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加賀電子は上値試す、23年3月期大幅増収増益予想、24年3月期も収益拡大基調
- 2023/3/22 10:10
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
加賀電子<8154>(東証プライム)は独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託のEMSビジネスを展開し、さらなる成長に向けて収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営を推進している。なお3月9日には「健康経営優良法人2023」の認定を受けたと発表している。23年3月期は大幅増収増益・増配予想(2月7日付で連結業績予想を3回目の上方修正、配当予想を2回目の上方修正)としている。主力の電子部品事業が伸長し、販売ミックス良化に伴う売上総利益率向上も寄与する見込みだ。23年3月期予想はさらなる上振れの可能性が高く、さらに積極的な事業展開で24年3月期も収益拡大基調だろう。株価は上場来高値圏だ。地合い悪化の影響で上げ一服の形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。
■独立系の大手エレクトロニクス総合商社
独立系の大手エレクトロニクス総合商社である。M&Aも積極活用して半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。
富士通エレクトロニクスを19年1月に子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得、20年12月28日付で社名を加賀FEIに変更、22年1月1日付で完全子会社化)した。また19年10月にパイオニアの製造子会社である十和田パイオニアを子会社化して商号を加賀EMS十和田に変更、20年4月にエレクトロニクス商社のエクセルを子会社化、20年11月に旭東電気(20年4月民事再生法適用申請)から新設分割された新:旭東電気を子会社化した。
21年10月には加賀EFIが、太陽誘電<6976>からBluetoothおよびWireless LANモジュールに関わる商圏、開発・製造技術ならびに知的財産権を承継し、22年1月から小型無線モジュール事業に本格参入した。22年6月には加賀デバイスが米国の半導体企業エフィニックス社と販売代理店契約を締結した。22年12月には加賀エアロシステムがユーロテックジャパンの事業を譲り受けて、回転翼航空機(ヘリコプター)事業を開始した。
22年3月期のセグメント別売上高構成比は電子部品事業(半導体、電子部品、EMS)が88%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、各種家電、写真・映像関連商品)が8%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)が1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)が4%で、営業利益構成比は電子部品事業が87%、情報機器事業が10%、ソフトウェア事業が▲0%、その他事業が3%、調整額が1%だった。
中期経営計画に沿ったセグメント区分は電子部品事業、EMS事業、CSI事業(情報機器事業)、その他事業(ソフトウェア事業、その他)としている。22年3月期の売上構成比は電子部品事業が66%、EMS事業が24%、CSI事業が8%、その他事業が3%、営業利益構成比は電子部品事業が53%、EMS事業が35%、CSI事業が10%、その他事業が1%、調整額が▲1%だった。
■収益力強化や新規事業創出を推進
中期経営計画2024では基本方針に、更なる収益力の強化、経営基盤の強化、新規事業の創出、SDGs経営の推進を掲げている。経営目標値は、25年3月期売上高7500億円(電子部品事業3800億円、EMS事業1500億円、CSI事業540億円、その他事業160億円、新規M&A等1500億円)、営業利益200億円、ROE8.5%以上(安定的に)としている。株主還元については連結配当性向の目安を25~35%に置き、安定的かつ継続的に充実化する。
重点アクションとして、さらなる収益力の強化では成長分野(モビリティ、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への選択と集中、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大、経営基盤の強化ではコーポレートガバナンスの強化、効率的なグループ運営、人的資本への投資、新規事業の創出では新規分野への取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションの推進、非連続な成長を狙うM&Aへの挑戦を掲げている。SDGs経営の推進については、サステナビリティ中長期経営計画(21年11月公表)に基づいて、持続可能な社会の実現と持続的なグループの成長の両立を目指す。
