トレジャー・ファクトリーは上値試す、2月の既存店売上も好調で収益拡大基調

トレジャー・ファクトリー<3093>(東証プライム)はリユースショップを複数業態で全国展開している。SDGsを推進するとともに、グループ一体となって生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指している。23年2月期は既存店の好調、新規出店、売上総利益率の改善などで大幅増収増益予想としている。そして3月8日に発表した23年2月の既存店売上は前年比113.6%で18ヶ月連続前年比プラスと好調だった。積極的な事業展開で24年2月期も収益拡大基調だろう。株価(効力発生日23年3月1日で株式2分割)は2月の上場来高値圏から反落したが、利益確定売りが一巡して切り返しの動きを強めている。好業績を評価して上値を試す展開を期待したい。

■リユースショップを複数業態で全国展開

総合リユース業態トレジャー・ファクトリーや服飾専門リユース業態トレファクスタイルを主力として、リユースショップを複数業態で首都圏・直営店中心に全国展開している。

さらに周辺事業・新規事業としてBtoBライブネットオークション事業、引越・買取サービスのトレファク引越事業、不用品買取だけでなく不動産売買・仲介も行うトレファク不動産事業、終活・生前整理サービスのレガシー事業、ドレスやブラックフォーマルをレンタルするECレンタル事業「Cariru」なども展開している。生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指し、マルチブランドの業態展開による販売力やマルチチャネルによる仕入力を強みとしている。

19年1月にはシステム開発のデジタルクエストを子会社化、20年2月にはAIアプリのXZ(クローゼット)運営のSTANDING OVATIONと資本業務提携、20年10月には静岡県内でリユースショップ直営店12店舗を展開するピックアップジャパンを子会社化した。22年2月には子会社トレファクテクノロジーズを設立してデジタルクエストのシステム開発受託事業を承継(メディアコンテンツ事業が残るデジタルクエストについては株式売却)した。

23年1月末時点の店舗数はグループ合計239店舗(タイ3店舗、台湾1店舗を含むトレジャー・ファクトリーが81店舗、トレファクスタイルが72店舗、トレファクスポーツアウトドアが7店舗、ユーズレットが8店舗、トレファクマーケットが1店舗、ブランドコレクトが6店舗、子会社のカインドオルが37店舗、ゴルフキッズが15店舗、ピックアップが13店舗)となっている。このうち直営店は206店舗である。

海外はタイ(16年3月進出)のバンコクで直営店3店舗を展開し、22年2月期に単年度黒字化した。台湾では21年4月に設立した現地法人Treasure Factory(Taiwan)が22年12月に1号店をオープンした。台湾においても複数店舗のドミナント展開を目指すとしている。

なお収益面では引越シーズンで単価の高い生活家電や家具の構成比が高まる第1四半期(3月~5月)の利益率が高くなり、単価の低い夏物衣料が主力となる第2四半期(6月~8月)の利益率が低くなる季節特性がある。

■新規出店やM&Aで成長加速

中期経営計画では最終年度25年2月期の目標値(22年10月12日付で上方修正)として、売上高315億円、経常利益24.4億円、経常利益率7.8%、親会社株主帰属当期純利益15.9億円、1株当たり配当金40円を掲げている。24年2月期以降の既存店売上については概ね前年並み、新規出店は25店舗~30店舗の想定としている。また、当面の配当性向目標は30%以上としている。

基本方針として、リユース事業の成長、新規事業への投資、海外市場での成長、M&Aによる成長、DX投資による成長を掲げている。SDGsを推進するとともに、さらなる成長が見込まれるリユース市場においてグループ一体となってリユース・ネットワークの拡大を推進する。そして生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指している。

リユース事業の成長では、グループ全体で複数業態を組み合わせて年間20~30店ペースの出店を継続し、リユースのネットワークを拡大する。さらに多店舗体制構築に向けた採用・教育の強化、更なる新業態開発、グループのリユース会社の収益改善を推進する。

新規事業への投資では、物流拠点拡張によるBtoBライブネットオークション事業の本格展開、買取と引越をセットで行う独自の買取引越事業の成長加速、レンタル事業への継続投資を推進する。

