７０００円をキープした日経平均について

■株の持つ先見性が発揮され始めてきた

日経平均は、よく７０００円を維持しましたね。中国の「景気回復」を先取りし始めたのですか。

うーん、むずかしいところだね。景気回復の期待をまったく抱いていないと言えばウソになるが、正直、まだそこまでの元気はないように思えるんだ。

「株は先見性を発揮する」と言われますが、いったい、どのくらい先を読んで、織り込むのですか。

相場格言に、『麦わら帽子は冬に買え』、というのがある。冬のうちに夏場の銘柄を買いなさいと教えている。このことで言えば、普通では、半年くらい先取りをしている、と思えばいいだろう。

普通以外のビッグな行事などは、もっと早いのではありませんか。昨年、中国の北京オリンピックのように。

そうだね。昨年のオリンピックの場合は、実際に始まったら、それで株が動いたということはなかった。直前に毒入り餃子事件もあったため、観光会社の株価も上がらなかった。むしろ、オリンピックが始まる前の方がよく動いた。

そうでした。

オリンピックのための施設や道路などを整備するため、鉄鋼や建設機械の株が上がった。ものすごく、鉄不足になって、日本の公園から金属のスベリ台が盗まれたほどだった。新日本製鉄が９６４円の高値をつけたのは２００７年７月だったから、オリンピックの始まる１年前に天井を打った。この時は株価がビッグイベントを１年、先取りしていたと言える。

現在、中国は大変なお金を投じて景気を刺激しようとしています。株はこの点を先取りして動くのではありませんか。

既に、少しは、そうした動きは出ているけど、まだ本調子ではないね。

どうしてですか。

そうだね、どう説明したらいいかな。要は余裕がないということなんだ。

余裕が株の先見性に関係あるのですか。


■まだ半年先は無理だけど春の足音ていどは織り込み始めた

たとえば、病気をした場合を考えてみよう。危篤状態で病院に運ばれて、集中治療室に居るような時に、１ヶ月先とか、半年先のことは考えられない。なんとかして命が助かりますようにと、祈る気持ちで「今」のことしか考えられない。

たしかに、そうね。命が助かって、一般病棟に移り、食事も取れるようななったら、退院したら温泉に出かけましょうなど、先のことを考えることができるようになります。
そうだね。株の先見性も置かれている状況によって先読みが違ってくる。健康で普通の時なら余裕があるから、冬の間に夏の銘柄を研究することもできる。しかし、今のように、いつ春が来るか分からない状態では、夏のことなどに、思いをはせる余裕はない。

しかし、日経平均が７０００円を割らなかったことは、一命はとりとめたわけでしょ。

一応は集中治療室から出ることはできた。しかし、１００年に一度といわれる重病だから油断はできない。また、集中治療室に逆戻りの心配は残っている。

そうですわね。１００年に一度の大病ですから、あなどれないわね。だけど、病院では、大部屋ではないけど個室での治療に移ったことは前進よね。

面会謝絶はなくなったと思うよ。問題は、今度の病は日本だけでなく世界同時だった。サブプライムという変なウイルスに冒されてしまった。特に、アメリカの病状はまだ重い。その点、中国が一番回復は早いだろうね。

どうしてですか。

日本の昭和３０〜４０年代もそうだったけど、経済が伸び盛りの時は、一時的には下がるが、むしろそこをバネとして以前より伸びる。「オイルショック」とか、何々ショックといわれるものをいろいろ味わったけど、それでヘタルことはなかった。中国も同じように再び成長を取り戻すと思われる。その意味では、株価が中国の経済回復を先取りし始めたと見ることはできる。ただ、世界を襲っている大きい病気だから揺り戻しはこれからもあると思う。たとえば、外国投資家の日本株売りという形も予想される。

ともかく７０００円を割らなかったことはめでたしね。夏まで先取りするのは無理としても、春の足音くらいは先取りし始めたと受け止めておきます。

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