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■金利上昇は庶民に損か得か=妻と夫の株ロマン
中国の金融引き締めに続いて、アメリカが公定歩合の引き上げです。金利の上がることは庶民にとって「得」なことですか。
「得」な場合もあれば、「損」の場合もある。たとえば、桃子が300万円の定期預金をしたとすると、今なら年間1%にも満たない。仮に0.5%とすれば年間の利息は1万5000円。以前の金利が高かった時代から見ると、今の低い金利は庶民にとっては、明らかに、「損」をしていることになる。
そうですね。以前は、郵便局の「定額貯金」に預けていれば、大体10年で2倍になっていました。利率は7%程度だったと思いますわ。当時、300万円なら年間21万円の利息がもらえたわけです。すでに、今のような低い金利の状態は15年くらい続いているのでしょ。その分、誰が「得」したのですか。
お金の「借り手」と、「貸し手」ということでみれば、預金を預ける庶民が貸し手で、金融機関が借り手になる。当然、安い金利で借りることができる銀行などが「得」したことになる。銀行は、庶民から安いコストで仕入れて、高く貸し付けたり運用する。
「仕入れ」と「販売」ですね。普通の商売とまったく変わらないのですね。
そうだね。お金だと思うから難しく見えるけど、お金=物と考えれば同じなんだ。お金についている値段が金利と考えればいい。商売の原則の「安く仕入れて、高く売る」という公式は金貸し業でもまったく同じなんだ。高く売る、という表現を一般では付加価値をつけて売る、と言っている。物つくりでない銀行には付加価値の難しさはあるだろうね。
庶民は、15年間もの長きにわたって、銀行などにどのくらい「奉仕」したのですか。
大体、日本の定期性預金は600兆円程度といわれるから、15年くらい前には金利7%として年間42兆円程度が家計全体に利息収入として入っていた計算になる。今は、0.5%とすれば、年間、せいぜい3兆円にすぎない。この15年間で庶民は、かなりの「損」をしたことになる。逆に、銀行は得したわけだ。これでは、個人が消費にお金を回す気持ちにはなれない。
どうして、庶民を犠牲にして、銀行に「得」をさせたの。
15年前に何が起きたかを考えると分かる。日本では「バブルの崩壊」があった。大きい銀行の破綻が続いて、放っておくと大金融パニックが起きる心配があった。利息どころか元金まで返してもらえない心配があった。これではいけないということで、銀行を救済して、日本の金融システムを守る必要があった。やむを得ないことだったと思う。
確かに、納得はできるけど、しかし、2つ疑問があるわ。1つは、低金利で調達した資金を銀行はどこへ使ったの。ちゃんと稼ぐことができたのかどうか。悪く言えば、庶民から低コストで集めたお金で賭け事でもしていたのではありませんか。もうひとつは、低金利が長すぎるのではありませんか。いつまでも庶民を犠牲にしていい、ということではないでしょ。
本来、銀行は集めたお金を、企業などに金利を上乗せして貸し付ける。あるいは、株などの値上りや配当金の見込めるようなものに投資する。しかし、過去、不動産に貸し付けて痛い目に遭っているから、貸し出しには慎重になった。しかも、日本ではコンビナート建設も一巡し、道路、橋などの社会資本も充実した。優良の貸し出し先企業はお金を必要としなくなった。しかも、たとえば、トヨタ自動車は別名トヨタ銀行と言われるように自分達で資金を調達できるようになった。
長い歴史の中では、優秀な企業ほど「銀行よサヨウナラ」となっているわけですね。
そうなんだ。お金を貸して欲しいのは経営の苦しい中小企業。銀行はそこには貸したくない。結局、銀行は金融派生商品を組み入れた、危なげな金融先物商品で運用せざるを得なかった。それが、2008年のリーマンショックなど世界金融不安で、また、やられてしまった。これを賭け事といえば言えなくもないが。その結果、銀行救済のために低金利が、いまだに続いている、ということだと思うよ。
