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クレスコは反発の動き、23年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性
- 2023/3/8 09:17
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションを強化している。なお3月2日には、スポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定されたと発表している。23年3月期はITサービス事業の受注が高水準に推移して増収増益・連続増配予想としている。第3四半期累計は営業外でのデリバティブ評価損やコーポレートロゴ変更費用などで経常・最終減益だったが、売上高と営業利益の進捗率は順調だった。年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性なども勘案すれば、通期会社予想は上振れの可能性がありそうだ。企業のDX投資は高水準に推移する見込みであり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は1月の戻り高値圏から反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。
■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化
独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。
セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。
22年3月期セグメント別構成比は、売上高がITサービス事業95%(エンタープライズ41%、金融31%、製造23%)、デジタルソリューション事業5%、セグメント利益構成比(全社費用等調整前)がITサービス事業98%(エンタープライズ38%、金融29%、製造30%)、デジタルソリューション事業2%だった。
M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、20年2月に北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にシステムインテグレータのエニシアスを子会社化、21年7月に組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化、22年5月に子会社クリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更、22年7月に子会社のアルスが同じく子会社のエヌシステムおよびネクサスを吸収合併して商号をクレスコ・ジェイキューブに変更した。
22年11月には、フォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)が行う第三者割当増資を引き受けて、資本出資を通じた提携に関する基本合意書を締結した。フォーラムエンジニアリングのエンジニアに特化した人材サービス「コグナビ」のインドでの展開を加速する。
23年2月には日本ソフトウェアデザイン(大阪市)の全株式を取得して子会社化した。
収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。配当方針は、連結経常利益をもとに特別損益を零とした場合に算出される親会社株主帰属当期純利益の30%相当を目途に、継続的に実現することを目指すとしている。
■働き方改革や健康経営を推進
中期経営計画では24年3月期の目標値として売上高500億円、営業利益50億円、ROE15%以上を掲げている。新たなビジネスの柱を生み出すための重点戦略として、デジタルソリューションの強化、機動的経営の進化、人間中心経営の深化、コアビジネス領域をより強固なものにするための基本戦略として、ITサービスの拡大、品質の強化、技術の強化を推進している。なお22年4月から第2創業期として会社ロゴを変更した。
20年9月には社内デジタル変革(DX)を加速させるため「ニューノーマルな働き方」に舵を切ると発表した。テレワーク体制を強化して社員の生産性向上を目指すとともに、本社や開発センターのオフィススペースの最適化、在宅勤務手当新設や通勤手当見直しなどにより、コスト削減も推進する。
健康経営関連では、21年6月に新型コロナウイルス感染症に係る支援(1億円の寄付)が評価されて日本赤十字社から「金色有功章」の楯を拝受した。21年11月には、働き方改革を通じて生産性革命に挑む先進企業を選定する日本経済新聞社「第5回 日経スマートワーク経営調査」で3つ星の評価を獲得した。22年3月には、経済産業省が共同で主催する健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2022」に選定された。22年4月には、株式会社ワーク・ライフバランスが主催する「男性育休100%宣言」に賛同すると発表した。22年6月には、さらなる健康経営の促進に向けて、社員642名に「健康増進手当」を初支給した。22年9月にはスポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」に参画した。
社会貢献関連では、22年7月に公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門とソニーセミコンダクターソリューションズが主催する「Sensing Solution アイデアソン・ハッカソン 2022」に協賛しているとリリースしている。また22年9月には、一般社団法人全国高等専門学校連合会主催の「第33回 全国高等専門学校プログラミングコンテスト」に協賛した。今後も、さまざまな活動を通じて社会の発展に貢献する方針だ。
なお23年1月には、同社IRサイトが昨年度に続いて、主要IRサイト評価機関3社から優秀なIRサイトとして表彰されたとリリースしている。日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキングの総合部門で最優秀サイト、ブロードバンドセキュリティのGomez IRサイトランキング2022で銀賞、大和インベスター・リレーションズの2022年インターネットIR表彰で優良賞を受賞した。
3月2日には、スポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定されたと発表している。
■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大
