【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ケンコーマヨネーズは高値圏で堅調、中期成長力を評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ケンコーマヨネーズ<2915>(東1)はマヨネーズ・ドレッシング分野を主力として、タマゴ加工品・サラダ類・総菜関連分野への事業領域拡大戦略を加速している。第1四半期(4月~6月)は大幅増益で、16年3月期業績予想は増額含みだ。株価の反応は限定的だったが、高値圏1700円近辺で堅調に推移して日柄調整一巡感も強めている。指標面に割高感はなく、中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

■タマゴ加工品・サラダ類などへ事業領域拡大

 マヨネーズ・ドレッシング類、タマゴ加工品、サラダ類などの調味料・加工食品事業、フレッシュ総菜などの総菜関連事業、その他事業(ショップ事業、海外事業)を展開している。マヨネーズ・ドレッシング類は国内2位、ロングライフサラダは国内1位の市場シェアである。

 中期経営計画で掲げた「サラダカフェ」「サラダ料理」「世界のソース」「タマゴ製品」など、タマゴ加工品・サラダ類・総菜関連分野への事業拡大戦略を加速し、新商品を積極投入している。

 また業務用メーカーからの脱皮を目指し、13年9月販売開始した「サラダのプロがつくった」サラダシリーズのラインナップ充実など、BtoC市場への事業展開も強化している。通販サイト「ケンコーマヨネーズオンラインショップ」もリニューアルした。

 サラダカフェ事業は30店舗構想を掲げて百貨店やショッピングモールへのショップ展開を進めている。15年4月には17店舗目となる「Salad Cafe ルミネ立川店」がオープンした。

 また14年11月に東芝<6502>と業務提携して、東芝の植物工場「東芝クリーンルームファーム横須賀」で生産した野菜に当社製粉末ドレッシングを添付したコラボレーション商品を「サラダカフェ」で販売している。

 生産面では14年4月に、原料である「殻付き卵」から「タマゴ製品」まで一貫した生産システムを備えた静岡富士山工場が稼働した。さらに生産効率改善に向けた生産拠点統廃合も推進している。

 国内では子会社の関東ダイエットエッグ新座工場(埼玉県)を14年9月に閉鎖して静岡富士山工場に生産集約した。海外では当社と味全食品工業股份有限公司が50%ずつ出資する頂可(香港)控股份有限公司の子会社である東莞頂可食品有限公司(持分法適用関連会社)を14年8月末で解散し、主力工場の杭州頂可食品有限公司へ生産集約した。

 また15年2月には、インドネシア工場で製造し、インドネシアのハラール認証を取得して現地の一般消費者向けに販売しているマヨネーズタイプ「おマヨ/omayo」について、オンラインショップで販売開始した。

■16年3月期第1四半期は大幅増益、通期予想は増額含み

 なお15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)147億41百万円、第2四半期(7月~9月)153億50百万円、第3四半期(10月~12月)157億64百万円、第4四半期(1月~3月)144億72百万円、営業利益は第1四半期6億35百万円、第2四半期7億59百万円、第3四半期9億31百万円、第4四半期6億76百万円だった。

 また15年3月期の配当性向は19.9%だった。ROEは14年3月期比1.3ポイント上昇して9.6%、自己資本比率は同5.7ポイント上昇して45.5%となった。

 8月7日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は、売上高が前年同期比9.1%増の160億83百万円で、営業利益が同29.8%増の8億24百万円、経常利益が同33.5%増の7億73百万円、純利益が同2.4倍の8億68百万円だった。

 タマゴ加工品やサラダ類を中心にコンビニエンスストア向けなどの新規採用が進み、売上高は計画を上回ったようだ。売上原価率は73.8%で同0.3ポイント低下した。増収効果、静岡富士山工場の操業度上昇効果に加えて、インドネシア事業が年間ベースでの黒字化に向けて収益改善していることも寄与した。また純利益は関係会社株式売却益も寄与した。

 セグメント別動向を見ると、調味料・加工食品事業は売上高が同7.5%増の132億52百万円、経常利益(全社費用等調整前)が同27.0%増の6億97百万円、総菜関連事業は売上高が同18.6%増の25億28百万円、経常利益が同36.5%増の1億42百万円、その他(ショップ事業、海外事業)は売上高が同9.0%増の3億02百万円、経常利益が68百万円の赤字(前年同期は76百万円の赤字)だった。

 通期の連結業績予想は前回予想(5月11日公表)を据え置いて売上高が前期比4.8%増の632億円、営業利益が同1.6%増の30億50百万円、経常利益が同8.0%増の30億円、純利益が同7.8%増の17億70百万円としている。

 配当予想は同2円増配の年間25円(第2四半期末11円、期末14円)で予想配当性向は20.1%となる。配当については、連結ベースでの配当性向20%を意識して、配当の継続性に配慮しつつ、今後の成長と発展にあわせて安定配当水準を高めていくことを基本方針としている。

 売上面では分野別・業態別チームによるきめ細かな営業対応戦略が奏功し、タマゴ加工品やサラダ類を中心に、コンビニエンスストア向けなどの新規採用が増加基調である。商品ラインナップの強化と高付加価値商品の拡販も寄与する。

 利益面では静岡富士山工場立ち上げ費用の一巡、生産拠点統合に伴う費用の一巡、静岡富士山工場の操業度上昇と生産効率改善、さらに価格改定浸透効果なども寄与する。

 通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が25.5%、営業利益が27.0%、経常利益が25.8%、純利益が49.0%と高水準である。鶏卵や野菜などの原材料価格の動向が収益変動要因となるが、会社予想は保守的な印象が強く通期業績予想は増額含みだろう。

■中期経営計画で「サラダNO.1」目指す

 新中期経営計画「KENKO Five Code 2015-2017」では、基本戦略を「サラダNO.1(Leading company)」のポジション確立、サラダ料理の更なる進化、グローバル市場への積極展開を進める経営基盤強化としている。そして経営目標値には18年3月期売上高750億円、経常利益率5%、自己資本比率50%、ROE8%以上維持を掲げている。

 なお中期経営計画の取り組みとして15年7月、北米や欧州を中心とする食にまつわる情報収集拠点をカナダのバンクバーに新設した。バンクーバーリサーチオフィスでは市場演出型企業として、日本にはない新しい食文化をいち早くキャッチし、情報を発信していくとしている。

 分野別・業態別チームによるきめ細かな営業対応、メニュー提案力の強化、新商品投入などの戦略が奏功し、中食市場の拡大も背景として、コンビニエンスストア・食品スーパー・外食向けに、タマゴ加工品・サラダ類・総菜の採用が拡大基調である。高付加価値商品拡販や生産効率改善も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。

■株価は高値圏で堅調、日柄調整一巡して上値試す

 なお株主優待については毎年3月末日現在の株主に対して実施している。1単元(100株)以上~10単元(1000株)未満所有株主に対して当社商品1000円相当、10単元以上所有株主に対して当社商品2500円相当を贈呈する。

 株価の動きを見ると、4月の上場来高値1793円後は上げ一服の展開が続いているが、高値圏1700円近辺で堅調に推移して日柄調整一巡感も強めている。中期成長力を評価する流れに変化はないだろう。

 8月14日の終値1696円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS124円55銭で算出)は13~14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間25円で算出)は1.5%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1264円38銭で算出)は1.3倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が接近して下値を切り上げている。モミ合い上放れのタイミングのようだ。16年3月期業績の会社予想は増額含みだ。指標面に割高感はなく、中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。

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