マーチャント・バンカーズは調整一巡、23年3月期大幅増益予想

マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連などを展開し、成長ドライバーとしてNFTなどのブロックチェーン関連事業にも積極展開している。2月20日には、特別目的会社(SPC)を活用した不動産取得・流動化について金融機関との協議を開始したと発表している。なお2月27日には、糖尿病治療薬開発事業から撤退して投資資金を回収したと発表している。23年3月期第3四半期累計は減益だったが、第4四半期に販売用不動産の売却を予定しているため、通期は大幅増収増益予想(2月6日付で上方修正)としている。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上値が重く小幅レンジでモミ合う形だが、調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。

■マーチャント・バンキング事業とオペレーション事業を展開

マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(宿泊施設・ボウリング場・インターネットカフェ店舗・服飾雑貨店の運営、病院食業務受託)を展開している。

22年3月期のセグメント利益(全社費用等調整前営業利益)はマーチャント・バンキング事業が5億94百万円、オペレーション事業が▲61百万円、そして調整額が▲1億98百万円だった。マーチャント・バンキング事業は収益不動産からの賃料収入が安定収益源となっている。オペレーション事業はコロナ禍の影響を受けているが、22年3月期は赤字縮小した。

■不動産・企業投資関連

マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。

不動産投資関連は、保有物件売却による売上利益の積み上げと、物件購入による安定的収益力の強化を推進している。主に、ネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有し、年間約7億円の賃料収入を安定的に確保している。さらに年間賃料収入10億円を目標に掲げて優良不動産の取得を強化している。

22年4月には新築マンション開発事業に取り組むと発表した。第1号案件として大阪府堺市の200坪のマンション開発用地を取得してマンションを建設し、安定的で収益性の高い賃料収入を確保する。22年5月には田中土建工業と業務提携した。

また、賃貸用不動産の取得・入替によって収益基盤強化を進めるとともに、不動産特定共同事業法にかかる許可を取得して多様な資金調達手段の確保にも取り組む方針だ。21年10月には不動産ファンド組成・運営に取り組むととともに、案件ごとに共同事業者とSPC(特別目的会社)を組成する取り組みを開始すると発表した。第三者の資金を活用して規模の大きい案件も積極的に手掛ける方針としている。また金融機関と連携して不動産バイアウト&リース事業を開始すると発表した。

22年1月には在日中国人向け不動産事業(販売・賃貸仲介サービス)を開始すると発表した。22年7月には分譲マンションをリノベーションして販売する事業への取り組み開始を発表した。

23年1月には子会社MBKバイオテックが、おそうじ本舗川崎三田店の事業を承継のうえ、MBKハウスマネジメントに商号変更し、おそうじ本舗のFCとしてハウスクリーニング事業を核に、リノベーション事業、不動産管理事業、不動産テック事業など不動産関連の受託型サービスを展開すると発表した。

2月20日には、特別目的会社(SPC)を活用した不動産取得・流動化について金融機関との協議を開始したと発表している。また2月27日には23年3月期の実績(第4四半期の予定物件を含む)を公表し、購入物件が合計4件・税込総額16億60百万円、売却物件が合計4件・税込総額32億80百万円としている。

企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。

22年2月には、セナードと業務提携して販売しているコンプライアンスチェックシステム「minuku(ミヌク)」を大幅バージョンアップし、ロボット検索機能を搭載して販売開始すると発表した。さらに、中小型の上場株式を対象とする投資事業を強化すると発表した。第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。

■成長ドライバーとしてNFTなどブロックチェーン関連を強化

成長ドライバーとして、STO(Security Token Offering)を活用した金融サービス、不動産流動化、資金調達、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)など、ブロックチェーン関連事業にも積極展開している。

ブロックチェーン関連では、20年2月にサービス開始したエストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFTプラットフォーム関連の強化を推進している。

20年10月にはバルティック・フィンテック・ホールディングス(BFH社)にANGOO FinTech運営を移管し、エストニアでの事業統括会社と位置付けた。

21年3月には子会社MBKブロックチェーンが、ブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」をリリースした。また香港の子会社MBK ASIA LIMITEDにおいてトークン「MBK COIN」を発行するとともに、海外投資家専用不動産取引プラットフォームを構築した。21年4月にはMBKブロックチェーンが、お宝グッズのNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」運営を開始した。21年5月には暗号資産ハッキングに対するセキュリティ技術を手掛けるStudioMakyuと業務提携した。

