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GDPは好調なのに相場がもたついている理由:妻と夫の株ロマン


■GDPは「日本株式会社の売上高」

妻 日本のGDP(国内総生産)が、4〜6月期で1〜3月期に比べて0.9%の伸びと発表されました。年間ベースでは3.7%の伸びだそうです。そこで、今日は2つ質問があります。1つは、「好調と言われても実感のないこと」、もうひとつは、明るい数値が発表となったので、相場は好感して上に行くのかと思ったのですが、もたついていることです。

夫 桃子はGDPについて、どのような印象を持っているの。

妻 そうね、日本の経済力を現すものということです。世界と比較したりするときに役立つと思います。

夫 そうだね。しかし、それだけでは、どこか他人事みたいな話になってしまう。話が大き過ぎるからだと思う。昔、文章教室に通っていた頃、教わったことは、こういうGDPといった大きい材料を書いたり、喋ったりするときは、身近なことに置き換えるのが分かりやすい。たとえば、「日本のお父さん像について」というテーマなら、「自分のお父さん」の観察から書き始めて、次は、友達のお父さんのこと、といった順序で書いていって、最後に、日本のお父さんは、こういう共通点があるようだ、といった書き方ができる。その方が具体的になると思う。そこで、個人投資家にとって、身近なことと言えば、「銘柄」だから、GDPを「日本株式会社の売上高」と置き換えれば、少しは身近になると思う。

妻 銘柄を分析するときに、「売上」の内容を吟味することと、同じということですか。

夫 そうだね。1品だけで、会社経営を行っているところもあるけど、多くの会社は、いろいろな事業や製品を手がけている。従って、会社の売上を分析する時は、次の視点が大切になる。

妻 どんなことかしら。

夫 (1)セグメント(部門別)に分けてみること。それぞれの部門がどういう増減になっているか、(2)誰に売っているかという分析。相手先が官公庁か民間企業か個人か。輸出、国内向けはどうか、など。今のように国内が不振の時は輸出が大切になる。さらに、輸出の中でも、どの地域が伸びているか。今なら中国に期待が集まっている、(3)個人の消費向けの場合は、年齢層別、男女別、所得層別の売上も大切となる。少子高齢化の進んでいる日本では特にこの分析が大切なんだ、(4)必需品か便利品(嗜好品)か、という分類も大切。今のような景気の悪いときは「必需品」が優先される。酒やたばこは控えるようになる−−といったことを、ざっくりでいいからつかむことが大切と思う。そういう目で、日本株式会社の売上(=GDP)を見れば、今日の桃子の質問に答えることになると思う。

■GDPの伸びは中国向け輸出と国内のエコ支援が寄与

妻 それで、GDPのセグメントはどのようになるの。

夫 大きく分けると、まず『内需』と『輸出』になる。日本は輸出をしないと成り立たない国だから『輸出』は見逃すことはできない。次に、内需は、『民間』と『政府』の2つになって、さらに民間の内訳は、『個人消費』、『企業の設備投資』、『住宅投資』などになる。こうした観点からGDPは、(1)輸出(2)政府投資(3)個人消費(4)企業設備投資(5)住宅投資、などの5つくらいに分けて見ればよいと思う。

妻 今年、4〜6月のGDPはどこのセクターが伸びたのですか。

夫 増加した部門は、『輸出』『個人消費』、それに『政府投資』。逆に、振るわなかったのは、『企業の設備投資』、『住宅』など。特に、『輸出セクター』は中国の伸びが中心だった。『個人消費』はエコ支援による車と家電製品の購買効果だった。もう一度、言えば、4〜6月GDPの年率3.7%の伸びは中国向け輸出と、国内のエコ支援が寄与したということができる。

妻 なるほどね。だいぶん、具体的に分かりやくなりました。ということは、今後を考える時は、中国向け輸出がどうなるか、エコ支援効果がまだ続くのか、ということがポイントですね。

夫 その通りなんだ。欧米では、依然、失業率の高い状態が続いている。だから、欧米向けの輸出は、まだ大きくは期待できない。期待できるのは中国だけという状態なんだ。その中国は景気対策のために55兆円もの大型の政府投資を行った。この効果で、景気は上向き日本からの輸出が増えている。しかし、中国では地価などにバブル的な要素が見え始めている。上海総合株価指数は8月4日の高値から2ケタの下落となるなど、気になる動きとなっている。もし、政府がバブルを懸念して金融引き締めを本格化させるようだと、金利高を嫌がる株価は一段安につながる心配を含んでいる。

■4〜6月期のGDP好調は楽観視できない

妻 つまり、中国の景気が悪化すると日本のGDP、つまり、日本の景気は悪くなるということですね。日本の個人消費でカバーすることはできませんか。

夫 日本は少子高齢化という構造的な問題を抱えている。基本的には日本の消費は増え難い。エコ支援効果が一巡すれば、GDPのマイナス要因になる。しかも、このところの天候不順も消費を湿らせている。

妻 つまり、中国景気の先行きと、国内消費の先行き心配で、日経平均は上値の重い展開になっている、ということですか。

夫 そうだね。4〜6月期のGDP好調は、中身を分析すれば、先行きに対し楽観できない、ということを印象付けたものとなっている。そこへ、中国の過熱感も出ているため慎重になっている。

妻 日本の選挙はどうなんですか。外国人投資家が買っているようですが。

夫 民主党の政権誕生は間違いなさそうだ。これまで、保守党政権が長すぎて、利権中心となって、真の民主主義になっていなかった、と外国人投資家は見ていた可能性がある。日本株を買うことで、新政権へエールを送ってきた、とも予想される。特に、子育て支援による消費への効果はあると思う。

妻 歴史的なことですね。

夫 国民が判断して選ぶのだから、今までと違ったものを期待していることだけは間違いない。株式市場は新政権の下で出てくる一つ一つの政策を織り込んで行く動きになる。今から、相場がこうなると判断することは難しい。

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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2009.08.23 |特集