イトーキは上値試す、23年12月期も大幅営業・経常増益予想で収益拡大基調

 イトーキ<7972>(東証プライム)はオフィス家具の大手で、物流機器などの設備機器関連も展開している。構造改革プロジェクトを推進して新製品・新ソリューション投入などを強化している。2月20日には「メタバース×リアル」のハイブリッドショールーム実証実験開始を発表した。22年12月期は需要が好調に推移し、構造改革プロジェクト推進も寄与して大幅増益で着地した。そして23年12月期も大幅営業・経常増益予想(当期純利益は特別利益が一巡するため減益予想)としている。設備機器・パブリック事業は前期の大型案件の反動減を見込むが、ワークプレイス事業において新しい働き方にあわせたオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調に推移し、構造改革プロジェクト推進で体質改善効果も継続する見込みとしている。営業利益は中期経営計画目標を上回る見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて昨年来高値更新の展開だ。好業績や指標面の割安感を評価し、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■オフィス家具の大手で物流機器関連も展開

 オフィス家具の大手で、パーティションや物流機器などの設備機器関連も展開している。製販一貫体制を特徴としている。21年5月には公共空間へのアート導入を展開するアートプレイスを子会社化してアート関連事業を開始した。

 米国のパートナー企業との協業で17年7月に設立した連結子会社GlobalTreehouseについては22年3月に解散した。23年4月にはグループ経営の効率化を図るためイトーキ北海道を吸収合併予定である。海外は20年6月に中国の地域統括会社として伊藤喜を設立し、拠点再編、人員体制適正化、直接販売強化など収益構造改革を推進している。

 21年12月期のセグメント別(21年12月期から区分変更)売上高構成比はワークプレイス事業が70%、設備機器・パブリック事業が29%、IT・シェアリング事業が2%、セグメント利益(営業利益)構成比はワークプレイス事業が77%、設備機器・パブリック事業が38%、IT・シェアリング事業が▲15%だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上半期偏重の特性がある。

 ワークプレイス事業は、従来のオフィス関連事業のオフィス家具・営繕・FMPMコンサル、および設備機器関連事業の内装・建材、その他事業の家庭用家具で構成する。設備機器・パブリック事業は、従来の設備機器関連事業の内装・建材以外、およびオフィス関連事業の公共施設関連で構成する。IT・シェアリング事業は、従来のオフィス関連事業の什器レンタル・オフィスシェア関連サービス、メンバーシップ事業、およびソフトウェア開発関連サービスで構成する。

 本社オフィスのITOKI TOKYO XORK(イトーキ・トウキョウ・ゾーク)を活用して、ワークスタイルの多様化や働き方改革に対応したオフィス空間の提案を推進している。20年10月にはITOKI TOKYO XORKを改装し、withコロナの「働く場の基準」に基づいた感染防止対策を取り入れた。

 22年5月にはCrossa(クロッサチェア)とpulizea(プリーゼア)がレッドドット・デザイン賞2022(ドイツ)を受賞し、Akimiru(アキミル)とCrossaがiFデザインアワード2022(ドイツ)を受賞した。22年10月には日本デザイン振興会主催の2022年度グッドデザイン賞で8件受賞し、このうちグッドデザイン・ベスト100にADDCELL(アドセル)とLINEA(ニネアチェア)の2件が選出された。22年11月にはオフィスの象徴となるビッグテーブルシルタが、ウッドデザイン賞2022において最優秀となる経済産業大臣賞を受賞した。23年1月にはCrossaが、German Design Award 2023(ドイツ)でWinner(優秀賞)を受賞した。

 2月1日には、2月9日を「学習机の日」として記念日登録を申請し、一般社団法人日本記念日協会より正式に登録されたと発表している。同社は1962年に日本で初めてスチール製学習机を発売した。

■ポストコロナの働く環境づくりをリード

 中期経営計画「RISE ITOKI 2023」では、目指す姿を「ポストコロナの働く環境づくりをリードする」「強靭な体質の高収益企業になる」として、重点方針を構造改革プロジェクトの実行、新たな価値の創出と提供、不採算事業の早期黒字化達成、人材の育成、ESG経営の実践としている。

 目標値には、23年12月期売上高1330億円(オフィス関連709億円、設備機器関連590億円、その他31億円)、営業利益60億円(オフィス関連35億50百万円、設備機器関連23億円、その他1億50百万円)、営業利益率4.5%、経常利益59億円、ROE7.0%以上を掲げている。

