鉄道関連銘柄特集
「環境に優しい交通機関」として重要性高まる鉄道関連銘柄

大都市圏への人口集中で鉄道依存度高まる


自動車保有台数減少と大都市圏への人口集中が追い風
鉄道関連銘柄特集 既に言われ続けていることであるが、原油の高騰が続いている。7月にはレギュラーガソリンが1リットル180円台に乗せたガソリンスタンドも出現、このままの勢いで高騰が続けば、200円の大台に乗る可能性も出てきた。

 この原油高騰を要因の一つとして挙げられるのが、自家用乗用車の深刻な販売不振である。今年に入り、我が日本の自動車保有台数が1963年の統計採取以来、今年に入って初めて減少に転じたことが如実に表している。また自動車の利用頻度低下、走行距離の短縮をも引き起こしている。

 但し、この保有台数の減少その他の事実はガソリン価格の上昇だけが原因ではない。高齢化社会、若年者人口の減少に伴う需要減も原因であろうし、原料高騰に派生する自動車新車の小売価格値上げも要因の一つである。 原油価格高騰の影響【参考特集】

 しかしこれらの要因は本格的な景気回復、それに伴う所得の上昇が顕著になれば、解決される問題とも言える。むしろもっと販売不振に繋がる。それも長期的な販売不振に繋がっていくのではないかと考えられる要因がある。それが世界的な大都市圏への人口集中である。国内においても特に3大都市圏への人口流入が高度経済成長期に並ぶ勢いで再び加速している(例えば東京都は2007年6月から08年6月にかけて約12万人増加、特に今年1月から6月までで約8万人増加しており、流入が加速している様子が伺える。因みに社会増加数は全国トップ)。

 大都市圏は地価が高い、つまり駐車場料金が高い、よって家計への重荷から自動車の所有を控える。また既に公共交通機関が発達しており、自動車がなくても不便をしないことから、より公共交通機関を利用する機会が増えるというライフサイクルとなっている。都市圏の拡大が進めば、新たな需要が発生することで新線建設も活発化し、また温室効果ガス削減の動きから、特に多くの人口を抱える都市ほど環境に優しい「電車」の利用促進を推進していく傾向が強まっていくことは容易に想像される。

 よって今後、鉄道関連企業は「環境に優しい交通機関」としての側面と、大都市圏への人口集中によるニーズ増加という追い風に乗って、中・長期的な発展段階に入るのではないかと見込まれ、注目してみたい。

鉄道ネットワークの更なる充実

 3大都市圏への人口流入が再び加速化しており、特に都心回帰に伴う中心市街区域の高密度化や都市圏拡大が進んでいることから、JR本州3社や各大手私鉄は鉄道インフラの増強を進めている。

 まず西日本旅客鉄道(JR西日本)<9021>は当社の京阪神地域の都市圏輸送網である「アーバンネットワーク」の一環としておおさか東線を今年3月部分開業した。これは都心区域を走る大阪環状線の混雑緩和と大阪府郊外地域間同士の輸送網強化を図るものであり、最終的には2012年までに新幹線の新大阪駅まで延ばし、更なる輸送力の強化、利便性向上を目指す見込みである。

 京阪電気鉄道<9045>は今年10月に「中之島線」の開業を予定。旧来から大阪の重要な中心オフィス街であるにも関わらず、公共交通機関がなかった中之島西部地域の交通網を整備することで利用促進を図る。この路線で京都市の中心部ともダイレクトで結ばれることになり、観光客の利用増も見込む。

注目の阪神なんば線 阪急阪神ホールディングス<9042>は、傘下の阪神電気鉄道が来年春に「阪神なんば線=写真」を開通させる予定。開通すれば、大阪市の2大ターミナルである難波と、神戸市最大の中心街である三宮がダイレクトに結ばれるほか、近畿日本鉄道<9041>が奈良線にも乗り入れ、近鉄奈良駅まで直通運転される見込みである。因みに近畿日本鉄道も三宮まで乗り入れる予定。この新線は今まで直接結ばれていなかった都市を結ぶもので関西圏の輸送の流れを大幅に改善するほか、新たな需要喚起にもつながり、事業の中心会社である前述2社のほか、阪神電気鉄道と相互乗り入れしている山陽電気鉄道<9052>、難波をターミナルとする南海電気鉄道<9044>にも間接的な需要増をもたらすものと見込まれ、関わる各私鉄会社の収支向上が期待出来る。

東京スカイツリー 一方の首都圏では東武鉄道<9001>が東上線と、西武鉄道が西武有楽町線及び池袋線と、今年6月開業した東京地下鉄副都心線との直通運転を開始した。東京の3大副都心の渋谷まで乗り入れたことで利便性の向上、乗客数の増加が期待される。この東京地下鉄副都心線には2012年、東京急行電鉄<9005>が東横線を相互乗り入れさせる予定であり、埼玉方面から池袋、渋谷を経由して最終的には横浜市中心部までを結ぶ壮大な路線になり、首都圏の鉄道ネットワークに大きな相乗効果を発揮するものと見込まれる。因みに東武鉄道は沿線が東京の新名所となることが期待される2012年開業予定の新東京タワー(名称:東京スカイツリー=写真)の最寄り駅となることから、観光需要の増加も期待される。

ロマンスカー また東京国際空港(羽田空港)の国際便強化の動きから、同空港に乗り入れる京浜急行電鉄<9006>も空港利用客の増加が見込めるほか、小田急電鉄<9007>もロマンスカー60000系(MSE)を投入し車両設備を強化、同時に東京地下鉄千代田線及び有楽町線への乗り入れを開始したことで、東京都心部から首都圏の観光・リゾートスポットである箱根への利便性を向上させたことで収益力強化を見込む。

 特に首都圏の各鉄道会社は人口流入から既存路線においても輸送人員が増加を続けており、事業拡大の発展性に恵まれている。

国内遠距離輸送も鉄道が主役?

