JSPは上値試す、23年3月期減益予想だが3Q改善基調

 JSP<7942>(東証プライム)は発泡プラスチック製品の大手である。成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなどの拡販を推進するとともに、製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発など、サステナビリティ経営の推進も強化している。23年3月期は自動車生産調整や原材料価格高騰の影響で減益予想だが、販売価格改定が進展して第3四半期の営業利益が改善基調となっていることを勘案すれば、24年3月期は収益改善基調が期待されるだろう。株価はモミ合いから上放れの形となって戻り歩調だ。そして昨年来高値に接近している。高配当利回りや低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。

■発泡プラスチック製品の大手

 発泡プラスチック製品の大手で、押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他(一般包材など)を展開している。

 22年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業34%、ビーズ事業60%、その他6%、営業利益構成比(調整前)は押出事業50%、ビーズ事業47%、その他4%だった。収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する。

■長期ビジョン

 長期ビジョン「VISION2027」では目標値に28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。

 長期ビジョン達成に向けた3ヶ年中期経営計画(21年度~23年度)では目標値に24年3月期売上高1200億円、営業利益77億円、営業利益率6.4%以上、経常利益79億円、親会社株主帰属当期純利益52億円、ROA5.6%以上を掲げている。セグメント別計画は押出事業が売上高418億円で営業利益28億円、ビーズ事業が売上高724億円で営業利益60億円、その他が売上高58億円で営業利益1億円、営業利益調整額が▲12億円としている。

 基本方針は変革戦略として、循環性の高いビジネスモデルへのシフト、組織の活性化・効率化を推進する。4つの成長エンジンについては23年度に19年度比で、自動車部品の販売数量23%増、建築住宅断熱材の販売数量12%増、FPD関連保護材の販売数量20%増、新たな事業領域の売上高30億円の達成を目指す。3年間の設備投資額は235億円の計画としている。

 22年1月には、新規事業創出を目的としてフランスの子会社がイタリアのGHEPI社に出資(株式35%取得)した。射出成形市場に参入し、発泡技術と射出技術の複合化で技術優位性を構築して事業拡大を推進する方針だ。

■自動車部品用ピーブロックなど環境に貢献する新製品を拡販

 自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)は、自動車メーカーの軽量化要求に対応する製品として、自動車シートコア材や自動車バンパー芯材としての採用が拡大している。SDGsへの取り組みとして自動車メーカーからはリサイクル原料使用の要求が強く、原料にリサイクルポリプロピレンを用いたARPRO REの採用が拡大している。さらにピーブロックの高付加価値グレード版として、GHG排出削減を実現するピーブロックLC(LCはローカーボンの略)も開発し、国内自動車メーカーのバンパー芯材に採用された。EV用バッテリー梱包材、住宅用空気清浄システム構造部材、水力発電所の発電機の発熱を遮断する断熱材などにも採用が広がっており、中期成長ドライバーとして期待される。

 省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成(19年1月)して東西2大生産拠点体制を構築している。

 22年11月には、梱包資材用途ミラブロック(発泡ポリエチレンビーズ成形品)シリーズの新製品として、バイオマス原料を配合したミラブロック-Bioの販売を開始した。植物由来のバイオマスポリエチレンを25.0重量%以上配合するため、日本バイオプラスチック協会のバイオマスプラシンボルマークの認定を受けた。従来品ミラブロック-Eをミラブロック-Bioに切り替えることにより、環境負荷軽減や気候変動緩和に貢献できる製品として、サステナブルな社会づくりに貢献する。

 さらに、冷凍用途から電子レンジ対応でリサイクル性に優れた高性能食品容器用シートのPパールFや、アウトドア等に手軽に持ち運べるクッション用途として採用されたARGILIX、老朽化した橋梁の補強・改修に適したフォームサポート工法など、新製品の開発・拡販を推進している。

■サステナビリティ経営やコーポレート・ガバナンスを強化

 製品ライフサイクル全体における環境負荷軽減に貢献する製品や製造技術の開発などサステナビリティ経営の推進も強化するとともに、コーポレート・ガバナンスも強化している。

