【どう見るこの相場】日米株価の泣き別れでサブ相場シナリオの一角の「2024年問題」関連株に「花の山」期待
- 2023/2/27 08:23
- どう見るこの相場
日米両市場とも、メーンの相場シナリオの雲行きがおかしい。前週末24日の両市場の主要株価指数が泣き別れとなったからだ。日経平均株価は、次期日本銀行総裁候補の植田和男氏の所信聴取効果で349円高と3営業日ぶりに急反発した。ところがその後の米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)は、1月の個人消費支出物価指数が、前年同月比4.7%上昇と伸び率が前月から加速するとともに、市場予想をも上回って336ドル安と急反落し、昨年12月中旬以来の安値に落ち込んだ。
米国市場のメーン相場シナリオは、長期金利は上昇しても景気は巡航飛行を続けるとした「ノーランディング(無着陸)相場シナリオ」だが、主要企業の好悪マチマチな決算発表で株価が乱高下し、景気が本当に安定推移するのか確かめる動きとなっている。一方、わが東京市場のメーン相場シナリオは、日経平均株価が2万7500円台で下値をサポートされ高くも安くもなく安定的に推移するとする「ゴルディロックス(適温)相場シナリオ」だが、指数寄与度の大きい値がさグロース株が、米国ハイテク株にツレ安・ツレ高するなか、前週末27日に急反発したがまだ2万7000円台には届かなかった。
時は、3月である。また日米では中央銀行の金融政策決定会合が開催される。日本銀行の3月9日、10日に開催予定の決定会合は、4月8日に退任する黒田東彦総裁の最後の会合となる。すでにこの会合を前に新発10年物国債利回りが、昨年12月に日銀が長短金利操作の水準を上ぶれ修正した0.5%を上回っており、市場からは異次元金融緩和策縮小の置き土産を催促されているようである。またFRB(米連邦準備制度理事会)が、3月21日、22日に開催を予定しているFOMC(公開市場委員会)でも、政策金利の引き上げ幅は、従来の0.25%から0.5%に再加速するとの見方が強まり、FRB高官のタカ派発言や景気指標の強含み発表が相次いでいる。「ノーランディング相場シナリオ」も「ゴルディロックス相場シナリオ」も、手痛いしっぺ返しを受けないとも限らない。
しかしである。3月弥生の日の光が、春本番の輝きを増してくると、投資家心理は誘われてうずくはずである。投資家は買い気十分、買い資金も潤沢である。となれば、メーン相場シナリオが仮に一服するようなら、取り敢えずサブ相場シナリオに方向転換して様子を見ようとするはずである。相場格言でいう「人の行く裏に道あり 花の山」へのチャレンジである。この裏街道は、早い者勝ちとなる可能性もあり、それなりの準備作業と仕込みが必要なのはいうまでもない。
そこで今週の当コラムでは、サブ相場シナリオ銘柄の一角としてとして物流業界の「2024年問題」の関連株に注目することにした。2024年問題とは、働き方改革法によりトラックドライバーの時間外労働が年間900時間に制限される規制で、2024年4月1日から中小企業にも適用されることになる。この規制がどれほどの衝撃度になるかは、2017年に社会問題化した「宅配クライシス」を思い起こせば分かりやすい。宅配クライシスは、インターネット通販が急成長し配達個数が激増してドライバー不足となって物流のラストワンマイルが大混乱したことを指す。
とくにインターネット通販は、それ以外の物流と異なってドライバー自身が、最後の顧客接点となって顧客対応も代行し、再配達や代引き・返品の対応などで業務量を煩雑化させ、長時間労働・残業増加などとドライバーの労働環境を悪化させた。業界トップのヤマトホールディングス<9064>(東証プライム)では、未払い残業代問題が表面化し、宅急便の総量抑制を決めるとともに料金値上げも打ち出した。株式市場では、再配達問題解決の切り札として宅配ボックス株が注目され、アルファ<3434>(東証スタンダード)、ダイケン<5900>(東証スタンダード)などの株価が大化けしたことは記憶に新しい。
2024年問題は、宅配クライシスが、宅配便という1輸送サービスに発生したこととは異なり影響が物流業界全体に及ぶ。しかも、残業時間に枠がはめられたドライバーの収入が激減することは目にみえており、これが離職者の増加につながりドライバー不足に拍車を掛けることも懸念されている。このことは、2024年問題は、宅配クライシスの宅配ボックス株のようにピンチをビジネスチャンス、投資好機に変える銘柄が出てくるはずなのである。
ドライバーの長時間労働の要因は、何といっても日本の北から南まで長距離・長時間輸送となることが第一だが、それ以外にも積み地・着地での荷待ち時間の発生、積み込みや積み下ろしの手作業による作業時間の間延び、荷主からのリ-ドタイムや時間指定などによる不効率輸送などが指摘されている。こうしたネックを解消する銘柄が関連株に浮上することになる。荷役現場で作業効率化するパレット株、そのパレットの積み込み・積み下ろしをするパレタイズロボット株、作業場運航の無人搬送車、仕分け作業のハンディターミナル株、配送管理システムの物流DX関連株、トラックの長距離輸送をフェリー、内航海運、鉄道と組み合わせ一部を代行して中抜けを図るモーダルシフト関連株などである。小型株が多く、一部には昨年来高値を更新中の銘柄もあるが、2024年4月まで折に触れて取り上げられる可能性もあり、息の長いサブ相場シナリオ関連株相場を期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)