地球温暖化対策の一つとして、太陽電池関連が注目されています。太陽電池関連はこれまで、期待されながらも市場の伸び悩み感が強い分野でした。国内では太陽光発電を住宅に導入する際の補助金が05年度で打ち切られ、06年度の国内市場規模は縮小しました。しかし欧州ではドイツを中心に地球温暖化対策の機運が高まり、太陽電池で発電した電力の買い取り制度導入も追い風となって急速に市場が拡大しています。また原油高で、太陽光発電のコスト面の割高さが薄れたことも背景にあります。
世界市場拡大を背景に、欧州や中国の企業も大型投資を進めているため、競争激化も予想されますが、こうした企業の動向に注目が必要でしょう。(シニアアナリスト・水田雅展)
太陽電池の世界市場規模を発電能力ベースで見ると、06年の約2・5ギガ(ギガは十億)ワットが07年には約3・7ギガワットに拡大しました。10年には10ギガワット以上に拡大すると予想されています。また今後20年間は年率40%で成長するという見方もあります。米PVニュースの調査によると06年の世界の太陽電池市場シェアは、1位のシャープが17・4%、2位の独Qセルズが10・1%、3位の京セラが7・2%、4位の中国サンテック・パワーが6・3%、5位の三洋電機が6・2%、その他が52・8%でした。
太陽電池市場では従来、日本メーカーの市場シェアが5割を超えるなど、高い技術力を武器に世界市場を牽引してきました。しかし、独Qセルズや中国サンテック・パワーが年産1ギガワット級の大型工場の建設を進め、07年にはシャープが世界首位の座を独Qセルズに奪われるなど、日本メーカーの地位が低下しています。このため日本メーカーも生産能力増強に動き出しています。
■様々なタイプの太陽電池を開発、量産
太陽電池は使用する材料によって、様々なタイプが開発、量産されています。現在の主力は、シリコンウェハーをスライスして作る結晶型太陽電池です。発電効率の高さが特徴ですが、シリコンの使用量が多いため高コストになることが欠点とされています。原料となる多結晶シリコンは半導体用が主用途であり、太陽電池用の供給が不足して調達難となっているうえに、価格も高騰しています。多結晶シリコンの供給は、世界では米ヘムロックや独ワッカーが大手で、これに国内のトクヤマ、三菱マテリアルなどが続いています。
■需要増大で相次ぐ量産化
トクヤマ<4043>(東1)や三菱マテリアル<5711>(東1)は、新工場建設などで生産能力を増強する計画を打ち出しています。そして09年には、多結晶シリコンの供給不足が解消する見込みとされています。しかし、こうした調達難や価格高騰を背景に、シリコン使用量の少ないタイプや、シリコンを使用しないタイプの太陽電池の開発、量産も活発化しています。
シャープ<6753>(東1)は堺市に建設中の液晶パネル新工場に、薄膜型太陽電池の専用工場を併設して09年に稼働する計画です。薄膜型太陽電池はガラスなどの基板上にシリコン薄膜を形成したもので、結晶型太陽電池に比べてシリコンの使用量を100分の1に減らすことができます。また結晶型に比べて暑い地域に向いていることも特徴です。シャープは多結晶シリコンの調達が遅れて世界首位の座を明け渡し、収益も悪化したと見られています。このためシリコンの調達量に左右されない事業構造を築き、10年には薄膜型太陽電池の生産能力を年間1ギガワット体制に拡大して、世界首位奪回を目指します。またカネカ<4118>(東1)も、薄膜型太陽電池の生産能力を増強する計画です。
東京製綱<5981>(東1)は、フェローテック<6890>(JQ)と太陽電池のシリコン結晶を切断するワイヤソー事業で提携しました。その他では、オーナンバ<5816>(東大2)は、太陽光発電配線ユニットの販売が増加しており、増収を見込んでいます。
シリコンを使わないタイプには金属化合物型太陽電池、色素増感型太陽電池などがあります。このうち金属化合物型太陽電池は、銅やインジウムなどの化合物を薄膜に使うもので、すでにホンダ<7267>(東1)が07年から住宅向けに量産を開始しました。昭和シェル石油<5002>(東1)も09年に量産工場を建設する計画です。
色素増感型太陽電池は、太陽光を吸収すると電子を放出する有機色素の性質を応用した次世代の太陽電池です。光電変換効率の低さが欠点ですが、材料費や製造コストが安いのが特徴です。スイスの技術者が保有する製造上の基本特許が08年中に切れるため、TDK<6762>(東1)、太陽誘電<6976>(東1)、フジクラ<5803>(東1)、アイシン精機<7259>(東1)などが量産化に向けて開発に取り組んでいます。
太陽電池向け製造装置の分野では、アルバック<6728>(東1)が液晶パネル製造装置の技術を応用して、薄膜型の製造装置を手がけています。東京エレクトロン<8035>(東1)はシャープ<6753>(東1)と共同で、太陽電池製造装置の開発会社を設立しました。エヌ・ピー・シー<6255>(東マ)は、太陽電池セルをつなぎ合わせてパネルモジュールにする後工程の分野で世界市場シェア4割を握っています。同社では後工程用装置の世界市場が08年に190億円、10年に300億円に拡大すると予測しています。
■国策も後押しして工場新設などが活発化
工業ガス国内最大手の、大陽日酸<4091>(東1)は、ドイツの化学大手と共同で、太陽電池材料の工場を国内に新設し、200億円を投じ、2011年に生産を開始、日本や韓国などアジアの電機メーカーに販売します。
シーアイ化成<7909>(東1)は、2009年秋をメドに太陽電池の基幹部を保護する封止材事業に参入し、15億円を投じて生産設備と段階的に増強、12年度に約60億円の売上高を目指すとしています。
また、2009年度予算政府案で、住宅用太陽光発電の導入補助金として新たに約200億円を計上することや、経済産業省が住宅向けの太陽光発電補助制度を2009年1月13日に開始すると発表したことで、アルバック<6728>(東1)などは、連想買いされています。
日本カーボン<5302>(東1)は、2009年から炭素繊維製品の生産能力を倍増すると発表しました。現在は滋賀工場で年間300トンを生産していますが、約30億円を投資して福島県の白河工場内に炭素繊維向けの製造ラインを新設。来年4月から稼働させて、両工場での合計年産量を600トンにします。炭素繊維は、太陽光発電設備の生産拡大やディーゼル車用排ガスフィルターの生産増、半導体関連の設備投資向けに需要の伸びに対応しています。
東芝<6502>(東1)は、電力・産業用太陽光発電システム事業の拡大に向けて体制強化を図るため、事業を統括する組織を新設し、2015年度に売上高約2000億円を目指しています。同社は、社内カンパニーである電力流通・産業システム社に「太陽光発電システム事業推進統括部」を新設し、太陽光発電システム事業における事業戦略策定、マーケティングなどを行うとともに、他の社内カンパニー、グループ会社にまたがる同ビジネスを組織横断的に統括していくとしています。
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提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.12 |特集