マーケットの雲行きがおかしい。株高か株安か先行きがあやふやになってきた。それもこれも、米国で相次いで発表される経済指標が、市場予想を下回ってリセンション(景気後退)入りを示唆しているのが震源である。ちょっと前までは、「バッドニュースはグッドニュース」のはずだった。物価、雇用などで景気減速を示す経済指標が続けば、そのリスクオフ材料をFRB(米連邦準備制度理事会)の政策金利引き下げの打ち止め、あるいは利下げさえ期待できるディスインフレのリスクオン材料に読み替えてきたのにである。「バッドニュースはバッドニュース」にネガティブに一変しさせてしまったようである。
今年3月9日からの米国のシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻に端を発した金融システム不安ショックも、スイスの銀行大手、クレディ・スイス・グループを含め引受先を確定させ、日米欧の中央銀行が協調して潤沢な流動性を供給して、2009年の金融危機「リーマン・ショック」の再来を抑え込んだと評価され、株価は瞬く間に急落分をカバーした。ところがこれも、同時に打ち出された金融当局の銀行監督の強化で融資審査が厳格化されたことによって、貸し渋り、信用収縮を通じて景気の下押し要因になると危惧される方向に変わった。今週以降に米国の大手銀行を皮切りにスタートする企業決算では、このリセンション入りを裏付ける業績悪化が続出することになったらどうなるかと心配のタネは尽きない。
「売り、買い、休む」のいずれの投資行動が正しいのか悩ましく、神経質にならざるを得ない。しかしである。金融システム不安ショック時にも逆行高した銘柄もあった。例えば、野球の世界一決定戦のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)関連株である。実は、世界のマーケットが、金融システム不安で大揺れに揺れた3月前半相場は、日本中がWBCでの侍ジャパンの快進撃に沸き立った時期にもダブっていた。
3月9日の東京ドームでの予選リーグ1回戦に始まって準々決勝、準決勝と勝ち上がり、3月21日の決勝では、侍ジャパンが、米国を破って14年ぶりの世界チャンピオンに復活した。日本流の「スモール・ベースボール」の戦いぶりが、テレビ観戦、現地観戦を問わずフアンを釘付けにし感動させたが、なかでも絶対エースとして圧巻だったのが、この大会でMVP(最優秀選手)を獲得した大谷翔平選手であった。この大会でも初の投打の二刀流として出場し、準決勝のメキシコ戦では、1点ビハインドの9回裏には自ら2塁打を放って塁上で味方ナインを鼓舞し、これが劇的な逆転劇を招き寄せた。しかもコメントも憎いのである。「野球を楽しめた」と野球少年そのもので頼もしいばかりであった。
この「大谷効果」は、日経平均株価が一時、2万7000円を割り下値不安を強めたなかでも投資家心理をポジティブに変え逆行高銘柄を族生させた。ミズノ<8022>(東証プライム)、コーセー<4922>(東証プライム)などがこの代表で、コーセーは金融システム不安ショックからのリバウンド相場でも年初来高値追いとなった。
だから足元のマーケットの雲行きが、心許なくなればなるほどこの再現を期待したくなるというものである。というのも、マーケットの方は、「バッドニュースはバッドニュース」に変質しているが、絶対エースの活躍はなお現在進行形であるからだ。メジャーリーグに戻った大谷翔平選手は、これまでWBCに出場した選手が、シーズン入り後はWBC疲れで不調なスタートとなったのとは無縁に、好調を持続したままで、すでに投手として今期の第1勝目を上げ、打者としても、きょう10日早朝に3本目のホームランを打ちライブ中継された。「大谷効果」の倍返し、3倍返しを先取りしたくなる好スタートである。
この若い絶対エースは、大谷翔平選手だけに限らない。将棋の藤井聡太六冠も、その一人である。5人目の中学生棋士としてプロ・デビューして29連勝の連勝記録を樹立したのを手始めに、数々の最年少記録を更新し、将棋界の8つあるタイトルのうち、すでに六冠を獲得、前2022年度の獲得賞金は、1億2200万円と将棋界トップに躍り出た。年間勝率は8割を超えトップを走っているのにもかかわらず、将棋の勝ち負けよりも「将棋を極めたい」とする求道者的なストイックな対局姿勢が、フアンの心を鷲掴みにしている側面もあるようである。しかもこの大活躍は、現在も進行中で、七冠目のタイトルの名人位に挑戦中で、名人戦の第一局で渡辺明名人を破り、このまま名人戦に勝利すると、谷川浩司十七世名人が保有している名人位獲得の最年少記録を更新することになる。
ということで今週の当特集では、若い絶対エースのより一層の奮闘を願い、楽しみながら、大谷翔平選手の「「野球を楽しめた」とのコメント通りに株式投資の原点に立ち戻る「楽しい株式投資」を提案することとした。関連株への投資二刀流のチャレンジであり、これなら不安定相場下でも自分流を貫けそうだ。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)