【どう見るこの相場】「三日新甫」の4月相場の先憂後楽はリベンジ消費の最出遅れの食品・水産物の卸売株をマーク

 大騒乱の金融システム不安が、カゲもカタチもカケラもなくなったようにみえる。3月期末31日の日経平均株価は、配当の再投資などの期末特有の需給要因にもサポートされて2万8000円台を回復した。同じく米国のダウ工業株30種平均(NYダウ)も、月末と四半期末が重なった機関投資家のリバランス(資産配分の調整)買いも入って3日続伸し、3月6日以来の急落分をほぼ9割方取り戻して引けた。4月相場への期待が膨らむ一方である。

 ただ4月相場は、「三日新甫」できょう3日が月初の初商いである。相場アノマリーでは、「二日新甫」は荒れるとされており、「三日新甫」も、この相場アノマリーに準ずるのか準じないのかいささか気になるところはある。実は、昨年10月相場も「三日新甫」であり、相場環境も今回と類似点が多かった。前月9月のFRB(米連邦準備制度理事会)の5回目の政策金利引き上げを受けてNYダウが、連日の年初来安値更新となっていたころに、クレディ・スイス・グループの株価が月間で20%も下落する経営危機が伝えられ、10月3日寄り付きの日経平均株価は、心理的なフシ目の2万6000円割れでスタートした。幸いなことに同時に進行した円安・ドル高や折から本格化した決算発表の好業績買いなどから、引けてみれば月末に2万7587円と引けて持ち直し月足では陽線を立てる小康を得た。

 今年4月の「三日新甫」相場が、その再現となるかどうかのポイントは、まずは欧米の金融システム不安の先行きの動向だろう。経営破綻したシリコンバレーバンク(SVB)や経営に行き詰まったスイスの金融大手クレディ・スイス・グループの引受先を確定させ、大量の救済資金も供給した欧米の金融当局が、金融危機の広がりを腕力で抑え込んだようで、その後はバッドニュースは途絶えている。しかし問題は、あらぬ方向に広がりをみせる可能性もあるとも観測されている。FRBの金利引き上げの長期化が、保有債券の損失拡大につながりSVBの経営破綻の呼び水となったのと軌を一にするように、銀行監視の再強化が、融資審査の厳格化を招き景気の下押し要因になるかもしれず、インフレ抑制を優先するFRBはなお難しい舵取りを余儀なくされるとの懸念である。危機抑え込みからまだ半月、「ウェイト・アンド・シー」が続くことになる。

 国内でも相次ぐ重要イベントが、ポイントとなる。まず日本銀行は、きょう3日に日銀短観(全国企業短期経済観測調査)を発表するのに続いて、9日に新総裁に植田和男氏が就任し、4月27日、28日に初めての金融政策決定会合を主催する。また天下分け目の統一地方選挙も、前半選挙の投開票日が4月9日、後半選挙の投開票日が4月23日に控える。岸田政権は、過去最大の114兆円もの来2023年度予算を成立させ、子育て支援や物価対策もアピールしているが、この4月も、民間の信用調査会社の集計では食品の値上げが5100品目も予定されるなど家計を圧迫しそうで、このところ持ち直している内閣支持率通りの選挙結果となるか、この動向もいささか気になる。
 
 「下手の考え休むに似たり」といわれるが、考えれば考えるほど4月相場はややこしくなり、やはり相場アノマリー通りに投資銘柄の絞り込みは一苦労しそうである。シンプルに考えれば、3月末の日米同時株高の勢いがどこまで継続するを試す主力銘柄の正面突破がメーン・シナリオだろう。さらにPBR1倍台割れ銘柄、新規株式公開(IPO)銘柄などセカンド、サードのシナリオも浮上しそうだが、こうしたシナリオ通りに相場全般が活気付くようなら、サブ・シナリオとしては金融システム不安時に逆行高した銘柄のフォローアップも選択肢になるはずだ。

そこで今週の当特集では、リオープン(経済再開)、リベンジ消費関連の最出遅れ株、サードパーティー銘柄ともいうべき食品、水産物の卸売株に注目することにした。その代表は、昨年来高値追いを続けたトーホー<8142>(東証プライム)と東都水産<8038>(東証スタンダード)である。新型コロナウイルス感染症の収束で行動規制も緩和され、リオープン関連株が幅広く底上げに転じ、裁量余地の大きい旅行・外食などにもリベンジ消費が高まり、この消費拡大が卸売株にも波及し両社株が、ともに業績続伸予想と業績の上方修正を発表したことがカタリスト(材料)となった。主力銘柄の高人気が続けば乗り換えの動きも出て下値を確認する展開も想定されるが、これから5月のゴールデンウイーク、夏のバカンスシーズンを控えるなか、リベンジ消費が本格消費へと本格的にグレードアップし、卸売株の業績や株価を支える可能性もあり、下値は「先憂後楽」のチャンスとしてマークしたい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)

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