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■日本航空は「燃料切れ」でフライトが可能となるのか:妻と夫の株ロマン


■日本航空の株価は「燃料切れ」

妻 日本航空の株価が大変ですね。9月25日には130円と上場来の安値です。「燃料切れ」で、離陸できないのではありませんか。

夫 「燃料切れ」とは、うまいこと言うね。会社経営には「資金」という燃料がないと動けない。日本航空の場合は、資金がないと会社の運営が難しくなるし、燃料を買うこともできなくなって飛行機が飛び立てない。

妻 株価が130円ということは、業績が厳しいことを現しているのでしょうが、そんなに悪いの。

夫 四季報で数字の取れる2003年3月期からの推移でみると、09年3月期までの7期間で、「当期純益」は黒字が3回、赤字が4回という状態なんだ。

妻 でも、赤字もあるけど、黒字の時は立派な数字なのでしょ。

夫 それが、そうでもないんだ。3期間の黒字を合計すると約587億円、これに対し、4期間の赤字合計が約2153億円になっている。1600億円近く赤字額が上回っている。しかも、10年3月期の4〜6月期には990億円の赤字なんだ。

妻 でも、どこかに、良いところもあるのでは。たとえば、1株当り純資産なんかが優秀だとか。

夫 残念だが、1株当り純資産は第1四半期末でわずか1円64銭にすぎない。

妻 そんなに少ないのですか。それでは、会社を解散しても株主には1円64銭しかもらえないではありませんか。PBRを計算しますと79倍です。130円の株価はまだ割高ですわね。

夫 そうなんだ。もちろん、1株当り利益は無いし、配当も無配だから、普通の会社で考えれば、株価は50円以下にまで下がるだろうね。

■ひとことで言えば「コスト高」の体質

妻 飛行機会社ですから、お金は持っているのではありませんか。

夫 四季報で見ると現金預金は1617億円と、確かに多い。しかし、有利子負債も8015億円と現預金の8倍もある。

妻 そんなに。どうして、こうなるまで気がつかなかったのですか。

夫 その点がいちばんのポイントなんだ。いつも、話し合うように、企業でも個人でも、『収入』―『支出』=損益、という数式で成り立っている。日本航空は収入は2兆円程度あったが、支出が収入をはるかに上回っていたということなんだ。

妻 売上が2兆円もあるのに残念ね。経費は燃料代ですか。でも、サーチャージを取っていたわね。

夫 原油高の影響もあるけど、ひとことで言えば「コスト高」の体質だったということだ。普通の会社なら採算の良くない部門があれは撤退するといった見直しをするものだけど、赤字の路線でもそのまま運行していた。花形の仕事だから、パイロットなど乗務員の給料も高い。

妻 赤字路線を廃止するとか、賃金を引き下げる努力をすればいいのではありませんか。

夫 それが、できなかったのだろう。組合との関係があるし、安全運行と言われれば、簡単には賃金は下げられなかったのだろう。最近になって赤字路線を50程度廃止すると言っているけど遅すぎた。

妻 「安全がおろそかになる」というのも理屈としては分からないではありませんが、最近は全日空より日本航空のほうが運航トラブルは多いと思いますよ。それに、全日空は1株当り純資産を見ると166円と日本航空の100倍ですわ。日本航空に体質的な問題があるのではありませんか。

夫 そうだね。初代の日本航空は1951年に創られ、1987年に民営化された。その後、2002年に日本エアシステムと統合して今の会社設立された。昔から、「親方日の丸」の体質はあったと思う。これまでも、実質、政府の監督下で経営再建が進められてきたけど、結局、これまでの政権では解決できなかった。

■株主にとっては厳しいものに・・

妻 老舗企業にありがちなことというわけですか。

夫 まあ、そういうことだね。老舗企業には、悪気はなくても、いつの間にか、先延ばしするクセがついてしまうんだ。

妻 どうなるのですか。放っておいたら破綻でしょ。これだけの悪い業績ですと。

夫 社員全員が自らの手で、体質を強くして会社を良くするのだ、という気持ちがないと無理だろうね。給料を下げてでも「JAL」を守る気持ちがあるかどうか。国がなんとかしてくれる、ということでは、国民も税金を投入することになるだろうから不要というこ気持ちになってしまう。経済発展の時代なら、「鶴のマーク」は発展の象徴として国民の間に憧れもあった。今は、日本航空に乗らなくても多くの航空会社が乗り入れている。

妻 年内に1000億円の資金が必要なのでしょ。そのために、外国の航空会社に出資の話を持ち込んでいるのでしょ。

夫 外国の航空会社からすれば、出資することで経営に参加できるから、日本航空のいいところ取りができるメリットがある。しかし、今のまままの高コスト体質なら、砂に水が吸い込まれるように、いくら資金を注入しても無理だね。政府の保証がなかったら、銀行なら絶対に貸さないよ。実際、経営の厳しい中小企業が銀行に融資を頼んでも貸してくれないだろう。

妻 そうだよね。貸したものが帰らないのなら貸しませんわ。

夫 これまで、親方日の丸だったから、赤字だろうと、路線があるから飛行機を飛ばす。ある意味、趣味で飛行機を飛ばしているのと変わらない。新政権がメスを入れるのは当然だと思うよ。今度、日本航空再生のために、プロ5人が政府から任命された。きっと、国民が納得できる方向を出してもらえると思う。しかし、株主にとっては厳しいものになる可能性もなしとは言えない。

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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2009.09.27 |特集