インフォマートは調整一巡、積極投資継続して23年12月期減益予想だが上振れの可能性

 インフォマート<2492>(東証プライム)は企業間の商行為を電子化する国内最大級のBtoB電子商取引プラットフォームを運営している。2月15日には、請求書クラウドサービスのBtoBプラットフォーム請求書が東京商工リサーチの調査で、前回の調査に続いて請求書クラウドサービス市場における国内シェアNO.1を獲得したと発表している。22年12月期は積極投資の影響で減益だが、売上面は利用企業数の増加で2桁増収だった。そして各利益は計画を上回って着地した。23年12月期も売上成長加速に向けた積極投資を継続するため減益予想としている。ただし売上面が順調に推移して上振れの可能性がありそうだ。さらにDX化ニーズを背景として積極投資の成果で中期的に収益拡大を期待したい。株価は23年12月期予想を嫌気する形で昨年来安値を更新したが、調整一巡して出直りを期待したい。

■国内最大級のBtoB(企業間電子商取引)プラットフォーム

 企業間の商行為を電子化する国内最大級のBtoBプラットフォームを運営している。BtoB-PF FOOD事業のBtoBプラットフォーム受発注は飲食店と食材卸・メーカー間の従来の電話やFAXによる受発注業務を電子化したシステム、規格書は食の安全・安心に関わる商品規格書を電子管理するツール、BtoB-PF ES事業の請求書は全業界を対象として請求書発行・受取業務を電子化したシステム、商談は全国の食材売り手・買い手が商談できるマッチングサイト、契約書は契約書締結をブロックチェーン基盤上で電子化したシステムである。21年7月には全業界向け受発注BtoB TRADEをリリースした。

 なお、22年12月期のセグメント別業績は、BtoB-PF FOOD事業の売上高が21年12月期比10.4%増の77億26百万円でセグメント利益(調整前営業利益)が0.8%増の21億80百万円、BtoB-PF ES事業の売上高が15.6%増の32億78百万円でセグメント利益が16億64百万円の赤字(21年12月期は11億37百万円の赤字)だった。

 21年6月にはBtoBプラットフォーム請求書が公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の電子取引ソフト法的要件認証制度第1号認証を取得した。22年7月にはBtoBプラットフォーム契約書がJIIMAの電子取引ソフト法的要件認証」「電帳法スキャナ保存ソフト認証」を取得した。22年5月には経済産業省の「IT導入補助金2022」においてIT導入支援事業者として認定された。22年6月には一般社団法人日本飲食団体連合会(食団連)のオフィシャルパートナーに決定した。22年10月にはBtoBプラットフォームTRADEがJIIMAの電子取引ソフト法的要件認証を取得した。

 23年1月には、BtoBプラットフォーム契約書がサイバートラスト<4498>のiTrustと連携し、新機能「社内文書署名機能」で作成された電子証明書が法務省の商業・法人登記のオンライン申請に利用可能な電子証明書として正式に認定された。

■26年12月期営業利益50億円目標

 中期業績目標に26年12月期売上高200億円、営業利益50億円を掲げ、成長に向けた積極投資と収益源多角化を推進している。5年間平均のCAGR(売上高成長率)は全社16%(FOOD事業8%、ES事業30%)としている。

 将来を見据えた仕掛けとして、既存システム使用料以外の多様な収益源確保(多業界受発注、フード業界縦横展開、海外進出など)や、次世代BtoBプラットフォーム構築に向けた最先端テクノロジーの研究にも取り組んでいる。

 20年8月には、電子インボイス推進協議会の趣旨に賛同し、10社と協力して電子請求書の普及に向けた活動を開始した。23年10月から、複数税率に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書保存方式(インボイス制度)が導入される。21年4月には、DX推進プロジェクト「Less is More.Project」を始動し、本プロジェクトの理念に賛同して共に活動する参画企業の募集を開始した。

 2月7日には、Deepworkと協業して、24年1月に完全義務化される電子帳簿保存法に対応した新サービスSTORAGE by invoxの提供を開始した。

 なおFood Techに特化した出資枠(ファンド)を設置し、20年6月にはAIを活用した飲食店向けの自動発注クラウドサービス「HANZO自動発注」を開発・提供するGoalsに出資して資本業務提携した。さらに22年6月にはGoalsに追加出資した。協業関係を一段と強化する。

■利用企業数は増加基調

 売上高の約95%が月額システム利用料であり、利用企業数増加に伴って収入が拡大するストック型収益モデルである。利用企業数は増加基調で、22年12月期末の全体の利用企業数は21年12月期末比14万5990社増加の82万5674社、全体の事業所数は21万6907事業所増加の152万6384事業所となった。また22年の流通金額は21年比62%増の30兆590億円で、コロナ禍前の19年を上回り過去最高を更新した。

