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ラバブルマーケティンググループは底放れの動き、24年3月期収益拡大期待
- 2023/3/31 09:27
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ラバブルマーケティンググループ<9254>(東証グロース)はSNSマーケティング事業を主力とする持株会社である。第2の収益柱育成に向けてDX支援事業も展開し、さらに23年3月にはタイのDTK ADを子会社化して東南アジアを中心とする海外展開への取り組みも開始した。さらなる成長加速に向けてサステナビリティマネジメントを推進し、人材戦略も重視している。23年3月期は先行投資や一時的費用も影響して減益予想となったが、売上面は主力のSNSマーケティング事業が順調に拡大している。積極的な事業展開で24年3月期は収益拡大が期待できるだろう。株価は動意づいて乱高下の形となったが、水準を切り上げて底放れの動きを強めている。中期成長性を評価して戻りを試す展開を期待したい。
■SNSマーケティング事業を主力とする持株会社
企業やブランドのSNSマーケティングを支援するSNSマーケティング事業を主力とする持株会社である。SNS普及期の08年に設立(コムニコ設立、14年に純粋持株会社へ移行)して培ったSNSマーケティングに関する豊富なノウハウを強みとしている。第2の収益柱育成に向けて企業のDXを支援するDX支援事業(従来のマーケティングオートメーション事業を23年3月期より名称変更)も展開し、さらに23年3月にはタイのDTK ADを子会社化して東南アジアを中心とする海外での事業展開への取り組みも開始した。
子会社はSNSマーケティング事業のコムニコ、一般社団法人SNSエキスパート協会、DX支援事業の24-7、および23年3月に子会社化(出資比率49%)を発表したタイのDTK ADである。なお一般社団法人SNSエキスパート協会は、SNSに関する正しい知識の普及と効果的かつ安全にSNSを活用できる人材育成を目的として、コムニコが16年11月に設立した法人である。理事の派遣を通じて実質的に支配しているため子会社としている。
23年3月期第3四半期累計のセグメント別売上高構成比はSNSマーケティング事業が94%、DX支援事業が6%、営業利益(調整前)構成比はSNSマーケティング事業が102%、DX支援事業が▲2%だった。
■SNSマーケティング事業は運用支援~ツール提供~教育の好循環で成長
SNSマーケティング事業は、SNSマーケティングに関する運用支援~運用支援ツール提供~人材教育サービスという3つのソリューションで構成されている。企業のSNSマーケティングのオペレーションをフルサポートし、3つのソリューションが相互補完しながら好循環で成長するビジネスモデルを特徴としている。運用支援と運用支援ツール提供はコムニコ、人材教育サービスはSNSエキスパート協会が展開している。
運用支援は、12年12月にサービス開始したSNSアカウント投稿・分析ツールcommnico Marketing Suiteや、18年5月にサービス開始したSNSキャンペーン支援ツールATELUを活用し、顧客企業のSNSアカウント戦略策定からアカウント開設、運用支援・代行、投稿コンテンツ制作、コメント対応、キャンペーン企画・運営、広告出稿、レポート作成、効果検証までをワンストップサービスで提供(受託)している。
運用支援ツール提供は、SNSアカウントでの投稿管理などに係る作業時間を大幅に削減するcommnico Marketing Suiteや、応募者の収集・当選管理などSNSキャンペーンに必要な作業を効率化するATELUをSaaS型で提供している。
人材教育サービスは、SNSアカウント開設・運用に係るノウハウや、炎上などSNSに潜むリスクに関する内容を体系化した検定講座を開発・提供している。このほかにセミナー、講演、書籍、メディアを通して、SNSに関する正しい知識の普及・啓蒙活動にも努めている。社内人材のプロ化にもつながり、3つのソリューションの相乗効果を高めている。なお18年1月~22年9月にSNS関連記事が外部メディアに掲載された件数は211件、寄稿した件数は108件で、いずれも競合他社を圧倒的にリードしている。また、21年4月~22年3月の自社メディア運営におけるリード獲得数は3678件、自社開催無料ウェビナーへの参加者数は491名となっている。
新たなツール・サービスの開発では、23年3月にInstagramのダイレクトメッセージの自動応答に対応するチャットボットツール「autou」を開発し、提供開始した。今後の盛り上がりが見込まれるライブコマースやSNSキャンペーンにも利用可能である。