素人判断では銀行の数が多すぎるみたいですね。本当は金利を上げて庶民に還元するべきです。高い金利で経営できない銀行なら統合して体力を強くするべきだと思うわ。とくに、民主党政権は庶民の味方でしょ。利息をもっと増やして庶民を豊かにするべきですわ。
金利の水準は、どの程度が理想なのかは分からない。ただ、「正常」か、「異常」か、という観点なら。今の低金利は「異常」だろうね。アメリカなども今の低金利は異常だと思っているはずだ。
だから、アメリカは3年8ヶ月ぶりに公定歩合を引き上げたのですか。
そうだろうね。「異常」な状態からは、誰だって早く抜け出したいはずだ。金利を引き上げる場合は、インフレの予防、あるいはインフレの押さえ込みという目的もある。しかし、今はインフレを心配する状況ではないから、やはり、「異常な低金利」を是正したい気持ちがあると思う。今回、公定歩合を0.25%引き上げて年0.75%とした。今後、どこまで引き上げられるかは、まったく分からない。
中国の金融引き締めは事情が違うのですか。
中国の場合は、景気が良すぎて、バブルの心配がある。バブル崩壊で苦しんだ日本がお手本としてあるから、早めに動いている。
中国、アメリカの金利上げは世界景気や株にに影響は出ませんか。
中国は経済成長のスピードはダウンすると思う。今までのように中国関連銘柄の活躍は難しくなうだろう。一方、アメリカは景気がかなり回復してきている。今、金利を上げれば回復の芽を摘むのではないか、という心配はあると思う。しかし、今、やっておかないと引き上げのチャンスがなくなる。
どういうことですか。
世界景気は、2008年の「100年に一度の不況」を、政府投資の増加と低金利政策でなんとか乗り越えた。しかし、二番底の懸念が完全に消えたわけではない。もし、低金利状態のまま二番底が来たらどうなると思う。
政府投資をまた増やして、さらに低金利にするしかないでしょ。あっ、そうか、金利はもう下げる余地がないわけね。
そうなんだ。今は、既に、ほとんど、ゼロ金利に近い状態だから、次ぎに不況が来ても金利を下げる余地はない。それならば、景気が回復している今のうちに引き上げて、懸念される二番底の時に引き下げができるようにしておきたいだろう。政府の支出についても、各国とも大判振舞いをした。このため、財政赤字が問題になっている。ギリシャの財政危機は、各国とも「明日はわが身」と自覚していると思う。日本だって、GDPをはるかに上回る国の借金だ。さらに民主党政権は92兆円もの予算を組んで、さらに大判振舞いだから、ますます国の借金は増えて行く。すでに、日本の国債の格付けは非常に危ない状態になっている。JALと変わらないほどだ。庶民はもう国債は要らない気持ちになっている。
相場には、どう響きますか。
日米とも足元の、好調といわれる景気を買う相場が続くかどうかだろうね。金利が少々、上がっても吸収できるだけの力があるかどうかだろうね。さらに、アメリカの金利が上がるようだと、ドル安・円高の効果は期待できる。しかし、いずれは日本も金利上げに動かざるを得ないだろう。預金金利の上がることは庶民にはプラスだけど、国債の利払いは増えるから国の財政はますます厳しくなる。今後、日本がどのような金融政策を採って来るかが重要になってくる。難しい相場になってくるだろうね。金利という観点でみれば、超短期売買の人は別として、中期投資スタンスの個人は3月期決算会社の配当利回りが3%台の銘柄を買うのが安全だと思われる。
こうして見てくると、「収入と支出」ということでは、今の民主党政権は「庶民のために」を宣伝にして支出に力を入れる政策ですね。自民党の弱いところを突くということで、庶民を味方にしたやり方のようです。選挙に勝つだけが目的で、後は、野となれ山となれ、では困ります。本当に庶民のことを思うのなら、日本の収入を増やすことを考えないといけないわ。わたしは、そんな風に思うわ。
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