中期成長に向けて、デジタルソリューションや自社オリジナル製品の拡大を推進している。オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。
21年8月には、東京都教育委員会および一般財団法人東京学校支援機構(TEPRO)と協定を締結して、都内の公立小中学校のデジタル活用支援に参画(22年1月~3月)した。また、画像処理AI学習データ作成時のアノテーション(データに対して関連する情報を付加すること)作業負荷を軽減する手法の特許を取得した。
21年9月には、子会社のクリエイティブジャパンが、大学・高専・研究所での研究・開発用として、低価格の「ELTRESアドオンIoT開発キット」の提供を開始した。コロナ過で厳しい研究・教育環境への貢献でIoT普及を推進する。21年12月には、日本眼科AI学会主催「第2回日本眼科AI学会総会」内のプログラム「眼科AIコンテスト」において、同社技術研究所に所属する社員2名が上位入賞した。
22年4月にはUiPath社の認定リセラー「ゴールドパートナー」に認定された。UiPath製品の教育・トレーニングにおいても豊富な実績と評価の高いコンテンツを有している。22年8月には、サイバー攻撃の兆候を検知・分析し、その情報をもとに専門家による対策支援を提供するサービス「マネージドセキュリティサービス for SIEM」の販売を開始した。
22年10月には、大容量ファイル共有サービス「インテリジェントフォルダ」のiOSアプリをリリース、ベトナム子会社におけるフードデリバリー市場向け最新POSシステムの販売開始リリース、企業のDX人材を育成するDX研修サービスの提供開始をリリースした。22年11月には、画像認識AIの画像分類根拠を可視化する手法の特許を取得した。
22年12月には、セキュリティおよびネットワークソリューションの新サービスとして、脆弱性情報提供サービスとネットワーク調査サービスの提供を開始した。また、日本航空(JAL)と共同で、医療AIによる画像認識技術を活用した「航空機エンジン内部検査ツール」を開発すると発表した。
3月1日には、ビジネスパートナー契約を締結しているUiPath社の「ダイヤモンドパートナー」に認定されたと発表している。
■23年3月期増収増益予想、さらに上振れの可能性
23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比6.9%増の475億円、営業利益が6.6%増の47億50百万円、経常利益が7.7%増の51億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が3.5%増の33億50百万円としている。配当予想は22年3月期比2円増配の46円(第2四半期末23円、期末23円)としている。予想配当性向は28.9%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比9.2%増の353億76百万円、営業利益が12.3%増の36億97百万円、経常利益が12.1%減の32億02百万円、親会社株主帰属四半期純利益が13.0%減の22億30百万円だった。
営業外費用でのデリバティブ評価損7億89百万円の計上や、特別損失でのコーポレートロゴ変更費用1億13百万円の計上などで経常・最終減益だったが、ITサービス事業の受注が高水準に推移して増収・2桁営業増益と順調だった。概ね計画水準だったとしている。
ITサービス事業は、売上高が8.5%増の335億90百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が12.6%増の47億20百万円だった。全体として受注が高水準に推移した。
このうちエンタープライズは、売上高が0.9%増の135億46百万円で、利益が10.8%増の18億18百万円だった。売上面は運輸分野および人材紹介・人材派遣分野で大型案件が収束したが、流通サービス分野、建設・不動産分野および情報・通信・広告分野で新規案件獲得を含めて売上拡大した。利益面は情報・通信・広告分野の高利益率案件獲得も寄与した。
金融は、売上高が6.1%増の106億15百万円で、利益が3.7%増の13億47百万円だった。主に銀行分野で基盤構築・移行案件が増加した。
製造は、売上高が25.0%増の94億27百万円で、利益が24.4%増の15億54百万円だった。機械・エレクトロニクス分野や自動車・輸送機器分野でのクラウド・セキュリティ案件や先行投資目的の案件が増加した。
デジタルソリューション事業は、売上高が24.5%増の17億85百万円で、利益が8.3%減の98百万円だった。主力のクラウドサービス「Creage」やRPAライセンス販売が増加したが、新規サービスやソリューションの企画・研究・検証活動を推進したため間接コストが増加した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が113億81百万円で営業利益が8億91百万円、第2四半期は売上高が119億28百万円で営業利益が13億54百万円、第3四半期は売上高が120億67百万円で営業利益が14億52百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。第4四半期も引き続き受注が好調に推移する見込みとしている。不透明感を考慮して小幅増益にとどまる予想としているが保守的だろう。第3四半期累計の進捗率は売上高が74.5%、営業利益が77.8%、経常利益が62.2%、親会社株主帰属当期純利益が66.6%だった。経常利益と親会社株主帰属当期純利益はデリバティブ評価損計上の影響を受けているが、売上高と営業利益の進捗率は順調だった。年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性なども勘案すれば、通期会社予想に上振れの可能性がありそうだ。企業のDX投資は高水準に推移する見込みであり、積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は反発の動き
株価は1月の戻り高値圏から反落したが、調整一巡して反発の動きを強めている。好業績を評価して出直りを期待したい。3月7日の終値は1760円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS158円99銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の46円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1051円97銭で算出)は約1.7倍、そして時価総額は約405億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)