主な収益は、月額課金の運用支援ツール利用料、月額課金の運用支援基本料金、従量課金のコンテンツ制作料金(企画数、原稿作成、撮影数など投稿数によって変動)である。受注は大手広告代理店経由と直接受注がある。23年3月期第2四半期累計時点のソリューション別売上高構成比は運用支援が76.5%、運用支援ツール提供が21.1%、人材教育サービスが2.4%だった。
同社のSNSマーケティング運用支援は大手企業を中心に銀行、小売、情報通信、飲食サービス、自治体など多種多様な企業・官公庁に幅広く導入されている。23年3月期第2四半期累計時点の顧客企業規模別売上高構成比は、売上高1000億円以上の大企業が64.6%、その他が35.4%だった。直近では大手IT系企業の大型案件を受注した。多数のブランドを展開する企業がブランド毎にSNSアカウントを運用するケースが増えているため、大型案件の受注が増加傾向となっている。
主要KPIとして、23年3月期第2四半期累計の運用支援新規受注件数は189件となった。22年3月期第2四半期累計の200件との比較では減少したが、21年3月期第2四半期累計の80件に対しては大幅に増加している。
23年3月期第2四半期末時点のSaaS型クラウドツール累計契約件数は22年3月期末比50件増加の450件(commnico Marketing Suiteが40件増加の341件、ATELUが11件増加の103件、その他が1件減少の6件)だった。また、23年3月期第2四半期のcommnico Marketing SuiteのARRは205百万円、解約率はcommnico Marketing Suiteが1.17%、ATELUが1,71%だった。
なおcommnico Marketing Suiteの有償契約アカウント数は22年10月末時点で累計3000件を突破、ATELUのキャンペーン実施数は22年7月末に累計5000件を突破した。キャンペーンに参加したユーザー数はTwitterとInstagramを合わせて延べ2926万人に上る。
人材教育サービスでは、検定受講者数が22年9月末時点で累計4693名(リスクマネジメント検定が798名、初級検定が3388名、上級検定が507名)となった。さらに23年3月末時点では検定受講者数が累計5000人を突破した。
■成長に向けてDX支援、海外、新規事業も育成
同社は成長戦略として、M&A・アライアンスも積極活用し、基幹事業であるSNSマーケティング事業の拡大を加速させるとともに、DX支援事業の基幹事業化、海外や新しいテクノロジーを活用した新規事業の育成も強化する方針としている。
SNSマーケティング事業は「SNSマーケティングの総合代理店としてのシェアNO.1」を目指し、事業拡大に向けた重点施策として、運用支援および運用支援ツール提供では付加価値の高いサービスの提供、サービス品質とコンテンツパフォーマンスの向上、新サービスの開発・拡充、SaaS型クラウドツールのクロスセル、カスタマーサクセスの実現、幅広いSNSプラットフォームへの対応とサービス拡充などを推進する。人材教育サービスではマーケティング強化によるブランディング、検定受講者数の拡大、法人向けサービスメニューの拡大などを推進する。こうした成長戦略を支えるため積極的な人材投資を継続する。
成長に向けた育成事業と位置付けているDX支援事業は、子会社24-7がSalesforceを中心にMA(マーケティングオートメーション)、SFA(営業支援システム)、CRM(顧客管理システム)の導入・運用支援を展開している。12年にHubSpot社のMAツール「HubSpot」の取り扱いを開始し、20年1月にはSalesforceコンサルティングパートナーに認定されてSalesforce社のMAツール「Pardot」の取り扱いを開始した。さらなる事業拡大に向けて、SFA・CRM領域の開発案件新規開拓、SFA領域における事業提携などを推進する。
海外展開については23年3月にタイのDTK ADを子会社化し、東南アジアを中心とする海外での事業展開への取り組みを開始した。DTK ADはSNSマーケティングやインバウンドを対象としたプロモーションを得意とするマーケティングエージェンシーで、現地の芸能人、YouTuber、ブロガー・ネットアイドルなど3000名以上のインフルエンサーとの独自のネットワークを活かしたインバウンド向けプロモーションに多数の実績を持っている。既にタイを拠点としてシンガポールや香港など複数国に事業展開している。また、DTK ADの木村好志代表取締役はタイ在住15年で現地に精通し、顧客からも高い評価を得ている。今後の展開としては、東南アジアに進出する日系企業のマーケティング支援や東南アジアからのインバウンド需要の獲得、双方の顧客に対するアップセル・クロスセルにより、海外事業拡大を目指す方針としている。