 21年4月にはサステナビリティ推進室を新設し、21年12月にはホームページに「JSPのサステナビリティ経営とマテリアリティ」を掲載した。同社の発泡技術を活用して、経済価値だけでなく、顧客や社会の課題解決などの社会的価値へと、提供価値の拡大を推進する方針だ。

 21年12月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明し、22年7月にはTCFD提言に基づく情報開示(詳細は会社HP参照)を行っている。

 22年4月にはガバナンス特別委員会を設置した。親会社である三菱瓦斯化学<4182>およびその子会社との取引において、公正性・透明性・客観性を確保することで少数株主の利益を適切に保護し、コーポレート・ガバナンスの充実を図る。

 22年9月には労働施策総合推進法に基づいて、直近3事業年度において採用した正規雇用労働者の中途採用比率を公表した。19年度は54%、20年度は41%、21年度は67%だった。

 22年12月には、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進するために「JSPグループ調達基本方針」の策定、および「パートナーシップ構築宣言」「ホワイト物流推進運動の自主行動宣言」をリリースした。

■23年3月期減益予想だが3Q改善基調

 23年3月期の連結業績予想(22年10月31日付で売上高予想を上方修正、利益予想を下方修正)は、売上高が22年3月期比14.8%増の1310億円、営業利益が30.3%減の32億円、経常利益が24.0%減の37億円、親会社株主帰属当期純利益が6.7%減の27億円としている。配当予想は22年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比16.4%増の990億80百万円、営業利益が46.1%減の23億15百万円、経常利益が38.6%減の27億63百万円、親会社株主帰属四半期純利益が35.9%減の21億09百万円だった。

 売上面は高機能材製品販売増加や販売価格改定効果などで2桁増収だが、利益面は期前半に販売価格改定が遅れた影響で原材料価格高騰の影響をカバーできず減益だった。

 押出事業は、売上高が8.8%増の320億09百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が33.6%減の15億97百万円だった。全体として、売上面は販売価格改定効果で増収だが、利益面は原材料価格高騰の影響で減益だった。生活資材製品は食品トレー向け分野や広告宣伝用ディスプレー材の販売が増加し、販売価格改定効果も寄与した。産業資材製品や建築土木資材製品の販売は前期並みだったが、販売価格改定効果が寄与した。

 ビーズ事業は、売上高が22.0%増の620億89百万円、利益が46.9%減の13億26百万円だった。全体として、売上面は高機能材製品販売増加や販売価格改定効果で大幅増収だが、利益面は原材料価格高騰の影響で減益だった。自動車部品など幅広い分野で使用されている発泡ポリプロピレンのピーブロックを中心とする高機能材製品は国内、北米、南米、シンガポール、韓国等で販売数量が増加した。ユニットバス天井材等に使用されているハイブリッド成形品のFOAMCOREの販売も増加した。

 その他は売上高が3.8%増の49億82百万円、利益が0.9%増の1億52百万円だった。一般包材の販売が自動車部品輸送関連等の需要回復で増加した。

 なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が309億77百万円で営業利益が7億64百万円、第2四半期は売上高が332億75百万円で営業利益が6億40百万円、第3四半期は売上高が348億28百万円で営業利益が9億11百万円だった。第3四半期の営業利益は遅れていた販売価格改定が進展して改善基調となった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。製品価格改定も寄与して2桁増収だが、利益面は自動車生産調整や原材料価格高騰の影響で減益予想としている。ただし第3四半期累計の進捗率は売上高75.6%、営業利益72.3%、経常利益74.7%、親会社株主帰属当期純利益78.1%と概ね順調だった。販売価格改定が進展して第3四半期の営業利益が改善基調となっていることを勘案すれば、24年3月期は収益改善基調が期待されるだろう。

■株主優待制度は毎年3月末対象

 株主優待制度は、毎年3月31日時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として、一律3000円相当の社会貢献寄付金附きオリジナルクオカードを贈呈(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

 株価はやや小動きだが、ボックスレンジから上放れて昨年来高値に接近している。基調転換を確認した形であり、高配当利回りや低PBRも評価して上値を試す展開を期待したい。3月3日の終値は1608円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS90円58銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約3.1%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2884円93銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約505億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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