21年7月には、ソフトバンクが設立したソフトバンク5Gコンソーシアムの5G関連パートナーとして参画した。5G関連通信設備・機器の提供などを通じて、5G普及促進とともに、事業を通じた社会貢献を追求するとしている。22年4月には社長直下にSDGs推進室を新設した。SDGsの取り組みに関するグループ全体の連携を強化し、サステナビリティ経営を推進する。
23年1月には、トラース・オン・プロダクト<6696>が開発したAIによる電力コスト削減システム「AIrux8(エーアイラックス エイト)」について、日本における代理店1号として販売開始するとリリースしている。社会課題を解決する「AIrux8」の販売を通じて持続可能な社会の実現に貢献する。
23年2月には子会社のエクセルがEVバスの輸出入を展開するアルファバスジャパンと共同で、しずてつジャストライン(静岡県静岡市)に中国ALFA社製のEVバスを納入した。静岡県内では初となる大型EV路線バスとして静岡市内の路線で運行開始した。
なお23年2月には、諸物価高騰に対応して特別賞与(一時金)を支給(対象者数は国内子会社を含めて正社員、嘱託社員ならびに契約社員で約2800人、支給日3月3日)すると発表した。また3月9日には経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023」の認定を受けたと発表している。
■ベンチャー投資でイノベーション創出を支援
創立50周年を記念して設立した「50億円ファンド」を通じてベンチャー投資を行い、イノベーション創出を支援している。
出資実績としては、ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONX、前立腺癌生検および治療用システム開発の米HARMONUS、スマートセキュリティサービスのSecual、ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmo、AIソフトウェア開発のハカルス、次世代蓄電デバイス「グリーンキャパシタTM」開発のスペースリンク、動画CM配信プラットフォーム事業やデジタルサイネージ事業CMerTVを展開するSun Asterisk、アジア圏を中心にライブ配信アプリ「17Live」などソーシャルメディアを展開する台湾のM17、医療機器開発ベンチャーのニューロシューティカルズ、シェアリングプラットフォーム「Alice.style」を運営するレンタルサービスベンチャーのピーステックラボなどがある。
20年10月には、独自開発の光触媒技術を活用して各種環境製品を展開するカルテック(子会社化したエクセルがスタートアップ資金を出資)と、光触媒除菌脱臭機「TURNED K」の販売および製造に関わる部品調達で協業した。20年12月には、オンライン診療システム「D―CUBE」などオンライン健康支援事業を展開するリンケージに出資した。
21年5月には株式投資型クラウドファンディング事業者の日本クラウドキャピタルに出資、21年6月にはAI関連技術を開発するカタリナに出資、21年10月にはドローン等無人航空機の企画・製造・販売を行うVFR(PCメーカーのVAIOの子会社)に出資、21年11月には堆肥化装置や脱臭装置等を開発・販売するミライエに出資、21年12月には独自AI技術でエナジーインフォマティックス事業を展開するインフォメティスに出資した。
22年12月には電動バイク製造・販売を行うaidea(アイディア)に出資した。電動バイクの普及により、環境負荷の少ない社会の実現を目指すとしている。
■23年3月期大幅増収増益予想、さらなる上振れの可能性
23年3月期の連結業績予想(22年8月4日付で上方修正、22年11月8日付で2回目の上方修正、23年2月7日付で3回目の上方修正)は、売上高が22年3月期比18.0%増の5850億円、営業利益が41.0%増の295億円、経常利益が39.8%増の300億円、親会社株主帰属当期純利益が36.3%増の210億円としている。配当予想(22年11月8日付で第2四半期末特別配当30円、期末特別配当20円、合計特別配当50円上方修正、23年2月7日付で期末特別配当20円上方修正)は、22年3月期比100円増配の220円(第2四半期末100円=普通配当70円+特別配当30円、期末120円=普通配当70円+創立55周年記念配当10円+特別配当40円)としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比28.2%増の4522億21百万円、営業利益が77.4%増の260億06百万円、経常利益が78.8%増の266億18百万円、親会社株主帰属四半期純利益が82.9%増の190億53百万円だった。
第3四半期累計として過去最高業績だった。売上面は主力の電子部品事業が半導体・電子部品の需給緩和も背景として、広範な産業向けに伸長して大幅増収だった。利益面は大幅増収効果に加えて、販売ミックス良化に伴う売上総利益率向上(1.1ポイント上昇して13.2%)も寄与して大幅増益だった。販管費は20.5%増加したが、販管費比率は0.5ポイント低下して7.5%となった。営業外では持分法投資損益が改善(前年同期は損失4億99百万円、今期は利益58百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が増加(前年同期は1億18百万円、今期は6億26百万円)した。
