2009年05月25日
明暗分かれるガラス大手3社:売上構成で収益と株価の戻りを検証!

■ガラス大手3社=液晶用の出荷数量は回復基調

ガラス大手3社の収益回復は、液晶用ガラス基板などFPD(フラットパネルディスプレイ)用の売上構成によって、明暗が分かれる。建築用や自動車用の需要低迷が続くのに対して、液晶用の出荷数量は2008年10~12月期をボトムとして回復基調に転じているためだ。
 旭硝子<5201>の09年12月期第1四半期(09年1~3月)の業績は、売上高が2363億円、営業損益が60億円の赤字だった。セグメント別に前四半期(08年10~12月)との比較で見ると、ガラス部門(板ガラスと自動車用ガラス)の売上高は24%減少の1138億円、化学部門の売上高は17%減少の523億円と低調で、いずれも営業損益は赤字だった。これに対して、電子・ディスプレイ部門(電子部材、FPD用ガラス基板)は売上高が2%増の656億円、営業利益が3%増の120億円と増収増益だった。液晶用の出荷数量が回復に転じ、想定を上回った。建築用や自動車用の低迷が続くため、09年12月期通期の業績予想(営業利益は300億円の黒字、最終損益は特別損失計上で420億円の赤字)を据え置いたが、液晶用については第2四半期(4~6月)以降も回復基調が予想される。

 一方、日本板硝子<5202>の売上構成比は、建築用板ガラスと自動車用ガラスで約9割を占め、ディスプレイ関連は携帯電話用が中心である。09年3月期通期の業績は、売上高が7394億円、営業利益が19億円だったが、第4四半期(09年1~3月)だけで見ると、売上高が1529億円、営業損益が115億円の赤字だった。建築用や自動車用の販売数量が減少していることに加えて、欧州市場において建築用の販売価格が大幅に下落し、利益を圧迫している。10年3月期も需要や市況の改善は期待薄であり、人件費削減効果などが寄与しても、収益はさらに悪化し、営業損益は300億円の赤字に転落する見込みだ。成長が期待されている太陽電池用の売上高は約300億円規模の模様だが、全体の収益を押し上げるには至らない。

 日本電気硝子<5214>はディスプレイ用の売上構成比が約8割と、3社の中で最も高い。09年3月期通期の業績は売上高が3357億円、営業利益が764億円だった。第4四半期(09年1~3月)だけで見ると、売上高が596億円、営業利益が4億円に落ち込んだが、営業黒字は確保した。主力の液晶用の出荷数量は、第4四半期半ばから増加に転じている模様だ。09年3月期の前半が高水準だったため、10年3月期通期(会社予想は非開示)では営業減益が避けられないが、四半期ベースで見れば、第1四半期(4~6月)以降には液晶用の出荷数量が回復に向かい、営業増益基調が予想される。09年3月期に計上した特別損失が一巡すれば、10年3月期の最終利益は増益に転じる可能性も高い。3社の中では、業績の落ち込みが最も小さく、業績の回復でも先行しそうだ。

 3社の株価を見てみよう。日本電気硝子<5214>の株価が、いち早く戻り歩調の展開となった。液晶用の底入れを反映した形だ。指標面に割高感はなく、上値も期待できそうだ。旭硝子<5201>の株価も、出直り感を強めている。09年12月期の営業黒字見込みが評価され、液晶用の回復も材料視されている。これに対して日本板硝子<5202>の株価は、09年3月期の決算発表を機に急落した。10年3月期の赤字幅拡大見込みに加えて、優先株の発行も嫌気されたようだ。太陽電池関連が材料視されても、業績回復が遅れる可能性が高いだけに、当面は買い手掛かり難となりそうだ。