海外事業では、タイ事業(21年11月期に単年度黒字化)の利益体制の構築と新規出店、および台湾への進出を推進する。M&Aでは、既存事業とのシナジー効果や新たな収益事業につながるM&Aを積極的に検討する。DX投資では、自社システム部門およびシステム子会社の開発力を活用し、業務効率化、査定効率化、新たな買取機会・販売機会創出などを推進する。

22年2月期は過去最高となる17店舗を新規出店した。総合リユース業態トレジャー・ファクトリーは関東・関西・中部にバランス良く出店している。服飾専門リユース業態トレファクスタイルは大型商業施設からの誘致が増加しており、21年10月にはイオンモールNagoya Noritake Garden(名古屋市)に名古屋則武新町店をオープンした。さらに初の買取専門店(東京都・買取センター広尾店、東京都・表参道2号店)も出店して高額アイテムの仕入を強化している。

リアル×WEBによる深化では、自社ECサイトの出品数増加に伴ってEC売上比率が上昇基調である。22年2月期のEC売上比率(連結ベース)は14.5%となり、21年2月期比1.1ポイント上昇した。さらにBtoBライブネットオークション事業を、店頭、ECに続く第3の販売チャネルに育成する方針で、店舗数拡大やオークション事業強化に対応した物流機能強化のため関東および関西の物流センターを増設する。

M&A・アライアンスでは、22年2月に終活・生前整理分野「Regacy」において、相続対策プラットフォームの「はなまる手帳」を運営するはなまる手帳と業務提携した。22年3月にはALBERT<3906>と共同で、EC出品のために撮影した衣類画像から必要な情報をAIが自動入力する「クロスキャナ」を開発し、トレファク店舗での本格導入を開始した。EC出品業務にかかる「ささげ作業」の大幅な効率化を図り、システム導入前との比較でEC出品点数の10%増加を目指す。22年9月には東急コミュニティーの住み替えサービス「たくす」との連携を開始した。

■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書

22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画で掲げた各種取組を推進し、業績目標の達成、株主還元の拡充、コーポレートガバナンスの充実などによって継続的に企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、25年2月期末までにプライム市場上場維持基準への適合を目指すとしている。

22年5月開催の第27回定時株主総会から、東京証券取引所の関連会社であるICJが運営する「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」に参加した。第26回定時株主総会から個人株主の議決権行使の選択肢を増やすためインターネットを利用した議決権行使を導入しており、国内外の機関投資家に対しても議決権を行使しやすい環境を整備した。また定款を変更し、将来的に株主総会の開催方法の選択肢の一つとしてバーチャルオンリー株主総会の開催も可能にした。

なお22年10月には中間および期末の「株主通信」を廃止すると発表している。地球環境に配慮して紙の使用量削減を含む省資源化を推進する。一方で、自社HPのコーポレートサイトにおけるIR情報の充実を推進する。

■23年2月期大幅増収増益予想、既存店好調で24年2月期も収益拡大基調

23年2月期連結業績予想(22年7月13日付、22年10月12日付に続いて23年1月12日付で3回目の上方修正)は、売上高が22年2月期比18.7%増の276億67百万円、営業利益が2.4倍の23億76百万円、経常利益が2.3倍の24億22百万円、親会社株主帰属当期純利益が2.1倍の15億08百万円としている。配当予想(22年8月10日付、22年10月12日付に続いて23年1月12日付で3回目の上方修正)は、22年2月期比15円増配の32円(第2四半期末12円、期末20円)としている。予想配当性向は23.7%となる。

第3四半期累計は売上高が前年同期比20.7%増の203億88百万円、営業利益が3.3倍の19億01百万円、経常利益が3.1倍の19億43百万円、親会社株主帰属四半期純利益が3.8倍の12億63百万円だった。

