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京写は調整一巡、ベトナム工場稼働率上昇して24年3月期収益拡大期待
- 2023/4/4 09:26
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
京写<6837>(東証スタンダード)はプリント配線板の大手メーカーで、片面プリント配線板については世界最大の生産量を誇っている。中期成長に向けて6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。23年3月期(3月17日付で売上高を上方修正、各利益および配当を下方修正)は特別損失計上で最終赤字予想となったが、需要が堅調に推移して前期比では増収、営業・経常増益予想としている。24年3月期はベトナム工場の稼働率が上昇し、特別損失一巡も寄与して収益拡大が期待できるだろう。株価は地合い悪化の影響で戻り一服となったが、23年3月期最終赤字・減配予想に対するネガティブ反応は限定的だった。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。
■プリント配線板の大手メーカー
プリント配線板の大手メーカーである。世界最大の生産能力を誇る片面プリント配線板、および両面プリント配線板を柱として、実装治具関連事業も展開している。
プリント配線板は独自のスクリーン印刷技術をベースとして、防塵対策基板、熱伝導放熱基板、ファイン回路片面基板などに技術的な強みを持っている。そして高温工程で繰り返し使用可能なノンシリコーンタイプ粘着キャリア、電子部品の急速な小型化に対応した業界初のスクリーン印刷法による0603チップ部品対応片面配線板、伸縮性のある材料にスクリーン印刷で直接回路を形成するストレッチャブル基板(プリンタブル基板)などの受注拡大が期待されている。
22年3月期セグメント別売上高は日本が96億47百万円、中国が114億03百万円、インドネシアが20億34百万円、メキシコが85百万円、ベトナムが5億88百万円、営業利益は日本が2億39百万円、中国が6億44百万円、インドネシアが14百万円、メキシコが5百万円、ベトナムが▲4億22百万円だった。
製品別の売上高は片面版が104億89百万円、両面板が82億09百万円、実装関連が17億69百万円、その他が8億69百万円だった。用途別の売上高は自動車関連(ライト、電装品、カーオーディオなど)が69億55百万円、家電製品(LED照明、エアコンなど)が50億74百万円、事務機(複写機、プリンターなど)が28億02百万円、電子部品・電子機器(電源、モーター、制御装置など)が19億04百万円、映像関連(薄型テレビなど)が12億55百万円、アミューズメント(家庭用ゲーム機など)が2億77百万円、その他(音響機器、通信機器など)が30億65百万円だった。幅広い顧客層(国内1000口座、海外300口座)を獲得している。
プリント配線板の生産は国内、および中国、インドネシア、ベトナムに展開している。片面プリント配線板は世界最大の生産量を誇っている。18年5月には中国で両面配線板および多層配線板の生産を委託しているサンティス香港、およびその子会社のサンティス南沙と資本・業務提携した。メキシコ子会社では実装搬送治具を製造している。
ベトナム子会社は両面配線板の新たな生産拠点として21年1月販売開始した。現在は第1生産ラインで自動車向けを中心に生産している。そして23年3月期中に第2生産ラインの稼働を予定している。生産拡大によって24年3月期黒字化を目指す計画だ。なおベトナム子会社には自動車関連電子部品実装のエヌビーシー(岐阜県大垣市、05年から資本業務提携して協力関係)が6.7%出資している。
また21年5月にはメイコー<6787>と資本業務提携した。ともにプリント配線板事業を主力としているが、得意とする製品が異なるため棲み分けができている。中国やベトナムで事業拡大を進めるなど共通点が多く、グローバルに協業することで相互補完が可能な状況にあるとしている。経営資源の相互活用などでシナジー創出を図る方針だ。
■独自の印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカー目指す
中期経営計画では目標値として、最終年度26年3月期売上高300億円、営業利益16億円、営業利益率5.3%、ROE10%、配当性向25%を掲げている。