電子部品事業は、売上高が30.2%増の4056億08百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が79.5%増の233億41百万円だった。部品販売ビジネスでは、半導体・電子部品の需給緩和も背景として広範な業界向けに販売が高水準に推移した。車載向けは供給不足が続いたが、独立系商社としての調達力の強みを活かして販売物量を確保した。EMSビジネスも車載関連や医療機器関連を中心に好調だった。
情報機器事業は売上高が10.8%増の291億39百万円、利益が23.3%増の14億99百万円だった。法人向けおよび教育機関向けパソコン販売が高価格製品を中心に堅調だった。資材不足で遅延していたLED設置ビジネスの大口工事の進捗も寄与した。
ソフトウェア事業は売上高が12.8%増の20億76百万円、利益が1億35百万円の黒字(前年同期は1億09百万円の赤字)だった。スマホ向けゲーム制作やCG制作における大型案件や新規案件の受注が回復した。
その他事業は売上高が17.3%増の153億97百万円、利益が105.3%増の9億71百万円だった。PC製品・周辺機器のリサイクルビジネスが好調に推移した。アミューズメント業界向けアーケードゲーム機器やゴルフ商品も伸長した。
会社別の営業利益(連結調整前)は、加賀電子が58.3%増の175億78百万円、加賀EFIが189.8%増の70億10百万円、エクセルが8.1%増の13億77百万円だった。また中計セグメント別営業利益(連結調整前)は、電子部品事業が104.6%増の159億01百万円、EMS事業が45.1%増の79億26百万円、CSI(コンシューマー&システムインテグレーター)事業が23.3%増の14億99百万円、その他事業が380.2%増の6億20百万円だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が1493億02百万円で営業利益が98億20百万円、第2四半期は売上高が1494億58百万円で営業利益が85億41百万円、第3四半期は売上高が1534億60百万円で営業利益が76億45百万円だった。第3四半期の営業利益は販管費でインフレ手当を含めた特別一時金17億円を引き当てたため、第2四半期比で減益の形となっている。
通期の連結業績予想は前回予想に対して、売上高を150億円、営業利益を15億円、経常利益を10億円、親会社株主帰属当期純利益を10億円、それぞれ上方修正した。半導体・電子部品の需給動向や為替変動などの不透明感を考慮して、第3四半期累計時点の上振れ分(社内計画に対して売上高182億円、営業利益15億円それぞれ上振れ)を反映させた。
修正後セグメント別計画は、電子部品事業の売上高が20.5%増の5230億円(前回予想は5070億円)で利益が42.5%増の258億円(同248億円)、情報機器事業の売上高が1.6%減の390億円で利益が4.1%減の20億円、ソフトウェア事業の売上高が8.4%増の30億円(同40億円)で利益が2億円の黒字(22年3月期は26百万円の赤字)、その他事業の売上高が2.1%増の200億円で利益が139.6%増の15億円(同10億円)としている。
修正後の通期予想に対する第3四半期累計の進捗率は売上高が77.3%、営業利益が88.2%、経常利益が88.7%、親会社株主帰属当期純利益が90.7%となる。第3四半期累計の上振れ分を上方修正して第4四半期の計画を据え置いた形であることを勘案すれば、23年3月期予想はさらなる上振れの可能性が高く、さらに積極的な事業展開で24年3月期も収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
なお22年8月には、JPX総研および日本経済新聞社が共同して算出する「JPX日経中小型株指数」の2022年度構成銘柄として、昨年度に続いて選定された。
23年1月には3つの主要なIRサイト評価機関において22年度も高い評価を得たとリリースしている。具体的には大和インベスター・リレーションズの2022年インターネットIR表彰で最優秀賞、日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキング調査で総合部門・最優秀サイト、ブロードバンドセキュリティのGomez IRサイトランキング2022で優秀企業・銅賞を獲得した。
株価は上場来高値圏だ。地合い悪化の影響で上げ一服の形となったが、指標面の割安感も評価材料であり、利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。3月20日の終値は4790円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS799円78銭で算出)は約6倍、今期予想配当利回り(会社予想の220円で算出)は約4.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS4026円22銭で算出)は約1.2倍、そして時価総額は約1375億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)