- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンインベストメントアドバイザーはM&A戦略を加速、中期成長力に対して評価不足
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ジャパンインベストメントアドバイザーはM&A戦略を加速、中期成長力に対して評価不足
- 2015/8/14 07:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジャパンインベストメントアドバイザー(JIA)<7172>(東マ)は金融ソリューション事業を展開し、中期成長に向けてM&A戦略を加速している。5日にプライベート・エクイティ(PE)事業への本格進出と日本マンパワーのグループ会社NMPスペシャリストの買収、13日に日本証券新聞および日本証券新聞リサーチの買収を発表した。株価は年初来安値圏で推移して調整局面だが、15年12月期業績予想の増額修正、そして中期成長力を考慮すれば評価不足だろう。
■オペレーティング・リース事業を主力として投資銀行分野に事業領域を拡大
06年9月設立、14年9月東証マザーズに新規上場した。設立時からのオペレーティング・リース事業を主力として、07年2月M&Aアドバイザリー事業、14年5月太陽光発電の第1号ファンドを組成して環境エネルギーファンド事業に参入した。さらに14年12月には投資銀行本部を設置し、投資銀行分野に事業領域を拡げて金融ソリューション事業を展開している。
現在は当社がグループ戦略立案、およびM&Aアドバイザリー事業、環境エネルギーファンド事業などを行う投資銀行の位置付けだ。オペレーティング・リース事業については11年8月設立の子会社JPリースプロダクツ&サービシイズ(JLPS)が第二種金融商品取引業登録業者として、航空機や海運コンテナを主対象として展開している。なお米CAI社(NY証券取引所上場)と07年1月合弁で設立したCAIJ社(コンテナ・オペレーティング・リース事業)を持分法適用関連会社としている。
オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業の組成・販売・管理などに伴う手数料収入が収益柱だ。なお当社の会計上の売上高認識基準は、顧客(投資家)から案件ごとに募集している出資金の販売すべてが終了した時点において、出資金に含まれる手数料を売上高として計上する。
14年9月の上場によって知名度・信用力が向上し、資金調達力や営業力も向上した。一方で、主要顧客である中堅・中小企業の収益改善や法人実効税率の段階的引き下げ実施期待も背景として、全国に広がる顧客(投資家)の投資意欲は高水準である。
■中期成長に向けてM&A戦略を加速
オペレーティング・リース事業、M&Aアドバイザリー事業、太陽光発電の環境エネルギーファンド事業といった金融ソリューション事業に加えて、中期成長に向けて事業の多角化を推進するためのM&A戦略を加速している。
15年5月にはLEシステムの株式を取得して資本業務提携した。同社の電力備蓄用バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)は太陽光発電の出力抑制に有効な蓄電システムとして期待されている。さらにバイオマス発電に関するノウハウも豊富であり、当社の投資ネットワークやファイナンス技術との補完によって、再生エネルギー分野でのシナジー効果を創出する。
8月5日にはプライベート・エクイティ(PE)投資事業に本格的に進出するため、100%出資のPEファンドJPE第1号を設立してバリューアップ投資を開始すると発表した。当面は3億円を上限として当社100%出資で運営するが、将来的には投資家からの資金も受け入れる予定だ。
そして第1号案件として、日本マンパワーのグループ会社で人材派遣・紹介事業を展開するNMPスペシャリストの全株式を取得した。同社は当社グループ入りと同時に日本マンパワーと包括的業務提携を締結し、当社の主要顧客である全国の優良な中堅・中小企業向け人材供給、ならびに人材育成・教育やキャリアアップへの参画を図る。また3年後の上場を目指すとしている。
8月13日には日本証券新聞および日本証券新聞リサーチの全株式を取得して子会社化(株式譲渡9月1日予定)すると発表した。両社を通じて新聞・出版・広告を中心としたメディア関連事業、およびIR支援事業に進出する。当社が持つ金融機関や会計事務所などとのネットワークを最大限活用し、さまざまな金融情報の提供、全国の上場会社へのIR支援業務を積極低に展開する方針だ。
そして今後も業績拡大と企業価値向上に向けて、M&Aを積極活用して事業多角化やシナジー創出という成長戦略を推進する方針としている。
■15年12月期業績予想を増額修正
7月29日発表の今期(15年12月期)第2四半期累計(1月~6月)連結業績は、売上高が前年同期比52.5%増の7億80百万円、営業利益が同0.4%減の2億79百万円、経常利益が同39.8%減の1億66百万円、純利益が同36.1%減の1億07百万円だった。
販管費の増加で営業利益が微減、そして営業外費用の増加(支払利息、支払手数料、為替差損の増加)で経常減益、最終減益だった。しかしオペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも、案件組成および出資金販売が大幅に伸長した。
組成は航空機2件(組成金額222億93百万円)、コンテナ1件(同36億24百万円)、太陽光発電3件(同18億25百万円)の合計6件、販売は航空機4件(販売金額49億63百万円)、コンテナ2件(同17億72百万円)、太陽光発電3件(同16億65百万円)の合計9件(同84億01百万円)だった。また第2四半期末の商品在庫として航空機4件(募集総額98億74百万円)、コンテナ1件(同11億22百万円)の組成を完了している。