 鉄道需要の増加は何も大都市圏内の輸送にとどまらない。ガソリン価格の高騰で各航空会社が燃料サーチャージ導入で航空運賃の実質値上げに踏み切り、帰省客はおろか、ビジネス客においても新幹線に切り替える顧客の増加が見込まれる。東日本旅客鉄道(JR東日本)<9020>東海旅客鉄道(JR東海)<9022>西日本旅客鉄道(JR西日本)<9021>の本州3社は各社が管轄するそれぞれの新幹線において、航空客からの切り替え需要増が見込まれる。

リニアモーターカー 特に東海旅客鉄道<9022>は東京〜名古屋間にて2025年に中央リニア新幹線開通を予定しており、最終的には新大阪まで伸ばす計画を持っていることから、将来的には東京〜大阪間の航空需要を根こそぎ奪取する可能性を秘めている。また西日本旅客鉄道<9021>は同社が運行する山陽新幹線と九州旅客鉄道が2011年全線開通させる九州新幹線との相互乗り入れ開始を予定しており、九州方面からの新幹線乗客数の増加を見込む。 リニア中央新幹線関連銘柄一覧【参考】

車両・設備メーカーはグローバルな動きも活発化

宿・ホテル予約ならじゃらんnet  JR・私鉄各社の路線活発化の動きに支えられて、各鉄道車両メーカーや電気系統などの設備メーカーも動きの活発化が期待される。また世界的な大都市圏への人口集中に伴い、新興国をはじめとした公共輸送インフラ需要、地球温暖化阻止のためのエコ車両の開発など、地球規模での発展性を秘めている。

 川崎重工業<7012>は九州以外のJR各社や多くの大手私鉄、地下鉄に導入実績があるほか、海外では台湾高速鉄道に700T型(台湾新幹線)を、中国鉄道部にCRH2型をそれぞれ納入した。特に中国においては高速鉄道網の整備が急務となっており、今後も同社が手掛ける高速車両のニ−ズが高まることが期待される。またニューヨークや香港の地下鉄も同社製が主力となっている。さらに蓄電池で走る路面電車(名称:スイモ)の開発に注力しており、近い将来国内の路面電車の主力をなす可能性を秘めている。

 一方、東日本旅客鉄道<9020>は温室効果ガス削減の動きから、燃料電池電車の開発に力を入れており、出力アップや電池価格など解決すべき課題は多いものの、次世代にかなった電車として商品化に成功すれば、爆発的な需要増が期待出来る。さらに日立製作所<6501>は車両から送電設備、座席予約・発券システム、信号・中央指令等の運行管理システムまで、鉄道に関わるもの全てを作ることが出来る世界で唯一の企業であり、JR全社が国鉄時代から導入している座席予約・発券システム「MARS(マルス)」は同社の製品ということもあって、鉄道関連総合メーカーとして大きな強みとなっている。同業種としてほかに、三菱重工業<7011>近畿車輛<7122>日本車輌製造<7102>が挙げられる。 燃料電池関連銘柄【参考特集】

 またVVFインバータ制御装置や空調、補助電源、電動機、制御装置、マスター・コントローラーなど電装品分野で強みを発揮する東芝<6502>、同じくインバータに強みを持つ東洋電機製造<6505>、電気系統や最近ドア上に設置されることの多い車両用液晶モニターに強みを発揮する三菱電機<6503>など、各鉄道会社の新車需要が増えているだけに期待度は高い。

 その他新線の開業による新駅の増加や、既存路線においても沿線人口増加による設備更新需要の増加を受けて、鉄道信号や自動券売機及び自動改札機を開発・生産するオムロン<6645>日本信号<6741>も要注目である。

 大都市圏への集中と、ガソリン価格の高騰によるマイカー保有率の減少で、鉄道利用者数は今後も増加が見込まれることに加え、温室効果ガス削減に最も効果性の高い交通機関として国政の後押しも期待出来る「鉄道」。次世代型電車の開発や都市開発に絡む新線建設、それは地球規模にまで広がりを見せ、長い目で期待度の高い銘柄として捉えることが出来ると言えよう。

●主な鉄道関連銘柄
鉄道輸送銘柄 東日本旅客鉄道<9020>、西日本旅客鉄道<9021>、東海旅客鉄道<9022>、東武鉄道<9001>、東京急行電鉄<9005>、京浜急行電鉄<9006>、小田急電鉄<9007>、京王電鉄<9008>、京成電鉄<9009>、相模鉄道<9003>、新京成電鉄<9014>、阪急阪神ホールディングス<9042>、近畿日本鉄道<9041>、南海電気鉄道<9044>、京阪電気鉄道<9045>、山陽電鉄<9052>、神戸電鉄<9046>、名古屋鉄道<9048>、西日本鉄道<9031>
鉄道車両銘柄
(開発分野含む)
東日本旅客鉄道<9020>、西日本旅客鉄道<9021>、東海旅客鉄道<9022>、川崎重工業<7012>、三菱重工業<7011>、日立製作所<6501>、近畿車輛<7122>、日本車輌製造<7102>
鉄道設備銘柄 東芝<6502>、三菱電機<6503>、東洋電機製造<6505>、オムロン<6645>、日本信号<6741>
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.07 |特集