 基本戦略としては、オフィス市場では構造改革による高収益化、全ての空間を市場とする新たな価値提供、DXを活用した新しい営業スタイルの実行・展開、設備機器市場では自社保有技術の確立と社会インフラ発展への寄与、急増する物流施設商談に対応するための生産能力増強、グループ内連携によるシナジー効果発揮、海外市場では中国市場での販売体制拡充、コストを勘案したボトムライン経営の徹底による強靭な収益体質の構築、その他(ECビジネス市場)ではテレワーク家具の販売機会創出、新たな顧客層獲得に向けた新規チャネル立ち上げなどを推進する。

 22年4月にはグループ会社のエフエム・スタッフが栃木県矢板市と「矢板SLOW WORK推進コンソーシアム」を設立し、地域共創型シェアオフィス「スローワーク矢板」を開設した。また、NTTコミュニケーションズおよびNTTドコモと共同で、ニューノーマル時代の新たなコミュニケーションサービス「office surf」の実証実験を開始した。

 22年6月には「働く人」を中心とするDXの実現に向けて、オンライン共創ラボ「ITOKI Open―DX Lab」ウェブサイトをオープンした。22年7月には、多様化する新しい時代の働き方に寄り添い、クリエイティブを触発するオフィス家具「common furniture」を発売した。

 22年9月には、在宅ワーク環境をアップデートする人気チェアを対象に、イトーキ公式オンラインショップでAR(拡張現実)が体験できるサービスを開始した。また22年9月には、完全予約制のコンシューマー向けチェアショールーム「ZA SALON TOKYO(坐サロン東京)」を東京京橋にオープンした。

 22年11月には、静岡聖光学院との実証研究プロジェクト(メタバースを用いた仮想空間と現実空間の学習環境のデザインと教育カリキュラムの構築プロジェクト)が、文部科学省「次世代の学校・教育現場を見据えた先端技術・教育データの利活用推進業」に採択された。

 23年1月には新たなモノづくりの形として滋賀工場APセンター(アセンブル・プロセスセンター)の本格稼働を予定している。自社製品の保管・組立・出荷を一元的に行うセンターで、オフィス商品のアセンブル生産方式を強化し、生産性向上および収益拡大を推進する。

 2月20日には「メタバース×リアル」のハイブリッドショールームによる実証実験開始を発表した。ECメタバースの「メタストア」を提供するハコスコ社の協力のもと、ハイブリッドショールームによるDX時代の新しいコミュニケーション空間を探るとしている。

■構造改革プロジェクトを推進して企業価値向上と持続的成長を図る

 20年7月にアドバンテッジアドバイザーズと提携し、アドバンテッジアドバイザーズがサービス提供するファンドを割当先とする第1回新株予約権を発行した。営業体制改革、保有資産の効率的活用、オフィス家具以外の事業セグメントの高収益化などに関連した構造改革プロジェクトを推進し、アドバンテッジアドバイザーズの支援も受けながら企業価値向上と持続的成長を図る方針だ。

 なお、テレワークの導入・活用を進めて実績を積んだ企業として総務省が実施する令和3年度テレワーク先駆者百選に選定されている。さらに、経済産業省と日本健康会議が共同で選定する健康経営優良法人2022大規模法人部門(ホワイト500)に認定されている。オフィス家具事業を展開する企業としては初の6年連続認定である。

 22年7月には、テレワーク勤務制度を改定し、従来の在宅勤務に加えて、自宅以外で従業員が準備・選択した「マイプレイス」でのテレワーク勤務も可能とした。さらに、サステナビリティ経営の実現に向けてマテリアリティを刷新した「統合報告書2022」を発行し、2050年カーボンニュートラル目標を表明した。22年8月には、女性活躍推進に関する取り組みの実施状況が優良な企業として、厚生労働省より「えるぼし」の3つ星(3段階目)認定を取得した。

 22年9月には特定非営利活動法人ファザーリング・ジャパンが主宰する「イクボス企業同盟」に加盟した。22年10月にはワーク・ライフバランスが推進する「男性育休100%宣言」に賛同した。22年11月には、性的指向や性自認などにおける多様性を尊重し、誰もが自分らしく働ける職場環境を目指して「LGBTQアライ宣言」し、LGBTQに関する職場における取り組みの評価指標である「PRIDE指標2022」において「ブロンズ」を受賞した。

 22年12月には東京ビッグサイトで開催された「エコプロ2022」において、三重大学およびダルトンとの共同研究の一環として、ドリップ後に出る「コーヒーの豆かす」を活用して試作した植物由来のボード「Coffee Grounds board」を参考展示した。また、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会が実施する「令和4年度第2回国土強靭化貢献団体認証(レジリエンス認証)」において「事業継続および社会貢献」の認証を取得した。

