フィルム関連は需給逼迫続く |
TDK<6762>が手掛ける透明導電性フィルム「フレクリアTM」は、記録メディアで培った、ウエットコーティング技術を応用展開した独自の3層構造によって、高い透過率を確保しながら、優れた柔軟性・屈曲性・摺動性を有しているのが強み。
また、転写方式での樹脂基材への製膜の為、多種多様な厚膜樹脂プレートや薄物フィルムへの成膜も可能となった。今後、需要の急拡大を見込む、スマートフォンやデジタルカメラなどに搭載される、タッチパネル向け上・下電極用途向け販売の伸びが期待される。
また、ジオマテック<6907>が手掛ける高透過タッチパネル用透明誘電性フィルムは、透過率や視認性に優れており、同業のフィルムに比べて耐湿性や耐熱性に優れ、形状がなめらかな点が強みである。さらに日東電工<6988>は、ペンタッチ用のクッション性と、耐久性に優れた、透明粘着剤付きの透明誘電性フィルム「エレクリスタ」を採用。スムーズな書き味に特徴を持っている。因みに同社は、テープメーカーということもあり、タッチパネルの組み立てにおいて、同社の透明度の高い透明両面接着テープの需要増も期待される。
その他、信越ポリマー<7970>、帝人<3401>、三菱ケミカルホールディングス<4188>も透明誘電性フィルムを手掛けており、需要増加に支えられて、業績への貢献が期待出来る。
一方、従来のタッチパネルは、画面を押す圧力を検出する「抵抗膜方式」が主流であったが、前述、アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)3G」は、指先の静電気を感じ取る「静電容量方式」と呼ばれる新方式を採用した。この「静電容量方式」は、指の微妙な動きや複数の点を同時に感知でき、画面をスクロール(移動)させたり、2本の指を広げて、画像を拡大するなどの複雑な操作を可能にするもので、このメリットを生かし、今後携帯電話のみならず、パソコンの画面に採用されることも期待されている。
そこで、必要になってくるのが「静電気防止」である。三菱ケミカルホールディングス<4188>傘下の三菱化学はその静電気を防止する帯電防止フィルムを手掛けており、携帯電話などの、小型機器向けの帯電防止フィルムに強みを発揮している。
その他、タッチパネルに付帯するフィルムとして、画像の鮮明性向上や光沢感をアップするために用いる、ハードコートフィルムを手掛ける東山フイルム<4244>、同じように、ハードコートフィルムや防眩・反射防止フィルムを手掛け、特にタッチパネル向け製品に注力するリンテック<7966>、SMK<6798>、KIMOTO<7908>、日油<4403>も需要の伸びが見込まれ、注目していきたい。
より快適な表示・入力装置も重要 |
タッチパネルの需要拡大に合わせて、タッチパネルにより、適した表示・入力装置のニーズも高まってくる。特にタッチパネルの場合、直接手を触れると、画面が指紋で汚れるというデメリットを抱えており、入力用の電子ペンのニーズも高まっていくのではないかと予想される。その電子ペンを手掛けるワコム<6727>は、電池レス、コードレスの筆圧感知ペンを直径5mmより揃え、Windowsの右ボタンなど、機能を割り当てられるサイドスイッチ、テールスイッチ(イレイサー機能)をオプションで備えているのが強みで、今後の需要拡大が見込まれる。
日本航空電子工業<6807>は、感圧方式の軽作動力で、安定したセンシングを実現した入力装置に強みを持つ。その他、日本開閉器工業<6943>、アルプス電気<6770>も入力装置開発メーカーとして、販売増が期待される。
タッチパネルメーカーも技術革新進む |
タッチパネル自体の汎用性が拡大し、市場ニーズの増大を受けて、各タッチパネルメーカーも、それぞれの強みを生かしたタッチパネルの開発に力を入れている。
前述のSMK<6798>は、多重押し対応のタッチパネル開発に力を入れているほか、タッチパネル入力時のクリック感を実現した「フォースフィードバックタッチパネル」や、カーソル操作とキー入力操作を独立させた「感圧式入力タッチパネル」を特徴としている。ミナトエレクトロニクス<6862>は、汚れや埃に強い光学式タッチパネルに強みを発揮。ボタン操作だけでなく、書き込みや図形描写にも対応可能となっている。