21年8月にはエストニアの子会社EJTC社と連携し、エストニアの企業に対して、日本企業を対象とした投資やM&Aに関するアドバイザリーを開始した。第1号案件として、遠隔医療システム開発のVIVEO Health社の日本市場進出ための日本企業との資本提携に取り組む。また第2号案件として、医療関連アプリ開発のCognuse社の日本企業への投資に取り組む。

21年9月には不動産バイアウト&リースの開始を発表した。幅広い物件を対象に金融機関と協力し、取得する物件は安全で比較的小さいロットの投資案件として不動産テックを通じて紹介していく。また不動産NFTに本格的に取り組むため、NFTプラットフォーム開発の世界と業務提携した。第1号案件として山中湖山荘をNFT化する。

21年11月には、エストニアの子会社EJTC社がNasdaq Baltic上場会社(21年3月上場)としての信用力を活かして日本の金融機関の協力体制を確保したため、不動産事業として日本国内のマンション取得を進めると発表した。第1号案件として21年10月に兵庫県神戸市内のマンションを購入した。さらに21年12月にはEJTC社がエストニアの不動産ファンドと提携し、エストニアでの不動産事業を本格的に展開すると発表した。

21年11月には、MBKブロックチェーンが「NFTバンカーズ」をリニューアルオープンした。世界的に人気のあるジャパニーズキャラクターを取り揃えるなどコンテンツを強化して、世界マーケットに向けた展開を本格化させる。子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナーも「NFT LaFan」としてリニューアルオープンした。

22年4月には子会社MBKブロックチェーンの商号をMBKバイオテックに変更した。エストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、NFTプラットフォーム関連などのブロックチェーン関連に加えて、医療・健康をテーマにしたバイオテック関連事業や投資にも積極的に取り組む方針だ。22年11月にはMBKバイオテックが新規事業として、中堅企業向けwebサイト制作・保守管理請負事業を開始すると発表した。

新分野に関しては22年8月に、娯楽TVが設立した円谷メディア・コンテンツの株式を譲り受けて子会社化し、商号を娯楽TVメディア・コンテンツに変更してキャラクターおよびコンテンツビジネスへの展開を開始した。22年8月には、01年公開のアニメ映画「シャム猫」について、娯楽TVメディア・コンテンツが100%窓口となってコンテンツ販売とマーチャンダイジングを展開すると発表した。

22年8月には娯楽TVメディア・コンテンツが、映像制作会社のエス・フィールドの株式33.3%を取得して資本・業務提携した。22年9月には、娯楽TVメディア・コンテンツの株式をエストニアの子会社EJTC社に譲渡して、娯楽TVメディア・コンテンツを孫会社化した。22年10月には娯楽TVメディア・コンテンツが公式キャラクター「マーチャントマン」のテーマソングを完成した。NFTマーケットプレイス「NFT LaFan」においてダウンロード販売する。23年2月には「マーチャントマン 誰でもわかる開運・道徳本」が幻冬舎より発売された。

またSDGsへの取り組みの一環として、22年1月に障がい者アーティストを発掘・育成・支援するパラリンアートに取り組む一般社団法人障がい者自立推進機構とオフシャルパートナー契約を締結し、「NFT LaFan」においてパラリンアート作品の販売を開始した。さらに22年4月にはパラリンアート作品のプレミアム販売を開始した。

なお2月27日には糖尿病治療薬開発事業から撤退し、バイオジップコードに投資していた全株式を売却して投資資金40百万円を回収したと発表している。滋賀医科大学との産学連携プロジェクトとして糖尿病治療薬開発に取り組むため、22年1月に事業推進主体となる創薬ベンチャーとしてバイオジップコードを設立したが、論文発表の目途が立たず、バイオジップコードに対する研究開発支援を継続することが困難になったとして、滋賀医科大学との糖尿病治療薬開発に関する基本合意を解消し、22年6月公表の再生医療・美容関連事業についても撤退することとした。

