【決算記事情報】科研製薬は23年3月期3Q累計減収減益、新規導入に伴う研究開発費増加等で通期予想下方修正

科研製薬<4521>(東証プライム)の23年3月期第3四半期累計連結業績は減収減益だった。薬価改定や研究開発費増加などが影響した。そして通期予想を下方修正した。競合品も影響して医薬品・医療機器の売上が想定ほど伸長しない見込みとなり、さらに新規導入品(2件)の契約一時金発生で研究開発費が期初計画に比べて大幅に増加する見込みとなった。

■医療用医薬品・医療機器メーカー

医薬品・医療機器、農業薬品などの薬業、および文京グリーンコート関連などの不動産賃貸事業を展開している。

主要医薬品・医療機器は、外用爪白癬治療剤のクレナフィン、関節機能改善剤のアルツ、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラスト、排尿障害改善剤のエブランチル、原発性腋窩多汗症治療剤のエクロック、歯周組織再生剤のリグロス、腰椎椎間板ヘルニア治療剤のヘルニコア、およびジェネリック医薬品である。

22年5月には、外用爪白癬治療剤クレナフィンについて、21年7月に欧州における独占的開発および販売の権利を供与したアルミラル社(スペイン)が、ドイツおよびイタリアで分散審査方式によって販売承認申請を提出した。

22年12月には、壊死組織除去剤ネキソブリッド外用ゲル5g(開発コード:KMW-1、イスラエルのメディウンド社から導入、海外製品名NexoBrid)について、深達性Ⅱ度またはⅢ度熱傷における壊死組織の除去の効能・効果で、日本における製造販売承認を取得した。販売開始時期は23年夏ごろの予定としている。

■M&A・アライアンス

M&A・アライアンス関連では、21年1月にブロックチェーン技術を活用したデータプラットフォーム事業で医療・ヘルスケア領域に展開するジーネックス(マネックスグループの関係会社)に出資して業務提携した。21年12月には国内バイオベンチャー企業のARTham Therapeutics(横浜市、以下:ARTham社)を連結子会社化した。

22年11月には、アクシル・キャピタル・パートナーズ2号有限責任事業組合が設立したアクシル・ライフサイエンス&ヘルスケアファンド2号投資事業有限責任組合に対して、最大10億円を出資する契約を締結した。

■開発パイプライン

23年3月期第3四半期末時点の開発パイプラインの状況は、アタマジラミ症を適応症とするKAR(アーバー社から導入、海外製品名Sklice)が第3相、難治性脈管奇形を適応症とするART―001(ARTham社の開発品)が第2相、水疱性類天疱瘡を適応症とするART―648(ARTham社の開発品)が第2相、原発性掌蹠多汗症を適応症とするBBI-4000(原発性腋窩多汗症治療剤エクロックの適用拡大)が第1相、固形がんを適応症とするKP-483(がん免疫療法、自社創薬品)が第1相、アトピー性皮膚炎を適応症とする多重特異性抗体医薬候補物質NM26-2198(ニューマブ セラピューティクス社との共同開発)が第1相準備中である。

なお22年12月には、ART―001の国内第2相試験の結果について、主要評価項目を達成したと発表している。

23年1月にはSpruce Biosciences社(米国、以下:スプルース社)と、スプルース社が先天性副腎過形成症を対象に開発中(後期第2相試験実施中)のチルダセルフォント(一般名)について、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。スプルース社に対して契約一時金15百万ドル、開発および販売マイルストンの達成により最大64百万ドル(1ドル=135円換算)、並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

また23年1月にCymaBay Therapeutics社(米国、以下:シーマベイ社)と、シーマベイ社が原発性胆汁性胆管炎を対象に開発中(米国や欧州などで国際共同第3相試験実施中)のセラデルパー(一般名)について、日本における開発および商業化に関するライセンス契約を締結した。シーマベイ社に対して契約一時金45億円、開発および販売マイルストンの達成により最大170億円、並びに売上に対する一定のロイヤリティを支払う。

