And Doホールディングスは上値試す、23年6月期大幅増収増益予想

And Doホールディングス<3457>(東証プライム)は住まいのワンストップサービスを展開し、不動産×金融サービスの深化による高収益化を目指す不動産テック企業である。ストック収益を積み上げるフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融事業、および不動産売買事業を成長強化事業と位置付けて収益の柱としている。23年6月期は大幅増収増益予想としている。成長強化事業のハウス・リースバック事業が牽引し、積極的なプロモーションによる販管費の増加などを吸収する見込みだ。通期会社予想に上振れ余地があり、成長強化事業が牽引して収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して水準を切り上げている。高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。なお5月12日に23年6月期第3四半期決算発表を予定している。

■住まいのワンストップサービスを展開する不動産テック企業

FCチェーンネットワーク構築による不動産情報のオープン化と、時代に即した不動産ソリューションサービスを提供する不動産サービスメーカーとして、住まいのワンストップサービスを展開している。さらにFinTechを活用して「不動産×金融」サービスの進化による高収益化を目指す不動産テック(不動産×IT)企業である。

不動産流通事業で創業し、リフォーム事業、不動産売買事業、不動産売買仲介「HOUSEDO」FC加盟店に各種サービスを提供するフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、不動産担保ローン事業、金融機関と提携したリバースモーゲージ保証事業へと展開し、業容を拡大している。そして22年1月1日付で事業持株会社に移行(ハウス・リースバック事業は移行後も同社が運営)し、商号をAnd Doホールディングスに変更した。

FCチェーンネットワークや高齢化社会に対応した不動産ソリューションなど顧客接点・地域密着ネットワークを構築し、売買仲介を起点として住まい関連サービスにつなげる事業シナジーを強みとしている。さらに不動産事業を通じて世の中を安心、便利なサービスを提供する「不動産コンビニ」構想も掲げている。

なお22年9月には、子会社のハウスドゥ住宅販売が経済産業省の「IT導入補助金2022」でIT導入支援業者として採択され、不動産仲介・買取WEBシステム「DO NETWORK」が補助金対象ツールとして登録された。IT導入支援業者としては今回で5度目の採択となる。また22年10月には、不動産賃貸仲介WEBシステム「RENT Doシステム」が補助金対象ツールとして登録された。

22年12月には滋賀銀行とサステナブル評価融資契約を締結・実行した。さらに23年3月には百十四銀行とサステナビリティ・リンク・ローン融資契約を締結・実行した。

■ストック収益型事業が収益柱

ロイヤリティー収入、賃貸収入、金利収入など、ストック収益を積み上げるフランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融事業、および不動産売買事業を成長強化事業と位置付けて収益の柱としている。ハウス・リースバック事業では取得した収益不動産物件の売却も進める。

22年6月期のセグメント別営業利益構成比(全社費用等調整前)は、成長強化事業が86%(フランチャイズ事業が34%、ハウス・リースバック事業が25%、金融事業が2%、不動産売買事業が25%)、不動産流通事業が11%、リフォーム事業が3%、その他が▲0%だった。22年6月期第3四半期からセグメント区分を変更し、小山建設グループの事業を不動産売買事業、不動産流通事業、ハウス・リースバック事業に振り分けた。不動産売買事業は大型物件などによって構成比が変動しやすい。

フランチャイズ事業の加盟契約数は22年6月期末時点で21年6月期末比19店舗減少して683店舗となった。20年9月に全国47都道府県すべてに出店契約を達成し、21年1月からはブランドロゴと店舗デザインを一新している。また賃貸不動産仲介事業の新ブランド「レントドゥ!」も展開している。中期的には25年に国内1000店舗、アジア5万店舗を目標としている。

なお23年3月には、持分法適用会社(現地合弁会社)であるタイのH-DO社がタイのAAA社とFC契約を締結し、タイでのFC1号店をオープンした。

ハウス・リースバック事業では、22年6月期期末の保有物件数が21年6月期末比306件増加して645件、保有物件総額(簿価ベース)が43億20百万円増加して89億14百万円となった。契約件数は187件増加の1090件、物件取得数は209件増加の1010件だった。

金融事業では、22年6月期のリバースモーゲージ保証残高が34億62百万円増加の88億05百万円、保証件数が267件増加の829件、不動産担保融資残高が49億22百万円減少の48億22百万円となった。リバースモーゲージの保証残高は22年9月末時点で100億円を突破、保証件数は23年1月末に累計1000件を突破した。リバースモーゲージ保証事業は地域金融機関との提携を推進し、提携金融機関は22年10月3日時点で40金融機関となった。さらに、リバースモーゲージのさらなる普及拡大に向けて銀行代理業許可を取得している。楽天銀行の銀行代理業者として「楽天銀行リバースモーゲージ」の申込媒介を行う。なお不動産担保融資は戦略的に縮小させている。

■M&A・アライアンスも活用

M&A・アライアンスでは、19年8月に埼玉県草加市を中心に不動産売買・仲介を展開する小山建設グループを子会社化、20年7月に子会社の草加松原住建の商号をハウスドゥ・ジャパンに変更した。21年7月には加盟店を対象とする業務支援サービスの利用に関して、不動産サービス比較サイト「リビングマッチ」運営のリビン・テクノロジーズ<4445>と業務提携した。21年9月には識学<7049>と業務提携した。識学の「成長する組織つくり」を加盟店が導入することで加盟店の組織力および業績拡大につなげる。

22年5月には、ドキュサイン・ジャパンと不動産売買取引における電子契約システムで業務提携した。ハウスドゥオリジナル基幹システム「DO NETWORK」と、ドキュサイン・ジャパンの電子署名サービス「DocuSign eSignature」との連携で電子契約が可能になる。