■オペレーション事業は活性化を推進

オペレーション事業は岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、愛媛大学医学部付属病院の病院食業務受託、東京都内2店舗のインターネットカフェ運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。ホテルオペレーション事業はコロナ禍の影響を受けたため撤退(自社物件のブルーポートホテル苅田北九州空港は自社オペレーションによって収益力を高めたうえで売却)した。

連結子会社のケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化し、メタバース空間にバーチャルショッピングサイト「KENTEN×LaFan」を出店している。

持分法適用関連会社のアビスジャパンは、LED照明・節水装置の製造・販売・設置工事を主力として、空き家対策事業、電力小売事業、非接触式AI検温システムの販売も展開している。

■24年3月期営業利益10億円目標

新中期経営計画「Develop the New Market」では、最終年度24年3月期の目標値(21年8月に売上高を上方修正)として、売上高30億円(マーチャント・バンキング事業の不動産関連15億円、海外投資・エストニア関連6億50百万円、ネット販売関連1億50百万円、オペレーション事業7億円)、営業利益10億円、経常利益9億円、当期純利益5億80百万円、EPS20円80銭、1株当たり配当金7円、配当性向33.7%を掲げている。

不動産関連およびオペレーション事業で得られる安定収益をベースとして、企業投資関連、およびブロックチェーン関連(不動産テックプラットフォーム、NFTプラットフォーム、メディテックプラットフォームなど)の拡大に注力する方針だ。

■23年3月期3Q累計減益だが通期大幅増益予想

23年3月期連結業績予想(22年12月19日付で売上高を上方修正、23年2月6日付で売上高、利益とも上方修正)は、売上高が22年3月期比61.0%増の43億80百万円、営業利益が55.2%増の5億20百万円、経常利益が74.3%増の3億80百万円、親会社株主帰属当期純利益が3.7倍の2億60百万円としている。配当予想は22年3月期と同額の2円(期末一括)としている。

第3四半期累計は、売上高が前年同期比41.3%増の32億33百万円、営業利益が6.1%減の2億89百万円、経常利益が21.8%減の1億69百万円、親会社株主帰属四半期純利益が33.8%減の98百万円だった。

投資案件によって四半期業績が変動することも影響して減益での着地だったが、賃貸用不動産から得られる賃貸収入が安定的に推移し、収益用不動産やホテル物件の売却も実行して概ね順調だった。なお特別損失に減損損失41百万円を計上したが、一方で前年同期に計上した投資有価証券評価損32百万円が剥落した。

マーチャント・バンキング事業は売上高が19.6%増の27億63百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が12.4%減の4億56百万円だった。収益の柱である賃貸用不動産から得られる賃貸収入が安定的に推移し、収益用不動産やホテル物件の売却も実行した。

オペレーション事業は売上高が3.0%減の4億90百万円、利益が27百万円の赤字(前年同期は45百万円の赤字)だった。コロナ禍の影響で減収・赤字だが、行動制限の緩和によって各事業の業績は持ち直し傾向となっている。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が3億11百万円で営業利益が25百万円の赤字、第2四半期は売上高が10億75百万円で営業利益が1億64百万円の黒字、第3四半期は売上高が18億47百万円で営業利益が1億50百万円の黒字だった。

第3四半期累計は減益だったが、通期は大幅増収増益予想としている。第4四半期に販売用不動産売却を実行(神戸市東灘区、決済・引渡予定23年2月21日)し、売上高8億30百万円および売却益1億70百万円(営業利益)を計上する。

23年1月には中期経営計画の現状と24年3月期増収増益に向けての施策をリリースしている。23年3月期の売上高が中期経営計画の売上高を大幅に上回る見込みとなり、24年3月期も不動産事業を中心に売上と利益を着実に積み上げる方針としている。マーチャント・バンキング事業の成長が牽引し、NFT関連など新規領域への積極的な事業展開も寄与して中期的に収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

株価は上値が重く小幅レンジでモミ合う形だが、調整一巡してモミ合いから上放れの展開を期待したい。2月27日の終値は295円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円81銭で算出)は約33倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS139円96銭で算出)は約2.1倍、そして時価総額は約87億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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