■23年3月期3Q累計減収減益、通期予想を下方修正

23年3月期第3四半期累計連結業績は売上高が前年同期比3.7%減の555億73百万円、営業利益が10.8%減の123億94百万円、経常利益が9.4%減の129億76百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.7%減の91億49百万円だった。主に薬価改定影響でアルツなどが減収となり、さらに研究開発費の増加(4.6%増の63億10百万円)も影響して減益だった。

主要医薬品・医療機器売上高(単体)はクレナフィンが2.2%減の144億44百万円、アルツが10.7%減の131億59百万円、セプラフィルムが8.1%減の60億95百万円、フィブラストが0.6%減の20億75百万円、エブランチルが4.0%減の14億45百万円、エクロックが38.0%増の10億49百万円、リグロスが1.6%増の6億70百万円、ヘルニコアが1.0%減の3億03百万円、ジェネリック医薬品(計)が7.4%減の63億75百万円だった。

セグメント別に見ると、薬業(医薬品・医療機器、農業薬品)は売上高が3.9%減の537億53百万円、利益(営業利益)が11.3%減の114億33百万円だった。なお海外売上高は11.8%増の46億16百万円だった。不動産事業(文京グリーンコート関連賃貸料など)は売上高が1.0%増の18億20百万円、利益が3.8%減の9億60百万円だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が181億97百万円、営業利益が40億56百万円、経常利益が43億32百万円、第2四半期は売上高が186億22百万円、営業利益が41億53百万円、経常利益が42億23百万円、第3四半期は売上高が187億54百万円、営業利益が41億85百万円、経常利益が44億21百万円だった。

23年3月期通期の連結業績予想は、2月3日付で下方修正して、売上高が22年3月期比3.3%減の735億円、営業利益が56.0%減の75億円、経常利益が53.8%減の81億円、親会社株主帰属当期純利益が36.1%減の61億円としている。配当予想は据え置いて、22年3月期と同額の150円(第2四半期末75円、期末75円)としている。

前回予想に対して売上高を29億円、営業利益を75億円、経常利益を74億円、親会社株主帰属当期純利益を59億円、それぞれ下方修正した。競合品も影響して医薬品・医療機器の売上が想定ほど伸長しない見込みとなり、さらに23年1月に新規導入した先天性副腎過形成症治療剤チルダセルフォント、および原発性胆汁性胆管炎治療剤セラデルパーの契約一時金合計約65億円の支払いにより、研究開発費が当初計画の104億円から166億円(22年3月期比97.1%増)に大幅増加する見込みとなった。

主要医薬品・医療機器売上高の計画(単体)はクレナフィンが1.9%減の181億円、アルツが8.2%減の173億円、セプラフィルムが6.3%減の79億円、フィブラストが1.1%増の28億円、エブランチルが3.3%増の20億円、エクロックが47.4%増の14億円、リグロスが16.3%増の10億円、ヘルニコアが5.0%増の4億円、ジェネリック医薬品(計)が9.4%減の80億円としている。

■長期経営計画2031

22年5月に2023年3月期から10か年の長期経営計画2031を発表している。

画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命に貢献し続ける企業、皮膚科・整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業を目指し、長期的課題を見据えた戦略として、研究開発では上市確度の向上、パイプラインの拡充、新規ニーズおよび海外展開への対応、新規分野へのチャレンジ、海外展開では海外展開品の充実、海外自社開発体制の整備、生産・海外自社販売体制の整備、農業事業では北米や新市場での伸長、EU市場への参入・拡大、日本国内での使用促進を推進する。

また経営基盤強化に向けて、プロフェッショナルとして新たな挑戦・変革を追求し続ける人材の育成、データとデジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成、患者さんファーストのための製品価値最大化を推進する。

業績目標としては32年3月期の売上高1000億円、営業利益285億円、ROE10%以上、海外売上高比率30%以上を掲げている。研究開発では10年間で8品目上市するためのパイプライン確保、毎年1品目以上の開発導入品あるいは販売提携品の確保を目指す。海外展開では医薬品の海外売上高比率25%以上を目指す。農業事業では、微生物由来の天然物質農薬ポリオキシンを中心に、農薬事業全体で売上高100億円を目指す方針としている。

なお23年2月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明した。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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