 利用企業数の内訳を見ると、BtoB-PF FOOD事業の受発注の買い手企業数が21年12月期末比320社増加の3680社、買い手店舗数が2370店舗増加の6万8380店舗、売り手企業数が1908社増加の4万2028社となった。規格書の買い手機能が52社増加の944社、卸機能が7社増加の716社、メーカー機能が165社増加の8764社となった。

 BtoB-PF ES事業の請求書は有料契約企業が2087社増加の8615社(受取モデルが1090社増加の5282社、発行モデルが997社増加の3333社)で、請求書ログインは14万6249社増加の81万6777社となった。契約書ログインは1万5540社増加の4万2836社となった。電子帳簿保存法改正による請求書電子化や「脱ハンコ」による契約書電子化の流れで、請求書と契約書が急増している。

 国内最大級のBtoBプラットフォームである。22年12月にはBOXIL SaaS AWARD Winter 2022において、BtoBプラットフォーム請求書が請求書発行部門で、BtoBプラットフォーム契約書が電子契約システム部門で、それぞれGood Serviceに選出された。23年1月にはBtoBプラットフォーム請求書が、アイティクラウドが提供するITreview Grid Award 2023 FALLの2カテゴリ(請求書作成・見積書作成および請求書受領サービス)の内の4部門(総合部門、大企業部門、中堅企業部門、中小企業部門)でLeaderを受賞した。

 さらに2月15日には、BtoBプラットフォーム請求書が東京商工リサーチの調査で、前回の調査に続いて請求書クラウドサービス市場における国内シェアNO.1を獲得したと発表している。

 BtoBプラットフォーム請求書の採用事例としては、22年3月に三井住友フィナンシャルグループ、ワコール、22年4月にトヨタファイナンス、22年5月にアイリスオーヤマ、22年6月に肥後銀行、サッポログループ物流、神戸市、22年9月にダイナムジャパンHD、22年11月に大分県、東洋水産が導入した。大企業にとどまらず、地方自治体などにおける採用も進展している。

 さらに、2月2日にはBtoBプラットフォーム請求書が学校法人國學院大學、2月21日にはBtoBプラットフォーム契約書がドラッグストアチェーンのサンドラッグに導入されたと発表している。

■アライアンスを積極推進

 アライアンス戦略を積極推進している。21年2月には食品卸企業向け受発注・販促サービスのタノムと資本業務提携、21年3月には三井物産と共同出資で特別目的会社I&Mを設立し、中国フードテック企業のトップAcewillのグループ会社である博君と資本業務提携した。

 21年10月には串カツ田中ホールディングス<3547>と業務提携し、合弁会社Restartz(リスターツ)設立を発表した。外食産業の店舗運営の生産性向上を目指し、共同で店舗運営プラットフォームアプリ(仮称)等を開発する。

 21年12月には、BtoBプラットフォーム請求書と三谷産業<8285>のChalaza(カラザ)とのサービス連携を開始、食品関連事業者とフードバンク活動団体をBtoBプラットフォーム商談でつなぐフードバンクコーナーをオープン、請求書処理の業務プロセス改革を目的として鹿児島県奄美市と電子請求書(BtoBプラットフォーム請求書)の実証実験を開始した。

 22年4月にはプロダクト・データ・プラットフォームを開発・提供するLazuliに出資した。また、大塚商会<4768>とセールスパートナー契約を締結、野村證券とパートナー契約を締結した。22年5月には日本マルチメディア・イクイップメントとセールスパートナー契約を締結した。建設業界におけるバックオフィス業界のDX化を協働で推進する。22年6月にはデジタルインボイス構想の推進に向けてコンカーと協業した。

 22年7月にはNTT東日本のIT導入補助金コンソーシアムに参画した。22年9月にはBtoBプラットフォーム請求書とAmazonの法人・個人事業主向けEコマース「Amazonビジネス」のシステム連携を発表した。

 22年11月には、串カツ田中ホールディングスとの合弁会社Restartzが飲食店舗運営のDXを支援する店舗オペレーション管理アプリ「V-Manage」をリリースした。外食産業の店舗運営の生産性向上を目指し、共同で店舗運営プラットフォームアプリ(仮称)等を開発する。また、ソフトバンクグループのSB C&Sが幹事を務めるIT導入補助金コンソーシアムに参画した。

 22年12月には、BtoBプラットフォーム請求書とミロク情報サービス<9928>の販売システムがAPI連携を開始した。また、BtoBプラットフォーム契約書とキンコーズ・ジャパンの文書電子化サービスとシステム連携を開始した。

