【どう見るこの株】一正蒲鉾は戻り試す、23年6月期減益予想だが24年6月期収益拡大期待
- 2023/3/20 11:03
- どう見るこの株
一正蒲鉾<2904>(東証プライム)は、メーカーシェアNO.1のカニ風味かまぼこ「サラダスティック」を主力とする水産練製品・惣菜事業、まいたけ生産・販売のきのこ事業を展開し、事業を通じた持続的な社会の実現への貢献と企業価値向上を両立するESG経営も推進している。23年6月期は下方修正して減益予想となったが、23年3月より3回目の値上げを実施しており、24年6月期は価格改定効果や生産効率化効果などで収益拡大が期待できるだろう。株価はやや小動きだが2月の昨年来安値圏から反発の動きを強めている。地合い悪化の影響で上げ一服の形となったが、23年6月期減益予想を織り込み済みであり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。
■水産練製品・惣菜事業、きのこ事業を展開
1965年創業で新潟市に本社を置き、水産練製品・惣菜事業、まいたけ生産・販売のきのこ事業を展開している。グループは同社、運送・倉庫事業の連結子会社イチマサ冷蔵、および水産練製品事業の持分法適用関連会社PT.KML ICHIMASA FOODS(インドネシア)の3社で構成されている。
市場シェアは水産練製品が第2位、まいたけが第3位となっている。水産練製品・惣菜事業の主力はメーカーシェアNO.1のカニ風味かまぼこ「サラダスティック」で、この他に、ごま豆腐などのレトルト惣菜類、スナック菓子「カリッこいわし」なども展開している。きのこ事業では、青果としてのまいたけ販売だけでなく、その栄養成分に着目したまいたけエキス含有サプリメントの販売も行っている。
22年6月期(収益認識会計基準適用)のセグメント別業績は、水産練製品・惣菜事業の売上高が271億07百万円で利益(調整前営業利益)が46百万円、きのこ事業の売上高が40億37百万円で利益が4億61百万円、その他事業(運送・倉庫事業)の売上高が4億91百万円で利益が27百万円だった。
収益は、個人消費、原材料価格(特にスケソウダラを中心とした主原料のすり身の価格)やエネルギーコストの影響を受け、季節要因としておせち商戦やおでん・鍋料理需要などで、売上高および利益とも第2四半期(10月~12月)に集中する特性がある。さらに、おでん商材である揚物や鍋商材であるまいたけの販売は、秋から春先にかけての需要期における天候・気温変動の影響を受ける傾向がある。
22年6月期は、水産練製品・惣菜事業がすり身価格高騰・エネルギーコスト上昇の影響を受け、きのこ事業が消費伸び悩みなどによる販売価格下落の影響を受けた。
■第2次中期経営計画とプライム市場適合に向けた計画書
同社は45年度のありたい姿として、超長期計画ロードマップ「ICHIMASA30ビジョン」を策定し、その第1ステージ(16年度~25年度)の後半を「成長軌道への5年」と位置付けている。
そして第2次中期経営計画(21年7月~26年6月の5ヶ年計画)では、目標数値に最終年度26年6月期売上高(収益認識会計基準適用後)400億円、営業利益26億円、自己資本利益率(ROE)10%、投下資本利益率(ROIC)9%、自己資本比率60%台を掲げている。大型設備投資やM&A等によって成長力・収益力基盤を確立し、最終年度に営業利益26億円の達成を目指すとしている。
成長戦略として、すべての事業分野における品質保証体制の強化、水産練製品・惣菜事業のマーケティング機能強化とブランド価値向上、魚肉たんぱく製品のおいしさや健康機能を追求した「安全・安心で高品質な商品」の拡販、DX活用による工場合理化・省人化、きのこ事業の栽培技術の進化による安定栽培の維持と最大収穫量の実現、おいしさや栄養機能の調査・研究による商品開発と付加価値向上、事業規模拡大と事業領域拡大などを推進する方針だ。魚肉製品の需要が拡大している海外市場については、ターゲットエリア再設定や販売アイテム整理によって積極的にチャレンジする方針としている。
ESG経営・SDGsへの取組としては、20年7月に「ESG経営宣言」を制定し、事業を通じた持続的な社会の実現への貢献と企業価値向上を両立するESG経営も推進している。22年8月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、TCFD情報開示フレームワークに沿って、主事業である水産練製品・惣菜事業およびきのこ事業を対象とした気候関連リスク・機会への対応策について、複数のシナリオを用いた分析を行った。
また22年8月には、魚類の筋肉細胞の培養による食品生産を目指し、細胞培養スタートアップ企業のインテグリカルチャー社、およびマリニハニチロ<1333>との3社で共同研究開発契約を締結した。持続可能な「次世代の魚肉タンパク」の商業化生産および食品加工を目指す方針だ。
なお同社は、22年4月に実施された東京証券取引所の市場区分見直しに伴ってプライム市場を選択したが、流通株式時価総額が上場基準を充たしていなかったため、21年11月12日付でプライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示し、その後22年9月28日付、および23年3月15日付で計画の進捗状況を開示している。
