クリーク・アンド・リバー社は上値試す、24年2月期も収益拡大基調

クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。3月8日には「健康経営優良法人2023」に認定されたと発表している。23年2月期は2桁増益予想としている。日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引し、成長に向けた戦略投資に伴う費用増加を吸収する見込みだ。さらに24年2月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響で戻り高値圏から反落したが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。なお4月6日に23年2月期決算発表を予定している。

■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開

クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。

プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンピュータサイエンス、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、さらにグループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトの開発や事業領域の拡大を推進している。23年2月期第3四半期末時点でプロフェッショナルクリエイター34万5000人、クライアント4万5000社のネットワークを構築していることが強みだ。

新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)などを展開している。

22年4月に農業分野における障がい者雇用促進および農業を基軸とした地域雇用促進を目的とする子会社コネクトアラウンドを設立、グループ内における障がい者雇用促進を目的とする子会社One Leaf Cloverを設立、22年5月に日本アニメ・コミックに特化したNFT(非代替性トークン)プラットフォーム「ANIFTY」を運営するANIFTYを子会社化、22年7月にシェフなど料理人の独立・開業を支援する子会社シェフズ バリューを設立、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」を開発する子会社Nextrekを設立した。

23年1月にはテレビ番組企画・制作や人材サービスなどを展開するシオングループを子会社化し、グループは23年1月末時点で26社となった。なお3月8日には経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定されたと発表している。

グループ資産を活かした商品・サービス・プロジェクトとしては、漫画家発掘・デジタル配信事業のプラットフォーム「漫画LABO」、クリニックの経営支援、メタバース関連のVR建築展示場「XR EXPO」、独自のVR映像配信技術を活用した低遅延VRリアルタイム配信システム・VR遠隔医療教育システム、AR胸腔ドレナージ(順天堂大学と医療ARを共同研究・開発中)、AI需要予測「Forecasting Experience」、事業承継・M&A事業、アパレル分野のDXを支援する「sture(ストゥーラ)」、C&Rクリエイティブスタジオのメタバース(プラットフォーム開発中)、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」(プラットフォーム開発中)などがある。

22年12月にはYouTube上で展開するマルチチャンネルネットワーク(MCN)のThe Online Creators(OC)が、TV番組制作会社4社と共同で企業の重要目標達成指標(KGI)の実現を図る動画制作サービスOCPX(The Oline Creators Production Transformation)を開始した。

■事業シナジー強化

事業シナジーを見越した資本参加としては、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、NFT関連のブロックチェーンエンターテインメント事業を展開するシンガポールDEA社、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。

21年8月にはEPSホールディングス<4282>、ワールドホールディングス<2429>、SBSホールディングス<2384>と共同で、エルダー人材の働き方の多様性を企画・実現する新会社HATARAKUエルダー(EPSホールディングスの連結子会社)を設立した。

22年9月にはシンガポールDEA社と共同で、DEA社のGameFiiプラットフォーム「PlayMining」での23年春リリースに向けて、オリジナルのNFTiiゲーム「HERO SPIRAL(ヒーロースパイラル)」の共同開発開始を発表した。デジタル上で新たな体験として実現することをコンセプトとした「次世代拠点シミュレーションゲーム×NFT軍団バトルゲーム」である。またWeb3事業・NFT事業パートナーとしての連携強化を図るためシンガポールDEA社に追加出資した。

22年10月には投資事業を行う子会社としてC&Rインキュベーションラボを設立した。既存事業とのシナジーや新規事業立ち上げのシーズ獲得など、グループとしてのM&A・事業承継、事業再生への取り組みを本格化させる方針だ。

■日本クリエイティブ分野が拡大基調

22年2月期のセグメント別(調整前)構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野70%、韓国クリエイティブ分野8%、医療分野10%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益が日本クリエイティブ分野72%、韓国クリエイティブ分野0%、医療分野25%、会計・法曹分野3%、その他▲1%だった。

事業分野別の構成比は売上高がプロデュース36%、エージェンシー派遣42%、エージェンシー紹介13%、ライツマネジメント・他9%、売上総利益がプロデュース31%、エージェンシー派遣26%、エージェンシー紹介34%、ライツマネジメント・他9%だった。

日本クリエイティブ分野の領域別構成比は売上高がゲーム35%、Web26%、映像(テレビ・映画)25%、電子書籍・YouTube等10%、新規エージェンシー4%、その他1%、営業利益がゲーム53%、Web25%、映像15%、電子書籍・YouTube等21%、新規エージェンシー▲2%、他▲12%だった。

韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。

収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。

■プロフェッショナル50分野構想

中期経営計画では「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、目標数値は最終年度24年2月期の売上高470億円、営業利益45億円、営業利益率9.5%としている。

基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。

21年12月には、国内最大級のクリエイティブ(ゲーム・映画・TV・動画・XR・Web・漫画・小説・建築)開発スタジオとしてC&R Creative Studiosを始動した。22年9月にはC&R Creative Studiosが、日本マーケティングリサーチ機構(JURO)が実施した市場調査において「所属クリエイター数」および「制作案件実績数」部門NO.1となり、日本最大のクリエイティブスタジオの認証を受けたと発表している。さらに23年3月には、C&R Creative Studiosメタバースβ版のオープンを予定している。国や地域を超越してグローバル展開を目指す方針としている。

