■5G時代の超高速光通信テクノロジと光量子テクノロジの融合によるスーパー量子コンピュータ実現へ
日本電信電話(NTT)<9432>(東証プライム)は3月6日、国立大学法人東京大学、国立研究開発法人理化学研究所と共同で、5Gに代表される最先端の商用光通信テクノロジを光量子分野に適用させる新技術を開発したと発表。これにより、光通信用検出器を用いて世界最速の43GHzリアルタイム量子信号測定に成功した。
同成果は従来の量子コンピュータ開発手法を、空間的な並列化と微細加工によるチップ化を基軸とした古典コンピュータ開発の系譜から、時間と波長による並列化と高速化が可能な光通信システム開発の系譜へと一新するパラダイムシフトをもたらす。
同技術は、10GHz超クロック周波数(※1)で動作する高速量子計算の実現に大きく寄与するだけでなく、近年の超高速光通信技術(※2)の一つである波長分割多重化技術(WDM技術)と組み合わせることで装置規模をそのままに、光量子コンピュータプロセッサのマルチコア化を可能とする。将来的には100GHz帯域の高速性と、100コアの並列性を兼ね備えたスーパー量子コンピュータの実現をめざしていく。
同成果は、2023年3月6日(米国時間)に米国科学誌「Applied Physics Letters」において掲載される。なお、同研究の一部は、国立研究開発法人科学技術振興機構ムーンショット型研究開発事業の助成を受けて行われた。
【ポイント】
◆莫大な投資と技術蓄積がなされてきた超高速光通信テクノロジ(5Gテクノロジ)と、光量子プロセッサを融合させ、光量子コンピュータを高速化する新技術を開発した。
◆開発した光パラメトリック増幅器を用いることで、超高速光通信用ディテクタが量子測定に適用可能となり、世界最速の43GHz帯域でリアルタイムな量子測定に成功した。
◆これを5Gテクノロジの一つである波長分割多重化技術(WDM)と組み合わせることで、マルチコア光量子コンピュータを構成することができ、スーパー量子コンピュータ実現への道を拓いた。
※1 クロック周波数
プロセッサの性能を表すための指標値の一つであり、プロセッサが処理をする際に発する信号を、一秒間に何回扱えるかを示す値。クロック周波数が高いと、同じ時間内に多くの処理を行うことができる。現在のノイマン型コンピュータのクロック周波数は、数GHzが主流となっている。
※2 超高速光通信技術
NTTをはじめとする通信キャリアのバックボーンネットワークで用いられる、デジタルコヒーレント技術や大規模波長多重などを用いた光通信技術。5GやBeyond 5G通信におけるバックボーンネットワークに必要不可欠な技術。
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)