22年12月末時点において流通株式時価総額と平均売買代金が上場維持基準を充たしていないため、計画期間の26年6月末までに上場維持基準を充たすよう、第2次中期経営計画で掲げた目標を達成すべく各種取組を推進するとともに、既存株主に対する非流通株式の売却要請・促進による流通株式数の増加、IR活動強化による投資家に対する訴求などの施策を推進し、企業価値の向上(時価総額の増大)に努める方針としている。
■23年6月期は下方修正して減益予想だが24年6月期収益拡大期待
23年6月期の連結業績予想は2月10日付で下方修正して、売上高が22年6月期比7.5%増の340億50百万円、営業利益が8.4%減の5億円、経常利益が19.8%減の5億円、親会社株主帰属当期純利益が16.9%減の4億70百万円としている。配当予想は据え置いて22年6月期と同額の12円(期末一括)としている。予想配当性向は46.9%となる。
期初予想に対して売上高を14億円、営業利益を8億円、経常利益を8億円、親会社株主帰属当期純利益を3億80百万円、それぞれ下方修正した。売上面は水産練製品・惣菜事業において物価上昇による消費者の節約志向で販売量が減少し、価格改定効果が想定を下回る見込みとなった。きのこ事業も市況が軟調に推移して想定を下回る見込みとなった。利益については、売上高が想定を下回る見込みとなったことに加えて、すり身価格、エネルギーコスト、包装資材など各種コストの上昇も影響する見込みだ。
第2四半期累計は売上高が前年同期比2.8%増の180億80百万円、営業利益が60.0%減の3億11百万円、経常利益が55.9%減の3億66百万円、親会社株主帰属四半期純利益が44.4%減の3億50百万円だった。増収減益だった。価格改定を実施したが、物価上昇による消費節約志向の高まりや買い控えで販売数量が減少し、工場稼働率も低下して固定費比率が上昇したため、想定以上の原材料・エネルギーコスト上昇を吸収できなかった。
営業利益増減分析は、増収効果+1.9億円、価格改定効果+3.3億円、原価コストアップ▲7.1億円、エネルギーコストアップ▲3.2億円、生産効率化・コストダウン効果+1.2億円、販管費増加▲0.8億円としている。
水産練製品・惣菜事業は売上高が3.5%増の157億33百万円、利益(調整前営業利益)が66.8%減の1億19百万円だった。カニ風味かまぼこ「サラダスティック」の販売数量伸長、22年9月1日納品分から実施している2回目の価格改定効果などで増収だが、個人消費抑制などで全体として販売数量が減少し、想定以上の原材料・エネルギーコスト上昇を吸収できず減益だった。
きのこ事業は売上高が0.7%減の21億11百万円、利益が65.7%減の1億33百万円だった。減収減益だった。販売数量は前年並みを確保したが、まいたけの市況が軟調に推移し、エネルギーコスト上昇も影響した。
その他事業は売上高が9.6%減の2億36百万円、利益が2.5倍の54百万円だった。運送事業における気象影響を主因とする輸入青果物の取扱数量減少などで減収だが、運送事業における固定費の縮減や倉庫事業における庫内管理最適化推進などの効果で増益だった。
四半期別にみると、第1四半期は売上高が71億79百万円で営業利益が2億18百万円の赤字、第2四半期は売上高が109億01百万円で営業利益が5億29百万円だった。季節要因として売上高および利益とも第2四半期に集中する特性がある。
そして通期予想を下方修正して減益予想とした。修正後の通期ベースでの前期比営業利益増減分析予想は、増収効果+8.6億円、価格改定効果+9.5億円、原価コストアップ▲14.3億円、エネルギーコストアップ▲3.5億円、生産効率化・コストダウン効果+3.2億円、販管費増加▲4.0億円としている。
下期の重点取組施策として、水産練製品・惣菜事業では、23年3月1日納品分より3回目の価格改定(約5%~15%の値上げ)を実施して利益構造の改善を推進する。また販売数量確保に向けて店頭販促の拡大、新商品(春夏商材)の積極投入、主力30商品の取扱拡大など販促活動を強化する。生産面では23年4月より、カニ風味かまぼこ「サラダスティック」の高速大量生産型専用工場として本社第2工場(投資額約55億円)が稼働する。複数工場で生産していた「サラダスティック」を本工場へ集約し、省人化や生産ロス圧縮を推進する。きのこ事業では、販売数量確保に向けて業務用ルートなど販路拡大を推進する。また生産効率化に向けて包装工程のスマートファクトリー化を推進する。
23年6月期は減益予想となったが、24年6月期は価格改定効果や生産効率化効果などで収益拡大が期待できるだろう。
■株価は戻り試す
株価はやや小動きだが2月の昨年来安値圏から反発の動きを強めている。地合い悪化の影響で上げ一服の形となったが、23年6月期減益予想を織り込み済みであり、調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。3月17日の終値は716円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS25円57銭で算出)は約28倍、今期予想配当利回り(会社予想の12円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS754円33銭で算出)は約0.9倍、そして時価総額は約133億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)