不利となって、買い方が勢いを増してくるだろうね。

こうした動きに材料をつけて考えると、どういうことになりますか。

年初、９３００円台まで買われたのはアメリカのオバマ新政権に対する期待があったと思う。しかし、それを帳消しにしたのが企業業績の大幅な悪化だった。説明の必要がないほど悪かった。しかし、さっきも言ったように、売り方は、業績悪化でもっと大きく下がると思っていたら意外と下がらなかった。買い方もかなりの下値は覚悟したと思う。しかし、実際は８０００円を少し切ったあたりで下げ止まった。買い方も、売り方も両方とも意外感を持ったと思う。

どうなるのですか。

戦いは、あわてた方が負ける、ということから言えば、今は、少し売り方の方があわてる気持ちになっていると思う。これまでは、企業業績という、「現実悪」が材料だったけど、第３四半期の決算発表は、ほぼ一巡したから、次は５，６月までは悪い材料は出ない。売り方としては、最大のよりどころの企業業績悪化が、しばらくなくなる。そのへ、ニューヨーク相場が高くなり、オバマさん期待が高まれば、短期中心の売り方は買い戻しに動いてくる可能性があるだろうね。しばらくは、相場は強いとみていいと思う。まずは、今年の高安の中間値８４９８円近辺まで戻るかどうか、この点が見所になると思う。続きは、相場の展開を見てから話し合おう。

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