製品別売上高の計画は片面板が101億円、両面板が127億円、金属基板が26億円、実装関連が32億円、新事業が10億円(超厚銅基板が8億円、プリンタブル基板が2億円)、その他が4億円としている。また地域別の売上構成比の計画は日本が41%、中国が22%、ASEANが26%、北米その他が11%としている。製品別では両面板と金属基板の拡大、地域別ではASEAN(ベトナム)の売上拡大を図る方針だ。
6つの重点戦略(グローバル生産・販売戦略、企業間連携戦略、効率化戦略、技術戦略、財務戦略、人財戦略)を推進し、独自のスクリーン印刷技術を活用してグローバルニッチトップメーカーを目指すとしている。
グローバル生産・販売戦略では最適な供給網の再構築(ベトナム工場第1期フル稼働、両面事業・営業拠点の再編)や片面シェア拡大による利益確保など、企業間連携戦略ではEMSメーカー・商社との連携マーケティングによる製品開発・販路拡大や同業他社との相互補完関係構築など、効率化戦略では自働化・IT化による生産効率向上やDX活用による業務効率化推進など、技術戦略ではプリンタブル関連基板の事業化や0603対応微細基板の技術提案など、財務戦略では自己資本強化や持続的・積極的な株主還元など、人財戦略ではマネジメント人材の育成やESG・SDGsへの取り組みなどを推進する方針だ。
なお22年7月には「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」に登録した。自社の保有する技術を用いて環境への貢献を目指す。
■23年3月期最終赤字予想だが、24年3月期収益拡大期待
23年3月期連結業績予想については、3月17日付で前回予想から売上高を10億円上方修正、営業利益を80百万円下方修正、経常利益を30百万円下方修正、親会社株主帰属当期純利益を9億円下方修正し、売上高が22年3月期比12.5%増の240億円、営業利益が29.7%増の6億20百万円、経常利益が17.0%増の6億円、親会社株主帰属当期純利益が5億40百万円の赤字(22年3月期は2億89百万円の黒字)としている。配当予想については3月17日付で前回予想から3円下方修正し、22年3月期比2円減配の3円(期末一括)とした。
売上高は海外での販売増や円安の影響で前回予想を上回るが、営業・経常利益については原材料・エネルギーコスト上昇の影響で下方修正した。ただし前期比では、増益幅が縮小するものの営業・経常増益予想である。親会社株主帰属当期純利益については、海外子会社の京写香港において、取引先(京写香港の生産協力会社、法的整理などの事実は発生していない)に対する債権取立または不能のおそれが生じたため、特別損失8億37百万円を計上して赤字予想とした。これに伴って配当予想も下方修正した。
なお当該取引先からの仕入製品(主に自動車向けの両面・多層プリント配線板)については、すでにベトナム工場や国内工場への生産移管を完了しているため、業績への影響は一時的としている。24年3月期はベトナム工場の稼働率が上昇し、特別損失一巡も寄与して収益拡大が期待できるだろう。
なお第3四半期累計は売上高が前年同期比14.7%増の181億10百万円、営業利益が2.4%減の4億47百万円、経常利益が14.9%減の4億17百万円、親会社株主帰属四半期純利益が30.9%減の1億84百万円だった。
全体としては増収ながら減益だった。主力のプリント配線板事業では、海外は自動車分野や事務機分野の受注が好調に推移し、前期稼働したベトナム子会社の売上拡大も寄与したが、国内が自動車生産調整や原材料価格・電力料金高騰の影響を受けた。実装関連事業では、産業機器や通信機器向けの受注が回復基調となった。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が59億09百万円で営業利益が1億83百万円、第2四半期は売上高が58億42百万円で営業利益が30百万円、第3四半期は売上高が63億59百万円で営業利益が2億34百万円だった。
■株価は調整一巡
株価は地合い悪化の影響で戻り一服となったが、23年3月期最終赤字・減配予想に対するネガティブ反応は限定的だった。低PBRも評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。4月3日の終値は286円、前期推定配当利回り(会社予想の3円で算出)は約1.0%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS501円72銭で算出)は約0.6倍、そして時価総額は約42億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)