【アナリスト水田雅展の銘柄分析】エストラストは調整一巡して切り返し局面、アベノミクス「地方創生」も追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 山口県や福岡県を地盤とする不動産デベロッパーのエストラスト<3280>(東1)の株価は、680円~700円近辺のモミ合いから全般地合い悪化も影響して10月14日の年初来安値599円まで調整した。ただし足元では650円近辺まで戻して調整一巡感を強めている。消費増税の影響は限定的であり、今期(15年2月期)増収増益見通しを再評価して切り返し局面だろう。

 山口県および福岡県を地盤とする不動産デベロッパーである。一次取得ファミリー型の新築分譲マンション「オーヴィジョン」シリーズ、および新築戸建住宅「オーヴィジョンホーム」の不動産分譲事業を主力に、連結子会社トラストコミュニティが展開する「オーヴィジョン」マンション管理受託の不動産管理事業、そして不動産賃貸事業も強化している。

 九州・山口エリアでのNO.1デベロッパーを目指し、福岡県および九州主要都市への進出加速、九州・山口エリアでのマンション年間供給500戸体制構築、山口県での戸建住宅年間供給100戸体制の構築、ストック型ビジネスとなる不動産管理事業での建物管理受託戸数拡大、不動産賃貸事業での収益物件長期保有による収益基盤強化などを推進している。

 重点エリアである福岡県での事業展開加速に向けて、13年6月には第三者割当増資によって、ふくおかフィナンシャルグループ<8354>傘下の福岡銀行との関係を強化した。また14年3月には山口県内最大のオフィス街に立地する下関第一生命ビルディング(山口県下関市)を取得した。

 10月10日発表の今期(15年2月期)第2四半期累計(3月~8月)連結業績は、売上高が前年同期比9.7%増の52億44百万円、営業利益が同29.6%増の4億38百万円、経常利益が同7.8%減の2億71百万円、純利益が同6.9%減の1億65百万円だった。

 営業外での市場変更費用発生などの影響で経常減益、最終減益だったが、分譲マンション引き渡しが順調に進展して増収、モデルルーム費など販売費圧縮も寄与して大幅営業増益だった。

 通期の連結業績見通しは前回予想(4月10日公表)を据え置いて売上高が前期比16.7%増の120億円、営業利益が同11.1%増の10億90百万円、経常利益が同9.0%増の9億70百万円、純利益が同10.4%増の6億円としている。

 配当予想(7月25日に増額修正)は市場変更記念配当2円を第2四半期末の中間配当で実施し、年間ベースでは年間10円(第2四半期末4円、期末6円)としている。前期の年間8円(第2四半期末2円、期末6円)との比較では2円増配となる。

 通期の分譲マンション引き渡し予定戸数430戸(前期比56戸増)に対して、第2四半期末時点での契約戸数は425戸、契約進捗率は99%に達している。また分譲戸建住宅は42戸(同25戸増)の引き渡し計画に対して、第2四半期末時点での契約戸数は19戸、契約進捗率は45%である。不動産管理事業のマンション管理戸数(期末)は2139戸(同429戸増)となる計画だ。消費増税の影響は限定的のようだ。

 分譲マンション引き渡しが第2四半期(6月~8月)と第3四半期(9月~11月)に集中するため、四半期ごとの業績は大きく変動する計画だが、通期ベースでは契約済みの分譲マンション・戸建住宅の引き渡しが順調に進み、プロジェクト先行費用などを吸収して経常最高益更新の見込みだ。不動産管理事業の管理戸数増加や、不動産賃貸事業のポートフォリオ充実も寄与して好業績が期待される。

 中期経営計画では目標値として16年2月期の新築分譲マンション引き渡し戸数494戸、売上高130億円、営業利益12億50百万円、経常利益12億円、純利益7億20百万円を掲げている。事業展開の重点エリアとしている福岡市では、国家戦略特区に指定されたことも背景に一段と人口増加傾向を強めることが予想されている。アベノミクスの重点戦略「地方創生」も追い風であり、成長市場への事業展開を加速して中期的に収益拡大基調だろう。

 株価の動き(14年8月15日付で東証マザーズから東証1部に市場変更)を見ると、680円~700円近辺のモミ合いから全般地合い悪化も影響して下放れの形となり、10月14日の年初来安値599円まで調整した。ただし足元では650円近辺まで戻して調整一巡感を強めている。消費増税の影響に対する警戒感は織り込み済みで調整の最終局面だろう。

 10月28日の終値637円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS106円39銭で算出)は6倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は1.6%近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形で水準を切り下げたが、日足チャートで見ると足元で25日移動平均線突破の動きを強めている。今期増収増益見通しを再評価して切り返し局面だろう。低PERも支援材料だ。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る