京写は基調転換して戻り試す、23年3月期大幅増益予想

京写<6837>(東証スタンダード)はプリント配線板の大手メーカーで、片面プリント配線板については世界最大の生産量を誇っている。中期成長に向けて6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。23年3月期は大幅増益予想としている。海外において自動車分野や事務機分野の受注が好調に推移し、前期稼働したベトナム子会社の売上拡大も寄与する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大を期待したい。株価は22年12月の昨年来安値圏から反発して戻り歩調だ。週足チャートで見ると抵抗線となっていた26週移動平均線を突破した。基調転換した形だろう。低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。

■プリント配線板の大手メーカー

プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。

プリント配線板は独自のスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。

22年3月期セグメント別売上高は日本が96億47百万円、中国が114億03百万円、インドネシアが20億34百万円、メキシコが85百万円、ベトナムが5億88百万円、営業利益は日本が2億39百万円、中国が6億44百万円、インドネシアが14百万円、メキシコが5百万円、ベトナムが▲4億22百万円だった。

製品別の売上高は片面版が104億89百万円、両面板が82億09百万円、実装関連が17億69百万円、その他が8億69百万円だった。用途別の売上高は自動車関連(ライト、電装品、カーオーディオなど)が69億55百万円、家電製品(LED照明、エアコンなど)が50億74百万円、事務機(複写機、プリンターなど)が28億02百万円、電子部品・電子機器(電源、モーター、制御装置など)が19億04百万円、映像関連(薄型テレビなど)が12億55百万円、アミューズメント(家庭用ゲーム機など)が2億77百万円、その他(音響機器、通信機器など)が30億65百万円だった。幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。

プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。18年5月には中国で両面配線板および多層配線板の生産を委託しているサンティス香港、およびその子会社のサンティス南沙と資本・業務提携した。メキシコ子会社では実装搬送治具を製造している。

ベトナム子会社は両面配線板の新たな生産拠点として21年1月販売開始した。現在は第1生産ラインで自動車向けを中心に生産している。そして23年3月期中に第2生産ラインの稼働を予定している。生産拡大によって24年3月期黒字化を目指す計画だ。なおベトナム子会社には自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が6.7%出資している。

また21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。

■独自の印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカー目指す

中期経営計画では目標値として、最終年度26年3月期売上高300億円、営業利益16億円、営業利益率5.3%、ROE10%、配当性向25%を掲げている。

製品別売上高の計画は片面板が101億円、両面板が127億円、金属基板が26億円、実装関連が32億円、新事業が10億円(超厚銅基板が8億円、プリンタブル基板が2億円)、その他が4億円としている。また地域別の売上構成比の計画は日本が41%、中国が22%、ASEANが26%、北米その他が11%としている。製品別では両面板と金属基板の拡大、地域別ではASEAN(ベトナム)の売上拡大を図る方針だ。

6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。

グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築(ベトナム工場第1期フル稼働、両面事業・営業拠点の再編)や片面シェア拡大による利益確保など、企業間連携戦略ではEMSメーカー・商社との連携マーケティングによる製品開発・販路拡大や同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上やDX活用による業務効率化推進など、技術戦略ではプリンタブル関連基板の事業化や0603対応微細基板の技術提案など、財務戦略では自己資本強化や持続的・積極的な株主還元など、人財戦略ではマネジメント人材の育成やESG・SDGsへの取り組みなどを推進する方針だ。

なお22年7月には「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に登録した。自社の保有する技術を用いて環境への貢献を目指す。

■23年3月期3Q累計減益だが通期大幅増益予想据え置き

23年3月期の連結業績予想は売上高が22年3月期比7.8%増の230億円、営業利益が46.2%増の7億円、経常利益が22.7%増の6億30百万円、親会社株主帰属当期純利益が24.5%増の3億60百万円としている。配当予想は1円増配の6円(期末一括)としている。

第3四半期累計は売上高が前年同期比14.7%増の181億10百万円、営業利益が2.4%減の4億47百万円、経常利益が14.9%減の4億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益が30.9%減の1億84百万円だった。

全体としては増収ながら減益だった。主力のプリント配線板事業では、海外は自動車分野や事務機分野の受注が好調に推移し、前期稼働したベトナム子会社の売上拡大も寄与したが、国内が自動車生産調整や原材料価格・電力料金高騰の影響を受けた。実装関連事業では、産業機器や通信機器向けの受注が回復基調となった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が59億09百万円で営業利益が1億83百万円、第2四半期は売上高が58億42百万円で営業利益が30百万円、第3四半期は売上高が63億59百万円で営業利益が2億34百万円だった。

通期の連結業績予想は据え置いている。コロナ禍影響の長期化、世界的な半導体不足やサプライチェーン混乱による自動車等の減産、原材料価格の高騰など先行き不透明感が強いが、需要が高水準に推移し、ベトナム子会社の生産拡大なども寄与して大幅増益・増配予想としている。

第3四半期累計の進捗率は売上高が78.7%、営業利益が63.9%、経常利益が66.2%、親会社株主帰属当期純利益51.1%である。利益進捗率が低水準の形だが、ベトナム子会社の稼働本格化効果も寄与して通期ベースで収益拡大を期待したい。

■株価は基調転換して戻り試す

株価は22年12月の昨年来安値圏から反発して戻り歩調だ。週足チャートで見ると抵抗線となっていた26週移動平均線を突破した。基調転換した形だろう。低PBRも評価材料であり、戻りを試す展開を期待したい。3月9日の終値は300円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25円12銭で算出)は約12倍、今期予想配当利回り(会社予想の6円で算出)は約2.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS501円72銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約44億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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