2010年12月07日
ニッポ電機は延期の続いていた案件にようやく動きが出る
■銀座三越の新館建設、本館の全面改装、難波高島屋の改装、大阪のJR伊勢丹等
店舗照明のニッポ電機<6657>(JQS)は、12月1日に兜町平和ビルで、今11年3月期第2四半期決算説明会を開催した。
代表取締役社長金子弘氏は、「昨年の7月にダイヤ蛍光(以下:D社)と業務提携を行い、同社と販売合弁会社を設立いたしました。発表された今期の第2四半期連結業績にはD社からの売上も含まれています。増収増益となっていますが、実態は減収増益です。」と説明会の冒頭に第2四半期連結業績の売上高にはダイヤ蛍光からの売上が含まれていることを報告。
店舗照明最大手の同社の顧客は、小売業、流通業。ところが、姉葉事件で、建築偽装問題が発覚したことから、建築の認可が遅れ、店舗の改装や新築工事の延期、見直しが続いた。更に追い討ちをかけるようにリーマンショックが発生したことで、前期までは、同社の業績は低迷していた。
今期は、流通業界の業績は本格回復に至っていないものの、延期の続いていた案件にようやく動きが出てきている。例えば、銀座三越の新館建設、本館の全面改装、難波高島屋の改装、大阪のJR伊勢丹等がある。オフィスビルでは、丸の内・大手町地区の全面改築の動きがあり、この傾向は11年まで継続する見込。
■店舗照明では、様々な型が要求されるので、量産する大手企業では対応が困難
一方で、店舗照明については同社とD社の独壇場であったが、LED照明の登場と共に、新規企業が参入してきたことから、顧客獲得の競争が始まっている。
「蛍光灯は製造産業ですから、設備投資が必要ですが、LED照明は組立産業なので、参入が容易です。」(金子弘社長)とLED照明の新規参入が多い理由を説明した。
また、LED照明の工業規格制定を受け、これまで電球型LED中心であった大手企業も直管型に参入。益々競争が激しくなると思われがちだが、「店舗照明については、様々な型が要求されるので、量産する大手企業では対応が難しい状況にあります。」(金子弘社長)と店舗照明については依然として同社が優位な立場。
市場規模は縮小傾向であったが、延期が続いていた物件が動き出したことで、売上の減少に歯止めがかかった状況である。
10年度下半期の売上高と11年度上半期の売上高を比較すると僅か2000万円であるが11年度上半期が増加している。売上の減少に歯止めがかかったと思われる理由である。
■販管比率が7.5ポイントと大幅に改善したことで大幅増益となる
今第2四半期連結業績は、売上高44億8200万円(前年同期比38.3%増)、営業利益1億3900万円(前年同期△1億2600万円)、経常利益1億2300万円(同△1億2300万円)、純利益6300万円(同△6400万円)と大幅増収幅増益で黒字転換。先述しているように、売上については、D社からの売上が加わったことで大幅増収となっている。
大幅増益の要因は、大幅増収でありながら、原価率が横ばいであったことから売上総利益段階で16億6600万円(同36.5%増)と大幅増益。更に、販管比率が7.5ポイントと大幅に改善したことで営業利益以下も大幅増益となり黒字転換となった。
部門別の売上高は、店舗照明28億300万円(同39.3%増)、建築化照明13億200万円(同29.9%増)、紫外線(UVランプ)2億2200万円(同13.5%増)、LED1億2700万円(前年同期0円)、海外2600万円(前年同期比12.8%減)。
店舗照明部門の主な出荷先は、羽田空港、銀座三越、難波高島屋、JR京都伊勢丹など。建築化照明部門の主な出荷先は、銀座三越、大手町1丁目三井ビル、アメリカンクラブ、四条烏丸ビル等。建築化照明部門のシームレスラインンランプの出荷本数は207千本とリプレイスが増加し、前年同期比17千本の増加となっている。
■DNライティング社設立による販売費削減効果が、半期分だけで1億1900万円
貸借対照表については、流動負債は、売上増による支払手形及び買掛金の増加により41億200万円(同3億2500万円増)。固定負債は、新規設備投資も無く、償却費が増加したため7億2300万円(同4600万円減)となった。純資産合計は、39億3200万円(同2300万円減)。自己資本率は43.0%と前期末の44.6%と1.6%ダウンしている。しかし、これは売上の拡大に伴い、支払手形及び買掛金の一時的な増加によるもので、不安要因は全くない。
キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フロー9億3900万円、投資キャッシュ・フロー△1200万円、財務キャッシュ・フロー△6億4500万円。現金及び現金同等物の期末残高は11億8100万円(期首残高比2億8100万円増)。
第2四半期は大幅に収益が改善した。その要因は、生産体制の見直しによる生産コスト削減、営業力の強化、LED照明への積極的な取組、業務体制の見直しによるコスト削減などが挙げられる。
具体的な数値を挙げると、在庫調整の完了により稼働率改善効果が1億5900万円。DNライティング社の設立による販売費削減効果が、半期分の主な項目だけで1億1900万円ある。内訳は、販売関係の人件費削減が5800万円、家賃2700万円、運送費3400万円。通期では2億円以上が見込めるとしている。
■今期より加わったLEDの売上が大きく、5億円も
今通期連結業績予想は、売上高90億円(前期比16.8%増)、営業利益2億4000万円(前期900万円)、経常利益2億円(同3100万円)、純利益1億円(同△8400万円)と増収大幅増益で黒字転換を見込む。
部門別の売上予想は、店舗照明54億4400万円(前期比12.1%増)、建築化照明25億7800万円(同9.3%増)、紫外線(UVランプ)4億3900万円(同17.4%増)、LED4億7700万円(前期0円)、海外6200万円(前期比4.6%減)を見込んでいる。
「今期より加わったLEDの売上が大きい。5億円以上行くのではと期待しています。」(金子弘社長)。
今期は増収大幅増益と黒字転換が見込める程順調であるが、当面の経営課題への対応として、6つの方向性を示した。
LED照明器具のライナップ充実、店舗全体のLED照明分野への進出、省エネ・長寿命の蛍光ランプの商品化、将来の需要減を見越した蛍光ランプの生産体制の見直し、LED電源製造コストの低減、LEDモジュールの内製化とこれからの照明器具であるLEDへの対応に軸足を移している。
新規LED照明が、業績の説明の後に紹介された。市場はやっと回復しているが、新規参入企業もあり、競争の激化が予想される。しかし、照明専門の企業としての経験を持つ同社の優位性は依然として揺るがない。LED照明の分野でもリードするものと思われる。
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