販売ネットワークは新たに地方銀行8行、税理士・会計事務所13事務所とビジネスマッチング契約を締結し、累計提携先は地方銀行19行、証券会社6社、税理士・会計事務所80事務所となった。また資金調達枠(コミットメントライン融資枠・当座貸越契約等)は14年12月期末比30.0億円増加の52.3億円となった。
なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(1月~3月)4億30百万円、第2四半期(4月~6月)3億50百万円、営業利益は第1四半期1億85百万円、第2四半期94百万円だった。
通期の連結業績予想については7月29日に増額修正を発表した。前回予想(2月12日公表)に対して、売上高が2億10百万円増額して前期比2.1倍の22億21百万円、営業利益が52百万円増額して同95.7%増の10億45百万円、経常利益が3百万円増額して同60.1%増の10億90百万円、純利益が3百万円増額して同54.8%増の6億55百万円とした。配当予想については前回予想を据え置いて無配継続としている。
オペレーティング・リース事業および環境エネルギーファンド事業とも、通期ベースで案件組成および出資金販売が想定以上に大幅伸長する見込みだ。修正後の通期予想に対する第2四半期累計の進捗率は売上高が35.1%、営業利益が26.7%、経常利益が15.2%、純利益が16.3%と低水準の形だが、下期(7月~12月)に多くの案件を抱えているため、特に第4四半期(10月~12月)に売上高が膨らむ見込みとしている。通期ベースで好業績が期待される。
■案件供給、販売とも需要は高水準推移
案件供給面では、オペレーティング・リース事業における航空機部門、海運コンテナ部門とも、レッシー(賃借人)からの引き合いが途絶えることなく、潜在需要が豊富な状態が続いている。また環境エネルギーファンド事業においても潜在的な案件数は豊富である。
販売面では、知名度・信用力向上に伴って全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社等からの顧客紹介が一段と増加傾向だ。航空機オペレーティング・リースはレッシー(賃借人)が欧米のナショナルフラッグ・キャリアと呼ばれる一流航空会社であることも好評の一因である。
また為替リスクがない太陽光発電ファンドも、安定利回り商品として投資家ニーズが高く、販売開始から短期間で完売している。15年12月期は太陽光発電ファンドの組成も大幅に増加させる方針だ。
なお8月9日付高知新聞朝刊第34面において、当社グループが高知県土佐清水市浦尻地域において建設を予定している太陽光発電所の設置について「浦尻メガ18日着工」と報道された件について、8月10日に当社の見解をリリースした。本件に関して地域住民の一部反対があったため、説明会に加えて一軒一軒訪問して具体的な当方案を示した結果、概ね理解が得られたものと判断して15年8月18日から着工することとした。なお現在計画している案件が複数あるが、本件による影響はないとしている。
■純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画
中長期成長戦略として、第1ステージは航空機・オペレーティング・リース事業での競争力の高い商品供給による規模の拡大、第2ステージは参入障壁が比較的高く、物件価値が比較的安定しているコンテナ・オペレーティング・リース事業でのラインナップ充実、第3ステージはオペレーティング・リースの代替商品として、太陽光発電を中心とした環境エネルギーファンド事業の強化を推進している。
そして第4ステージでは、当社の優良中堅・中小企業の顧客基盤を十分に拡充しつつ、M&Aアドバイザリー事業、プライベート・エクイティ(PE)投資事業、不動産投資事業、事業承継・再生ファンド事業、ウェルス・マネジメント事業、中小企業に対する人材紹介事業など、M&Aも積極活用して幅広く金融ソリューション事業を展開する方針だ。
オペレーティング・リース事業の継続的強化、環境エネルギーファンド事業の拡大、全国に広がる幅広い投資家層ニーズにマッチングした最適な金融商品とソリューションの提供に向けて、組成面では旺盛な投資家ニーズに対応した案件供給、新規賃借人の開拓、安定かつ機動的な資金調達力の確保、運用型商品の開発、販売面では全国の金融機関・会計事務所・コンサルティング会社などとの連携による販売ネットワークの拡充を推進する。
白岩直人代表取締役社長は「当社の商品は現在検討されている税制改正に対する準備ができているため有利な状況だ」「顧客の投資意欲は旺盛であり、顧客ニーズに対応した競争力の高い商品の提供や事業領域の拡大を加速する」と述べ、さらに「M&Aも積極活用して純利益ベースで毎期50%以上の成長を計画している」と高成長に自信を見せている。中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は調整の最終局面、中期成長力に対して評価不足
なお7月29日に自己株式取得(取得株式総数の上限12万株、取得価額総額の上限2億40百万円、取得期間15年7月30日~8月31日)を発表した。そして7月30日~31日に合計12万株(取得価額総額1億9986万9500円)を取得して終了した。
株価の動き(15年1月1日付で株式5分割)を見ると、年初来安値圏で推移して調整局面だ。7月29日発表の15年12月期業績予想増額修正および自己株式取得にもネガティブ反応だった。第2四半期累計の低進捗率が嫌気されている可能性がありそうだ。ただし全般地合い悪化が影響した7月9日の年初来安値1405円に接近して調整の最終局面だろう。
8月13日の終値1449円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS58円86銭で算出)は24~25倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS122円78銭で算出)は12倍近辺である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえて調整局面だ。ただし15年12月期業績予想の増額修正、そして中期成長力を考慮すれば評価不足の印象が強く反発展開だろう。