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「貯蓄から投資へ」の流れは終わったのか?:妻と夫の株ロマン


■なぜ、定期預金は増加傾向なの?

夫 最近、貯金がまた増えているようだね。

妻 そのようですね。最近の新聞で、「個人マネー、生活防衛色」「定期預金、7年ぶり高水準」と紹介されていました。最近の定期預金の残高は195兆円程度に膨れているそうです。2007年の280兆円には及ばないそうですが、このところ160兆円程度で推移したことに比べると増加傾向ということのようです。低い金利なのに不思議ですわ。

夫 そうだね。安全志向ということだろうね。株式のマーケットが荒れているからね。

妻 『安全』という意味ですが、元本が保証されているから安全ということですか。

夫 株や投資信託は、買った値段が保証されていないことは知っての通りだけど、じゃあ、預金が完全に保証されているかと言えば、必ずしもそうではない。預金1000万円までは、仮に、銀行が破綻しても、元本が保証されている。しかし、1000万円を超える分についてはそうではない。もっとも、一般個人には1000万円以上は、あまり縁のない話だけど。

妻 私たちには関係なくても、お金持ちの方は、たくさんいらっしゃるわ。そういう皆さんは、仮に1億円なら1000万円ずつ10の金融機関に分けて預金すればいいのでしょ。あるいは、経営が超堅実な金融機関に預金を集中すればよいのでしょ。私も、一度でいいから、そういう身分になってみたいわ。

夫 僕と結婚して60歳過ぎまで来たんだから、もう無理だよ。人間、諦めることも大切だと思うよ。

妻 まあ、そういうことね。あなたの甘い言葉に乗った私がいけなかったのですから。来世に賭けることししますわ。だけど、不思議ですわ。定期預金とは言っても金利は高くないのに。

夫 1年物定期で0.5〜0.7%のところが多いね。1.3%程度のところもあるようだけど。それでも、昔、郵便局の定額貯金の金利が7〜8%だったのに比べると非常に低い。それでも、株、投信の値下りリスクよりはプラスということだろうね。

■日本の『貯蓄から投資へ』は、まだまだ時間がかかりそう

妻 政府が、『貯蓄から投資へ』、という政策を打ち出したのに逆行の形ですね。この政策は頓挫したのでしょうか。

夫 まだ決めつけることはできない。昨年10月に日経平均が6994円と、バブル崩壊後の安値だった2003年4月の7603円を割り込むなどマーケットは不振が続いている。1万円を回復しているが、必ずしも先行きを楽観できるものではない。特に、トヨタ自動車<7203>など代表的な優良企業が大きな赤字を出している状況では、大切な資金を元本保証のない株や投信には回せないということだろう。

妻 高齢化ということもあるのでは。

夫 それも大きい要因だと思う。核家族化しているから、子供たちに面倒を見てもらうことはできない。もちろん、子供たちだって、自分たちの生活のことで一杯だ。年金の不安もあるし、医療費の不安もある。自分の老後は自分で守らなくてはいけない。個人金融資産の多くを持っている年配者はリスクは取り難くなっている。安全運転が第一ということにならざるを得ない。

妻 一方で、長い目で見れば株式投資に関心が高まっていることも事実ですわ。

夫 そうだね。ネットの普及で若い人の層が増えている。ネット取引なら自己責任もできている。この点は将来のマーケットにとって非常に重要な点だと思う。ネットは短期売買が中心にならざるを得ないが、今のネット層の方々も歳を重ねて行き、いずれは中長期投資へ移って行くと思う。そうなった時、日本の家計の金融資産の姿は定期預金偏重ではなくなっていると思う。

妻 預金を受けている金融機関はどうなのでしょうね。

夫 結構、大変だと思うよ。家計金融資産は銀行などの金融機関を介して企業の活動資金に回る。しかし、昔は企業の大型設備投資もあって資金需要はあったけど、今は小さくなっている。しかも、企業の経営環境が厳しくなっているから、軽々しく貸し付けることはできない。結局、『運用』するしかない。ところが、アメリカのサブプライム問題で世界の金融機関が運用に大失敗した。個人からの預金が増えるのは良いが、どのように運用するか。金融機関の腕の見せ所となっている。今度の話では、結論は出ないけど、日本の『貯蓄から投資へ』の流れは基本のところでは着実に進んでいるけど、年配者人口の多い日本では、定着までには時間がかかりそうだ。個人にとって、『自己責任社会』と『運用』はこれからますます大切になって行くと思われる。

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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2009.07.26 |特集