キーエンス<6861>は、15型対応のタッチパネルの商品化に成功、接続可能な外部機器の拡張を図っており、販路拡大に努めている。また日本航空電子工業<6807>は、NC工作機をはじめ、各種産業機器の操作表示器としての用途に注力しているほか、LCDや他の操作スイッチ、ポインティング・デバイスと組み合わせたシステム化ニーズにも、対応可能な製品開発に力を注いでいる。
東京特殊電線<5807>は医療分野向けの開発に注力。不特定多数が使用するケースが多いことを想定し、意図しない設定変更防止のため、操作スイッチを本体の側面に配置し、さらに、調整のロック機能付を特徴としている。日本写真印刷<7915>、富士通コンポーネント<6719>も、タッチパネルの有望メーカーとして要注目である。
タッチパネル採用商品も続々誕生 |
アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)3G」が、改めてタッチパネルの利便性を世間に知らしめるきっかけとなったが、国内電子機器・家電メーカーもタッチパネルを採用した製品を続々誕生させている。
シャープ<6753>は、NTTドコモ向けに、タッチパネル式携帯「SH906I」の発売を今年6月開始。広角5.2Mカメラ、BluetoothRなど、多彩な機能も搭載し、「ビューアポジション」(液晶画面を表側にして折りたたんで横にした状態)で、ワンセグのチャンネル変更、カメラ撮影時のズームやフォーカス調整、フルブラウザ閲覧時の画面移動や拡大縮小など、液晶画面に表示される機能を、直接タッチする直感的な操作を可能にしたもので、「iPHONE 3G」の話題性に触発されて、販売増加が期待される。尚、同社は光センサーを埋め込んだタッチパネルも開発。画面にかざした書類を読み取ることが可能となり、近い将来、スキャナーの機能も併せ持つ「1台3役」ディスプレーも視野に入れ、開発に注力している。
また、ソニー<6758>の簡易型カーナビゲーションシステム「nav−u」は、画面に円を描くと、地図の縮尺が変わる仕組みで、4.8型ワイド液晶画面上に、ボタンを大きく配置しているため、コンパクトなボディでありながら、簡単にタッチパネル操作が出来る点を強みとしている。
一方、松下電器産業<6752>は、デジタルカメラ領域にタッチパネルを採用。そのうちの一つであるコンパクト型デジタルカメラ「ルミックスFX500」は、ピントを合わせたい人にタッチパネル上で触れると、動き回る人物にピントを合わせ続けられる点や、ボタン部分の極力排除が可能となったため、デジタルカメラとしては、3.0型の液晶大画面を採用、リアリティ感を発揮している。
さらにブルーレイ・ディスク(BD)の録画再生機のリモコンに、タッチパネルを採用したのが三菱電機<6503>。機能が複雑になるにつれ、リモコンのボタン数は増える一方であり、高齢者・初心者にとっては非常に使いづらいものになってきたことから、タッチ部分の拡大が可能で、初心者にとっても、機能が分かり易いタッチパネルを採用した。
このように、各電子機器・デジタル家電に、採用が拡大していくことでタッチパネルは、より高画質、多機能、使いやすさの向上が見込まれ、関連業種と合わせて、今後大きな注目業界になると言えるであろう。
【参考】iPhone関連銘柄特集
●主なタッチパネル関連銘柄 | |
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フィルム関連銘柄 | TDK<6762>、ジオマテック<6907>、日東電工<6988>、信越ポリマー<7970>、帝人<3401>、三菱ケミカルホールディングス<4188>、東山フイルム<4244>、リンテック<7966>、SMK<6798>、きもと<7908>、日油<4403> |
表示・入力装置銘柄 | ワコム<6727>、日本航空電子工業<6807>、日本開閉器工業<6943>、アルプス電気<6770> |
タッチパネルメーカー銘柄 | SMK<6798>、ミナトエレクトロニクス<6862>、キーエンス<6861>、日本航空電子工業<6807>、東京特殊電線<5807>、日本写真印刷<7915>、富士通コンポーネント<6719> |
タッチパネル採用製品銘柄 | 任天堂<7974>、シャープ<6753>、ソニー<6758>、松下電器産業<6752>、三菱電機<6503> |
提供 日本インタビュ新聞 Media-IR 2008.07 |特集