- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マーケットエンタープライズの16年6月期も大幅増収増益予想、ネット型リユース事業の中期成長力を評価
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】マーケットエンタープライズの16年6月期も大幅増収増益予想、ネット型リユース事業の中期成長力を評価
- 2015/8/19 08:38
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
マーケットエンタープライズ<3135>(東マ)(15年6月新規上場)はネット型リユース品買取・販売事業を展開している。15年6月期は大幅増収増益となり、16年6月期も大幅増収増益予想である。株価は8月13日の直近安値3145円から切り返す動きだ。中期成長力を評価して7月の上場来高値5650円を目指す展開だろう。
■インターネットに特化したリユース品買取・販売事業を展開
06年7月設立(事業開始は04年11月)で、15年6月東証マザーズに新規上場した。インターネットに特化してリユース(再利用)品を買取・販売するネット型リユース事業を展開している。
買取総合窓口サイト「高く売れるドットコム」など自社運営26カテゴリーのWEB買取サイトを通じて一般消費者や法人からリユース品を買い取り、全国6拠点(15年6月末時点)のリユースセンターで在庫を一括管理し、複数の主要Eマーケットプレイス(ヤフオク、楽天市場、Amazon、Ebayなど)に出店した自社運営サイト「安く買えるドットコム」で一般消費者や法人向けに販売する。
販売の実店舗を持たずにEC(電子商取引)によってリユース品の売買を行うサービスであり、ITとリアルを融合させて仕入・販売ともにマルチチャネル対応で全国的な仕入・販売網を構築していることが強みだ。なお累計の買取依頼数は14年5月に50万件を突破し、15年3月には月間の買取依頼数が約26千件に達している。
総合窓口サイトである「高く売れるドットコム」をフラッグシップサイトとして、26カテゴリーの買取専門サイトを自社構築・運営している。自社サイトを運営することで顧客ニーズに合ったコンテンツマーケティングを行うことが可能になり、ネットサービスを有する大手企業との効果的なアライアンスを展開することも可能になる。
15年2月にはヤフー<4689>が運営する「Yahoo!買取」で法人向け在庫買取サービスを開始した。15年6月にはコープサービスが運営する「ライフなび くらしのサービス」と提携して、関東信越6生協組合員向けに総合買取サービスの提供を開始した。
またコンタクトセンターにおける事前査定サービス、3つのチャネル(出張買取、宅配買取、店頭買取)による買取サービス、全国6拠点のリユースセンター(東京、横浜、埼玉、名古屋、大阪、福岡)での在庫一括管理という、コンタクトセンターからリユースセンターまで一気通貫のオペレーションシステムを特徴としている。そして独自の単品管理ステムと全国販売網により、高い在庫回転率(14年実績で年間14.2回転)を実現している。
さらに事前査定~仕入~在庫管理~販売のオペレーションに関して、自社開発のITシステムおよびデータベース(複数の買取依頼チャネルや複数の買取手法に対応するマルチチャネル買取システム、査定データベース、商品管理システム、在庫連動システム、受注管理システムなど)によって運営し、効率性の高いオペレーションを実現している。
■中期成長に向けて事業ドメイン拡大を推進
中期成長戦略では収益基盤強化を目指して、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大を推進する方針だ。
水平展開では仕入基盤のさらなる拡充に向けて、全国主要都市への新規リユースセンターの開設を推進する。3年以内に5拠点のリユースセンターを新設する予定で、出張・店頭買取における人口カバー率の向上や、買取コンバージョン率の向上を目指している。
垂直展開では取扱商品のさらなる拡大に向けて、比較サイト運営・専門企業などとのアライアンスによって、高単価・低粗利益率帯の車・バイク・不動産など、低単価・高粗利益率帯の衣類・本など「未取扱商材」や「依頼情報」のマネタイズゾーン拡充を図る。
そして「シェアードアコノミー」を実現する社会的インフラの一翼を担うべく、積極的なIT投資によって新サービスを創造・拡充させるとしている。
■15年6月期に続いて、16年6月期も大幅増収増益予想
8月7日に発表した前期(15年6月期)の非連結業績は、売上高が前々期比35.6%増の39億88百万円で、営業利益が同2.8倍の2億37百万円、経常利益が同2.6倍の2億27百万円、純利益が同19.1%増の1億36百万円だった。配当予想は無配継続とした。
なおIPOに伴う増資で自己資本が増加したため、ROEは同70.5ポイント低下して25.8%となった。自己資本比率は同38.8ポイント上昇して67.8%となった。
商品保証サービスの拡充、大手企業との事業提携、新規拠点開設(14年6月福岡リユースセンター、15年3月埼玉リユースセンター)による仕入エリア拡大、業務プロセスの高品質化・標準化推進などの効果も寄与して、買取・販売とも大幅に伸長した。
利益面では、販売単価は高いが粗利益率の低いブランドバックや時計などの取り扱いを本格的に開始したため、全体の売上総利益率が低下した(前々期比1.2ポイント低下の47.6%)が、増収効果で吸収し、販管費の効率的な使用も寄与して大幅増益だった。なお販管費比率は41.6%で同4.3ポイント低下した。
今期(16年6月期)の非連結業績予想(8月7日公表)は、売上高が前期比31.6%増の52億50百万円、営業利益が同34.6%増の3億20百万円、経常利益が同41.3%増の3億21百万円、純利益が同46.3%増の2億円としている。配当予想については無配継続としている。
買取・販売とも大幅に伸長し、増収効果で大幅増益予想だ。経常利益と純利益については前期の営業外費用で計上した上場関連費用の一巡も寄与する。
全国主要都市への新規拠点開設、買取・販売における新サービスのリリースを計画していることも寄与して、買取依頼数が増加し、コンバージョン率も上昇する見込みだ。買取件数は同30%程度増加、買取案件単価は前期と同水準で、結果として仕入高は同30%程度の増加を見込んでいる。そして売上総利益率および販管費比率は前期と同水準を見込んでいる。
リユース市場とEC(電子商取引)市場はともに拡大基調だ。そして環境省調査によると、12年度のリユース品購入経路の54.0%がインターネット経由(インターネットオークション28.7%、インターネットショッピングサイト25.3%)となり、インターネット経由が過半を占める状況になってきた。
「リユース市場×EC市場」の拡大も追い風であり、事業拠点拡大の水平展開、取扱商品拡大の垂直展開、そして新サービス構築による事業ドメイン拡大も奏功して中期的に収益拡大基調だろう。
■株価は直近安値から切り返し
株価の動き(初値6月18日4005円)を見ると、急伸した7月30日の上場来高値5650円から利益確定売りで反落したが、6月25日の上場来安値3040円を割り込まず、8月13日の直近安値3145円から切り返している。18日は3745円まで上伸した。
8月18日の終値3650円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS78円91銭で算出)は46~47倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS348円23銭で算出)は10.5倍近辺である。中期成長力を考慮すれば割高な水準とは言えないだろう。
6月25日の上場来安値を割り込まずに切り返したことで下値を確認した形だ。そして日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線突破の動きを強めている。目先的な利益確定売りが一巡し、中期成長力を評価して7月高値5650円を目指す展開だろう。