JFEシステムズは高値圏で堅調、24年3月期も収益拡大基調

JFEシステムズ<4832>(東証スタンダード)はJFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向けを主力として、一般顧客向け複合ソリューション事業も強化している。中期経営計画では、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて積極投資を実行する方針としている。3月29日には原価管理・採算管理システム「J-CCOREs」の東洋紡(株)への導入事例を会社HPに掲載した。23年3月期は製鉄所システムリフレッシュの本格化に伴う鉄鋼向けの好調が牽引し、開発生産性の向上なども寄与して増収増益・増配予想としている。積極的な事業展開で24年3月期も収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響で上げ一服の形となったが、上場来高値圏で堅調に推移している。好業績や指標面の割安感を評価して上値を試す展開を期待したい。なお4月27日に23年3月期決算発表を予定している。

■JFEグループの情報システム会社

JFEグループの情報システム会社である。鉄鋼向け情報システム構築事業を主力として、ERPと自社開発ソリューションを組み合わせた一般顧客向け複合ソリューション事業、自社開発のプロダクト・ソリューション事業も強化している。

なお親会社のJFEスチールが22年3月に発表した本社基幹システムのオープン環境への完全移行にも参画している。また22年11月にはJFEスチール仙台製造所のシステムリフレッシュを完遂した。引き続き他製鉄所(東・西日本、知多)のリフレッシュを推進する。

22年3月期の事業別売上高は鉄鋼が230億円、一般顧客が164億円、基盤が69億円、子会社(JFEコムサービス、IAFC)が41億円だった。収益面では情報システム関連のため、年度末にあたる第4四半期の構成比が高い特性がある。

ダイバーシティを推進し、女性の活躍推進の取り組みが優れた企業を厚生労働大臣が認定する「えるぼし」や、働き易い職場環境整備・意識啓発に取り組む企業を東京都が登録する「心のバリアフリーサポート企業」など、働き方・企業風土に関する各種認証を取得している。20年7月には厚生労働大臣から子育てサポート企業として「プラチナくるみん」認定を受けた。

21年12月には「ダイバーシティ推進基本方針」「ダイバーシティ推進キャッチフレーズ」および「2030年度女性役員・管理職(部長・課長級)達成目標」を新たに策定した。2030年度までに女性役員・管理職比率12%の達成(21年度実績5.7%から倍増)を目指す。23年3月には健康経営優良法人2023(大規模法人部門)に6年連続で認定された。

また23年1月には同社コーポレートサイトが、ブロードバンドセキュリティのGomez IRサイトランキング2022において優秀企業・金賞、日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキングにおいて最優秀サイトを受賞した。

■電子帳票パッケージは15年連続国内シェア1位

電子帳票パッケージなど自社開発ソリューションの拡大に注力している。21年4月には食品業界のDX推進を支援する原料情報管理・原材料表示作製クラウドサービス「MerQurius(メルクリウス)クラウド」の提供を開始した。そして本格販売開始から約1年半で利用社数が倍増するなど好調に推移している。

21年7月には、DataDeliveryが公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証する電子取引ソフト法的要件認証制度および電子書類ソフト法的要件認証制度の2つのJIIMA認証を同時取得した。

21年10月にはSAP S/4HANA向けに自社開発したプロジェクト管理業務テンプレート「SIDEROS PS TEMPLATE for S/4HANA」の最新版の販売を開始した。21年11月には電子帳簿保存法に対応した電子証跡システム「DateDeliveryクラウド」の提供を開始した。22年6月にはアマノ<6436>がWeb購買システム「Enterprise Commerce」を導入したと発表している。

22年9月には、自社開発の電子帳票パッケージFiBridgeシリーズが、富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2022年版」電子帳票パッケージ(運用・保存システム)分野2021年度市場占有率調査(販売パッケージベース)で、15年連続で国内製品シェア1位(数量シェア28.5%、金額シェア27.2%)を獲得したと発表している。利用企業数は4200社を超え、電子帳簿保存法適用実績はシリーズ累計2883社となっている。

22年12月には脱炭素社会に向け、製造業の製品毎「サプライチェーン排出量」の見える化を目的に、自社開発の原価計算・採算管理システム「J-CCOREs」の新機能「CO2排出量計算モジュール」を、23年1月から提供開始すると発表した。