 23年1月には鈴与とパートナー契約を締結し、鈴与が提供する請求書仕訳支援クラウドとBtoBプラットフォーム請求書のシステム連携を開始すると発表した。

■23年12月期減益予想だが上振れの可能性

 22年12月期連結業績は売上高が21年12月期比11.9%増の110億04百万円、営業利益が48.9%減の5億26百万円、経常利益が54.5%減の4億65百万円、親会社株主帰属当期純利益が46.8%減の2億86百万円だった。配当は21年12月期比71銭減配の72銭(第2四半期末36銭、期末36銭)とした。

 積極投資の影響で売上原価および販管費が増加したため前期比減益だが、売上面は利用企業数の増加で2桁増収だった。そして各利益は計画(22年7月20日付で上方修正、売上高が111億13百万円、営業利益が4億60百万円、経常利益が4億05百万円、親会社株主帰属当期純利益が2億83百万円)を上回って着地した。売上高が計画に対して若干未達(▲1億09百万円)となったが、利益面は下期に予定していた開発案件のリリースが次期(23年12月期)に変更になり、ソフトウェア償却費が未発生となったことが寄与した。

 BtoB-PF FOOD事業の売上高は21年12月期比10.4%増の77億26百万円だった。BtoBプラットフォーム受発注は、管理システム・クラウド化を求めるフード業界の買い手企業(外食チェーン、ホテル、給食、テイクアウト・デリバリー等)および店舗の新規契約数が増加し、システム使用料売上が増加した。また、コロナ禍に伴う規制が解除されて食材流通金額が増加したため売り手企業(従量制)のシステム使用料が増加した。BtoBプラットフォーム規格書も利用企業数が増加した。

 BtoB-PF ES事業の売上高は15.6%増の32億78百万円だった。BtoBプラットフォーム請求書は、企業のデジタル化推進により受取モデル・発行モデルの新規有料契約数が順調に増加し、大手企業を中心に稼働(請求書の電子データ化)が進展したことも寄与した。

 22年12月期末時点の全社ベース利用企業数は21年12月期末比21.5%増の82万5674社、事業所数は16.6%増の152万6384事業所となった。

 コスト面では売上原価が30.7%増加、販管費が10.8%増加した。営業利益の前期比5億04百万円減益の要因分析は、ES事業増収+4億42百万円、FOOD事業増収+7億26百万円、サーバー体制強化に伴うデータセンター費増加▲8億70百万円、ソフトウェア償却費増加▲1億56百万円、稼働業務外注化に伴う支払手数料等増加▲85百万円、事業拡大に向けた営業および営業サポート人員の増強による人件費増加▲63百万円、積極的なマーケティングに伴う販売促進費増加▲1億75百万円、その他販管費増加▲3億21百万円だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高が25億60百万円で営業利益が1億83百万円、第2四半期は売上高が27億23百万円で営業利益が2億58百万円、第3四半期は売上高が27億83百万円で営業利益が2億80百万円、第4四半期は売上高が29億36百万円で営業利益が1億96百万円の赤字だった。第4四半期はインフレ手当支給、リアルイベント再開、インボイス制度開始に向けた販促活動などでコストが増加したため営業赤字だったが、売上面は増収基調である。

 23年12月期の連結業績予想は売上高が22年12月期比17.5%増の129億32百万円で、営業利益が43.0%減の3億円、経常利益が53.4%減の2億16百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が48.9%減の1億46百万円としている。配当予想は22年12月期比26銭減配の46銭(第2四半期末23銭、期末23銭)としている。

 売上高の計画はBtoB-PF FOOD事業が7.9%増の83億35百万円、BtoB-PF ES事業が40.2%増の45億96百万円としている。BtoB-PF FOOD事業は利用企業数増加や食材流通金額増加などを見込み、BtoB-PF ES事業はインボイス制度開始や電子帳簿保存法改正を背景に高成長を見込んでいる。

 コスト面は売上原価が20.0%増の56億89百万円、販管費が21.0%増の69億42百万円の計画としている。売上原価ではサーバー増強に伴うデータセンター費の増加が一巡するが、新機能開発強化などで主にソフトウェア償却費が増加し、販管費では営業強化に伴う人件費の増加や認知度向上に向けたプロモーション活動に伴う販売促進費の増加を見込んでいる。

 23年12月期も売上成長加速に向けた積極投資を継続するため減益予想としている。ただし売上面が順調に推移して上振れの可能性がありそうだ。さらに、外食産業における受発注の電子化、企業における請求書の電子化、インボイス制度開始などDX化ニーズを背景として、積極投資の成果で中期的に収益拡大を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は23年12月期予想を嫌気する形で昨年来安値を更新したが、調整一巡して出直りを期待したい。2月24日の終値は312円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS64銭で算出)は約488倍、今期予想配当利回り(会社予想の46銭で算出)は約0.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS49円59銭で算出)は約6.3倍、そして時価総額は約809億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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