 23年1月には、事実婚や同性のパートナー、およびその子、親に対し、法律上の配偶者や家族と同様に福利厚生や規程を適用する「パートナーシップ制度」を導入するとともに、ハラスメントに関する規程の改定、および同性婚の法制化を推進するBME(Business for Marriage Equality)への賛同を発表した。

 2月14日には、JobRainbow社主催のダイバーシティ&インクルージョンに取り組む企業を認定する日本最大のアワード「D&I Award 2022」において、最高ランクの「ベストワークプレイス」に認定された。

■22年12月期大幅増益着地、23年12月期も大幅営業・経常増益予想

 22年12月期の連結業績(22年12月23日付で上方修正、収益認識会計基準適用だが損益への影響軽微)は、売上高が21年12月期比6.4%増の1233億24百万円、営業利益が79.0%増の45億82百万円、経常利益が71.4%増の41億77百万円、親会社株主帰属当期純利益が固定資産売却益も寄与して4.5倍の52億94百万円だった。配当(2月13日付で普通配当2円と特別配当20円を増額)は、21年12月期比22円増配の37円(期末一括、普通配当17円+特別配当20円)とした。

 需要が好調に推移し、構造改革プロジェクトの推進による売上総利益率上昇や販管費抑制なども寄与して大幅増益だった。特別利益では固定資産売却益69億11百万円を計上(前期は11億82百万円計上)した。また子会社Global Treehouseの解散に伴う債務免除益7億79百万円を計上した。特別損失では固定資産除却損17億82百万円を計上(前期は1億22百万円計上)したが、減損損失が減少(前期は20億38百万円計上、今期は13億19百万円計上)した。

 ワークプレイス事業は売上高が6.7%増の859億45百万円、セグメント利益(営業利益)が34.7%増の25億79百万円だった。ニューノーマル時代の新しい働き方にあわせたオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調だった。原材料価格高騰の影響があったが、増収効果に加えて、構造改革プロジェクトの推進によって売上総利益率が改善し、販管費の増加を吸収した。

 設備機器・パブリック事業は売上高が6.5%増の356億67百万円、セグメント利益が52.2%増の14億82百万円だった。子会社ダルトンにおいて前期受注したサイエンスパークなどの大型案件が牽引し、物流設備の需要も好調だった。博物館・美術館の展示ケースやデジタルサイネージはコロナ禍の影響で弱含みだった。

 IT・シェアリング事業は売上高が7.6%減の16億24百万円、セグメント利益が4億49百万円の黒字(前年同期は3億85百万円の赤字)だった。Global Treehouseの解散で減収だが、黒字転換した。またシステム開発事業、システム検証事業、オフィス空間シェア事業が堅調に推移した。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高353億45百万円で営業利益39億64百万円、第2四半期は売上高284億11百万円で営業利益4億07百万円、第3四半期は売上高262億05百万円で営業利益2億85百万円の赤字、第4四半期は売上高333億63百万円で営業利益4億96百万円だった。収益はオフィス移転シーズンにあたる上期(特に第1四半期)偏重の特性がある。

 23年12月期の連結業績予想は売上高が22年12月期比5.4%増の1300億円、営業利益が41.8%増の65億円、経常利益が55.6%増の65億円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の一巡で30.1%減の37億円としている。配当予想は22年12月期比12円減配の25円(期末一括)としている。22年12月期の37円には特別配当20円が含まれているため、普通配当ベースでは8円増配との形となる。

 セグメント別の計画は、ワークプレイス事業の売上高が7.9%増の927億円でセグメント利益(営業利益)が75.6%増の45億円、設備機器・パブリック事業の売上高が0.5%減の355億円でセグメント利益が5.5%減の14億円としている。なお設備機器・パブリック事業は、物流設備機器の案件が下期に集中しているため下期偏重の計画としている。

 設備機器・パブリック事業は前期の大型案件の反動減を見込むが、ワークプレイス事業において新しい働き方にあわせたオフィス移転・リニューアル案件を中心に需要が好調に推移し、構造改革プロジェクト推進で体質改善効果も継続する見込みとしている。営業利益計画65億円は中期経営計画目標60億円を上回る見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

 株価は水準を切り上げて昨年来高値更新の展開だ。好業績や指標面の割安感を評価し、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。2月27日の終値は765円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS81円70銭で算出)は約9倍、今期予想配当利回り(会社予想の25円で算出)は約3.3%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1100円33銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約349億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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