■中期経営計画

22年4月に策定・公表した中期経営計画では、キャッチフレーズに「Accelerate innovation」を掲げ、目標数値は最終年度25年3月期売上高570億円、経常利益66億円、ROS(経常利益率)11.6%、親会社株主帰属当期純利益43.7億円、ROE15%程度の水準維持、配当性向35%程度(現行は30%)としている。なお23年3月期から中間配当を実施する。

サステナビリティ活動を意識した経営を追求し、強みとする商品力・技術力・人材力およびDX事業の更なる強化に向けて、3ヶ年で150億円規模の積極投資(商品開発投資20億円、サービス提供型ビジネス向け投資50億円、研究開発投資、既存事業の強化と事業領域の拡大を狙ったM&Aなど)を実行しながら、並行して増収増益を目指すとしている。なお人材投資については、採用・育成費や社員報酬水準向上などの増分として約20億円を見込んでいる。

事業別戦略としては、鉄鋼では製鉄所システムリフレッシュ本格化への対応やDX案件への積極対応、ソリューション・プロダクトでは商品機能拡充やクラウド対応によるITベンダーとしての商品力・提案力強化、ビジネスシステムでは新技術・ノウハウの蓄積によるSoRビジネスからSoEビジネスへの転換、基盤ではJFEグループ以外の顧客開拓やクラウド・セキュリティ事業の強化・拡大、DX関連ではオフィスソリューションや製造現場ソリューションなどDX新規ビジネスの拡大などを推進する。

なお23年9月に会社設立40周年を迎えるため、パーパスの制定、記念事業の検討、若手・中堅社員から会社への提言の準備を進めている。

■23年3月期増収増益・増配予想、24年3月期も収益拡大基調

23年3月期連結業績予想(22年10月26日に売上高を10億円上方修正、各利益を据え置き、23年1月26日に売上高を据え置き、各利益を上方修正)は、売上高が22年3月期比9.1%増の550億円、営業利益が8.2%増の60億70百万円、経常利益が8.1%増の61億円、親会社株主帰属当期純利益が10.1%増の41億円としている。配当予想(23年1月26日に期末5円上方修正)は22年3月期比15円増配の90円(第2四半期末40円、期末50円)としている。連続増配予想である。

第3四半期累計は売上高が前年同期比10.8%増の411億61百万円、営業利益が9.9%増の45億77百万円、経常利益が9.9%増の46億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益が10.1%増の30億59百万円だった。

増収増益と順調だった。JFEスチール向け製鉄所システムリフレッシュプロジェクトの本格化に伴う鉄鋼向けの好調が牽引した。22年10月にはJFEスチール仙台製造所の基幹システムをオープン環境に完全移行するプロジェクトについて完工した。コスト面では従業員の処遇改善等の費用が増加したが、増収効果に加えて、開発生産性の向上や経費支出の抑制なども寄与した。売上総利益率は22.3%で0.7ポイント低下、販管費比率は11.2%で0.6ポイント低下した。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高135億26百万円で営業利益12億23百万円、第2四半期は売上高136億07百万円で営業利益15億56百万円、第3四半期は売上高140億28百万円で営業利益17億98百万円だった。

通期の連結業績予想は、前回予想(売上高55億円、営業利益56億70百万円、経常利益57億円、親会社株主帰属当期純利益37億40百万円)に対して、売上高を据え置き、営業利益を4億円、経常利益を4億円、親会社株主帰属当期純利益を3億60百万円、それぞれ上方修正した。製鉄所システムリフレッシュの本格化に伴う鉄鋼向けの好調が牽引し、第3四半期に開発生産性の向上や経費支出の抑制が見られたことも寄与する。

部門別売上高の計画は、鉄鋼が製鉄所システムリフレッシュの進展で22年3月期比37億円増加の267億円、一般顧客が2億円増加の166億円、基盤がJFEスチール向けの増加で4億円増加の73億円、子会社がITインフラの増加で3億円増加の47億円としている。積極的な事業展開で24年3月期も収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

株価は地合い悪化の影響で上げ一服の形となったが、上場来高値圏(株式分割調整後)で堅調に推移している。好業績や指標面の割安感を評価して上値を試す展開を期待したい。3月29日の終値は2646円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS261円06銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の90円で算出)は約3.4%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1469円63銭で算出)は約1.8倍、そして時価総額は416億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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