新規事業に関しては、SNSに関する豊富なノウハウと新たなテクノロジーを活用し、NFTやメタバースなどWeb3領域における新サービス開発・提供を目指す方針だ。子会社のコムニコはWeb3スタートアップ企業のプレイシンクと協業し、秘密鍵の管理不要なNFT保有手段を開発してNFT領域に参入する。一部のデジタルリテラシーの高いユーザーのみが保有していたNFTをより多くのユーザーに届けることができ、これまでのプレゼントキャンペーンよりもさらに強いファン層の参加を促し、かつ従来のTwitterキャンペーンよりもリアルタイム性のあるキャンペーン設計が可能となる。
■アライアンスを積極活用
22年9月には子会社のコムニコが、バーチャルの観光物産や自動車ショールームなどXR技術を活用したソリューション「ABALシステム」を提供するABALと協業した。SNSプラットフォームとバーチャル空間を組み合わせて、Web3時代のSNSマーケティングソリューションに関する新サービスの共同開発・提供を推進する。
22年11月には子会社のコムニコが、エンファムが運営する子育て支援メディア「リトル・ママ」とタイアップし、新サービス「SNSタイアッププラン#つながる子育てビト」を開始した。このタイアップにより、特にファミリー向け商品・サービスを扱う企業に対して、親和性が高い「子育て女性」という特定の層をターゲットとするSNS施策やイベントの提案が可能になる。23年1月にはフジッコの「おかず畑おばんざい小鉢」を訴求するキャンペーン・モニター企画に導入された。
また22年11月には、TikTok支援を得意とするmemeに出資して資本業務提携した。この提携により、短尺動画(ショート動画)を活用した幅広い提案を行うことが可能になる。将来的には両社で新サービス開発も推進する。
23年1月には子会社のコムニコが、note<5243>が22年9月から開始しているnote proセールスパートナー制度のパートナー企業に認定された。noteを活用したSNSマーケティング支援の拡充を推進する。
23年3月には子会社の24-7が、オプロのパートナー企業となり、オプロが提供するBtoBサブスクリプション管理サービス「ソアスク」の企業向け導入支援を開始した。
■サステナビリティマネジメントで人材戦略を重視
同社は、メンバーが輝くことできる「働きがいのある組織」が全活動のベースとなり、そこから生み出される事業活動によって社会の持続可能な発展に貢献するとの考え方に基づき、この循環の創造を目指してサステナビリティマネジメントを推進している。
22年10月には本社を移転した。新しい発見やイノベーションが生まれる基地として多様な働き方を推進し、社員の定着、職場の一体感やエンゲージメントの向上を図る方針としている。
また子会社のコムニコでは人財戦略チームを立ち上げて、採用~教育の体制仕組化を進めている。そして23年の新卒入社の内定数が11名となり、新卒採用を開始して以降、最多人数となった。
23年3月には、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において、健康経営優良法人2023(大規模法人部門)に認定された。グループ各社を含めて今回初めて申請し、認定された。
■23年3月期は先行投資などで減益予想、24年3月期収益拡大期待
23年3月期の連結業績予想(23年3月15日付で売上高を据え置き、各利益を下方修正)は、売上高が22年3月期比25.5%増の17億42百万円、営業利益が60.0%減の80百万円、経常利益が58.3%減の78百万円、親会社株主帰属当期純利益が70.3%減の27百万円としている。
前回予想に対して売上面は概ね順調に推移しているが、利益面(営業利益1億25百万円下方修正)では、23年2月のTwitter社のAPI変更告知の影響による利益率の高いキャンペーンの減少で前回予想比10百万円減少、体制強化のための採用教育費増加で同20百万円減少、M&Aや資本業務提携の検討に係る費用増加で同15百万円減少、本社移転に伴う地代家賃増加で同9百万円減少、研究開発増加で同8百万円減少する見込みとなった。
23年3月期は先行投資や一時的費用も影響して減益予想となったが、売上面は主力のSNSマーケティング事業が順調に拡大している。積極的な事業展開で24年3月期は収益拡大が期待できるだろう。
■株価は底放れの動き
株価は動意づいて乱高下の形となったが、水準を切り上げて底放れの動きを強めている。週足チャートで見ると13週移動平均線が上向きに転じてきた。中期成長性を評価して戻りを試す展開を期待したい。3月30日の終値は1799円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円89銭で算出)は約95倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS318円97銭で算出)は約5.6倍、そして時価総額は約25億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)