リユース意識の高まり、行動制限緩和に伴う外出需要の回復、メディア露出増加による認知度向上などで既存店売上が好調に推移し、新規出店やグループ会社の損益改善も寄与して計画を上回る大幅増収増益だった。連結ベースで見ると、新規出店は年間20~25店舗の計画に対して、22年12末時点でグループ合計20店舗の出店を完了した。仕入高(買取)は多様なチャネルを生かして23.7%増加と大幅に伸長した。差引売上総利益率は62.5%で0.9ポイント上昇した。EC売上比率は14.0%だった。

単体ベースで見ると、既存店の売上高は110.5%、販売件数は107.4%、1件あたり販売単価は102.9%だった。売上総利益率は66.4%で1.0ポイント上昇した。販売件数、販売単価ともに上昇し、値下げや廃棄の抑制なども寄与した。仕入高は20.8%増加、新規出店は16店舗、EC売上比率は10.3%だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が67億33百万円で営業利益が7億66百万円、第2四半期は売上高が60億91百万円で営業利益が2億36百万円、第3四半期は売上高が75億63百万円で営業利益が8億99百万円だった。なお新入学・入社に伴う引越シーズンにあたる第1四半期(3月~5月)の利益率が高く、第2四半期(6月~8月)の構成比が小さい季節特性がある。

修正後の通期連結業績予想は、前回予想に対して売上高11億53百万円、営業利益を4億33百万円、経常利益を4億45百万円、親会社株主帰属当期純利益を2億88百万円それぞれ増額した。下期の単体ベースの既存店売上高の想定は101%で前回予想時点から変更はないとしている。コスト面では下期の従業員給与ベースアップや電気代等のコスト増加を前回予想に織り込み済みだが、今回の修正には店舗設備投資・修繕費用や賞与増額などで約60百万円の追加費用を見込んでいる。大幅増収効果や売上総利益率改善効果でコスト増加を吸収する見込みだ。

修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が73.7%、営業利益が80.0%、経常利益が80.2%、親会社株主帰属当期純利益が83.8%となる。

月次売上状況(単体直営店の店舗売上、前年同月比速報値)を見ると、23年2月は全店が126.1%、既存店が113.6%と好調だった。前年よりも休日が1日少なかったが、月後半からの気温上昇に伴って春物衣料の販売が順調に立ち上がり、外国人観光客向け販売回復でブランド品も好調だった。既存店売上は21年9月から18ヶ月連続の前年比プラスと好調が続いている。なお22年3月~23年2月累計ベースでは全店が121.6%、既存店が110.5%となり、新規出店は累計18店舗となった。

既存店の好調や売上総利益率の改善などにより通期会社予想は4回目の上振れの可能性がありそうだ。さらに積極的な事業展開で24年2月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年2月末の株主対象

株主優待制度は毎年2月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

株価(効力発生日23年3月1日で株式2分割、1株当たり数値は株式2分割遡及調整後)は2月の上場来高値圏から反落したが、利益確定売りが一巡して切り返しの動きを強めている。週足チャートで見ると26週移動平均線近辺から切り返して支持線確認の形となった。好業績を評価して上値を試す展開を期待したい。3月8日の終値は1234円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS67円59銭で算出)は約18倍、前期推定配当利回り(会社予想の16円で算出)は約1.3%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS212円33銭で算出)は約5.8倍、そして時価総額は約300億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■更新前のスーパーコンピュータの約4倍の計算能力  富士通<6702>(東証プライム)は2月21日…
  2. ■両社の資源を有効活用しSDGsに貢献  伊藤忠商事<8001>(東証プライム)グループのファミリ…
  3. ■純正ミラーと一体化し、左後方の視界を広げる  カーメイト<7297>(東証スタンダード)は、純正…
2024年3月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

ピックアップ記事

  1. ■投資と貯蓄の狭間で・・・  岸田内閣の「資産所得倍増プラン」は、「貯蓄から投資へ」の流れを目指し…
  2. ■「ノルム(社会規範)」解凍の序章か?植田新総裁の金融政策正常化  日本銀行の黒田東彦前総裁が、手…
  3. ■「日経半導体株指数」スタート  3月25日から「日経半導体株指数」の集計・公表がスタートする。東…
  4. ■投資家注目の適正株価発見ツール  日銀の価格発見機能が不全になる可能性がある中、自己株式取得が新…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る