22年5月には「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)とともに、地域の未来社会を創造する首長連合」(万博首長連合)と、地域の産業や経済の発展を目指す支援包括連携協定を締結した。

22年11月には、メタバース空間での住宅展示場プラットフォーム「超建築メタバース」の本格提供を開始した。既に今秋のメタバース関連展示会において、イベント用として企業で活用され始め、ハウスメーカー、デベロッパー、工務店などで導入提案が複数進展している。

■23年2月期2桁増益予想、24年2月期も収益拡大基調

23年2月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用により従来方法に比べて売上高が影響を受けるが利益への影響は軽微)は、売上高が22年2月期比5.3%増の440億円、営業利益が17.2%増の40億円、経常利益が17.0%増の40億円、そして親会社株主帰属当期純利益が12.4%増の25億円としている。配当予想は22年2月期比3円増配の23円(期末一括)としている。12期連続増配予想となる。

第3四半期累計は売上高が前年同期比6.2%増の332億24百万円、営業利益が10.3%増の33億20百万円、経常利益が11.0%増の33億49百万円、親会社株主帰属四半期純利益が20.4%増の23億82百万円だった。日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引し、成長に向けた戦略投資による費用増加を吸収して2桁増益だった。第3四半期累計として過去最高業績だった。

なお収益認識会計基準適用により、日本クリエイティブ分野の電子書籍取次事業およびライセンス販売代理人事業で売上高の総額表示を純額表示に変更、請負事業で完成基準から進行基準に変更している。この影響額として、従来方法に比べて売上高が14億15百万円減少、売上原価が14億75百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前四半期純利益がそれぞれ59百万円増加している。旧基準による売上高は10.8%増の346億39百万円だった。営業利益以下への影響は軽微だった。

日本クリエイティブ分野は、売上高が3.2%増の225億14百万円(旧基準では9.7%増収)で、営業利益(調整前)が2.8%増の21億31百万円だった。ゲーム・WEB関連のプロデュース事業が好調に推移し、新規事業投資(メタバース関連等)やDX投資を吸収した。

韓国クリエイティブ分野は、売上高が0.1%増の26億10百万円で、営業利益が11百万円の損失(前年同期は9百万円の利益)だった。コンテンツ事業のデジタルコミック(Webtoon)が伸長したが、TV局への派遣稼働数が減少した。

医療分野は売上高が18.6%増の42億82百万円で、営業利益が38.1%増の12億95百万円だった。自動マッチングシステムによる成約件数増加も寄与して医師紹介が好調に推移し、新規事業(クリニック経営支援)投資を吸収した。なおコロナ禍の影響が和らいだため、レジナビFairのリアル開催を再開し、オンライン開催と合わせたハイブリッド型として開催している。

会計・法曹分野は売上高が11.2%増の17億10百万円で、営業利益が2.0倍の1億11百万円だった。コロナ禍の影響が和らいで人財紹介が回復基調となり、事業承継サービスも進展した。

その他事業(新規事業合計16社)は、売上高が23.3%増の21億06百万円で、営業利益が2億11百万円の損失(前年同期は59百万円の損失)だった。設立1年未満の子会社が6社と投資段階の事業が多いため全体として営業損失が拡大したが、売上面は16社のうち5社が増収、5社が減収、営業利益は16社のうち7社が収益改善・黒字となった。IT子会社は第3四半期に黒字転換した。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高113億71百万円で営業利益16億87百万円、第2四半期は売上高109億63百万円で営業利益8億24百万円、第3四半期は売上高108億90百万円で営業利益8億09百万円だった。なお第2四半期および第3四半期の営業利益は、第1四半期に比べて大幅に減少し、前年同期との比較でも減益となったが、これは医療分野の収益が上期偏重(特に第1四半期偏重)となる季節特性に加えて、第2四半期から成長に向けた戦略投資を活発化させたためである。

成長に向けた戦略投資としては、日本クリエイティブ分野におけるC&Rクリエイティブスタジオのメタバース化、VR建築展示場「XR EXPO」の構築、収益認識会計基準対応や生産性向上に向けたDX化推進、新卒採用・研修の強化(22年4月入社実績160名に対して、23年4月入社予定300名)、および子会社6社設立・グループ化などを推進した。

通期の連結業績予想は据え置いている。日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引し、成長に向けた戦略投資による費用増加を吸収して増収・2桁増益予想としている。グループ子会社の収益拡大も寄与する見込みだ。なお収益認識会計基準適用で売上高が影響を受けるが、この影響を除く従来方法ベースの売上高は22年2月期比10.0%増の460億円としている。

通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が76%、営業利益が83%、経常利益が84%、親会社株主帰属当期純利益が95%だった。医療分野の収益は上期偏重となる季節特性があることを考慮しても順調な水準だった。24年2月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

23年1月11日発表の自己株式取得(上限26万5000株・5億円、取得期間23年1月12日~23年2月28日)については2月28日に終了した。累計取得株式総数は1万3200株だった。

株価は地合い悪化の影響で戻り高値圏から反落したが、調整一巡して上値を試す展開を期待したい。なお貸借銘柄に選定されて2月27日売買分から実施されている。3月16日の終値は2120円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS112円15銭で算出)は約19倍、前期推定配当利回り(会社予想の23円で算出)は約1.1%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS540円83銭で算出)は約3.9倍、そして時価総額は約488億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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