22年12月には、総合生活トラブル解決サービスを展開するジャパンベストレスキューシステム(JBR)<2453>と提携した。ハウスドゥで契約した顧客に対して会員制生活トラブル解決サービス「ハウスドゥ持ち家の長期サポート」を開始する。

23年1月には子会社のハウスドゥ住宅販売が、手付金が不要となる住宅購入支援サービス「ゼロテ」を開発・提供するGOGENと業務提携した。住宅購入顧客に対して現金不要の新しい住宅取得の仕組みを提供する。23年3月には子会社のハウスドゥ住宅販売が、完全会員制の家探しサービスHousii(ハウシー)を展開するSpeeeと業務提携した。加盟店向け支援サービスの一層の充実を図る。

■中期経営計画(23年6月期~25年6月期)

中期経営計画(23年6月期~25年6月期)では目標数値に、25年6月期の売上高518億19百万円、営業利益41億79百万円、経常利益40億円、親会社株主帰属当期純利益26億40百万円、経常利益率7.7%を掲げている。配当性向は30%以上を基本水準とする。

事業セグメント別の25年6月期の計画は、フランチャイズ事業の売上高41.8億円で営業利益29.0億円、ハウス・リースバック事業の売上高214.2億円で営業利益28.3億円、金融事業の売上高14.1億円で営業利益6.0億円、不動産売買事業の売上高207.6億円で営業利益18.0億円、不動産流通事業の売上高20.4億円で営業利益6.4億円、リフォーム事業の売上高27.0億円で営業利益2.3億円としている。

成長強化事業の主要指標の計画(25年6月期)は、フランチャイズ累計加盟店舗数が865店舗、ハウス・リースバック事業の年間仕入契約数が1440件、リバースモーゲージ保証残高が506億円、リバースモーゲージ提携金融機関が100行、不動産売買のたな卸資産残高が140億円としている。

成長戦略として、成長強化事業(フランチャイズ事業、ハウス・リースバック事業、金融・リバースモーゲージ事業、不動産売買事業)のさらなる拡大、不動産×金融サービスの深化、高収益体質化の促進を推進する。なお20年8月にはDX推進本部を設立している。

なお22年9月には、22年6月30日時点においてプライム市場の上場維持基準のうち流通株式時価総額が基準を満たしていない状態となったため、上場維持基準適合に向けた計画書を作成・開示した。中期経営計画の達成、IR・PR活動の充実、コーポレート・ガバナンスの強化など、各種取組を推進して25年6月期までに基準値の充足を目指すとしている。

■23年6月期大幅増収増益予想、さらに上振れ余地

23年6月期の連結業績予想は、売上高が22年6月期比12.5%増の465億82百万円、営業利益が20.2%増の34億52百万円、経常利益が12.0%増の33億円、親会社株主帰属当期純利益が11.4%増の21億78百万円としている。配当予想は4円増配の40円(期末一括)としている。連続増配予想である。なお株主優待制度を22年6月期末対象で廃止し、23年6月期以降は優待制度に要していた費用相当分を加味して配当で還元する。

セグメント別営業利益(調整前)計画はフランチャイズ事業が10.3%増の25億38百万円、ハウス・リースバック事業が38.9%増の23億87百万円、金融事業が34.2%増の1億85百万円、不動産売買事業が5.4%減の16億円、不動産流通事業が14.7%減の6億23百万円、リフォーム事業が17.5増の2億30百万円、調整額が▲41億11百万円としている。

第2四半期累計は、売上高が前年同期比14.1%増の254億36百万円、営業利益が2.3%減の17億49百万円、経常利益が6.0%増の18億53百万円、親会社株主帰属四半期純利益が3.1%減の11億32百万円だった。

積極的なプロモーションなどで販管費が増加したため小幅営業減益だが、成長強化事業のハウス・リースバック事業が牽引し、期初計画に対して売上高が25億32百万円、営業利益が1億53百万円、経常利益が3億53百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1億42百万円、それぞれ上回って着地した。経常利益は第2四半期累計として過去最高だった。

フランチャイズ事業は売上高(調整前)が7.0%減の16億20百万円、セグメント利益(調整前営業利益)が11.7%減の10億44百万円だった。店舗数減少の影響で減収減益だった。なお累計加盟店数(レントドゥ含む)は682店舗で前年同期比4店舗減少したが、注力エリア(関東、近畿都市部)の加盟店舗数は順調に増加している。

ハウス・リースバック事業は売上高が60.0%増の104億13百万円、利益が64.5%増の13億50百万円だった。充実した在庫を活かしてHLBファンドへの譲渡を実施(売上高43.7億円)した。契約件数は161件増加の616件、物件取得数は125件増加の561件、期末保有物件数は210件増加の658件、保有物件総額(簿価ベース)は37億05百万円増加の94億86百万円となった。

金融事業は売上高が33.6%減の2億96百万円で、利益が4.7%減の87百万円だった。不動産担保融資を戦略的に縮小(融資実行件数が14件減少の48件、融資残高が27億65百万円減少の30億69百万円)しているため減収減益だが、リバースモーゲージ保証は伸長(新規保証件数が17件増加の174件、保証残高が37億円増加の108億79百万円)している。リバースモーゲージ保証の提携金融機関数は40行を突破した。

不動産売買事業は売上高が1.5%減の111億86百万円、利益が1.1%増の11億96百万円だった。取引件数は10件減少の293件だった。積極的な仕入によって中期経営計画を大きく上回る在庫水準を確保している。

不動産流通(仲介)事業は仲介件数の減少で売上高が20.2%減の9億66百万円、利益が8.8%減の3億03百万円だった。仲介件数は412件減少の1088件だった。減収減益だが、成長強化事業への人員シフトや店舗統合によって利益率改善が進展し、繁忙期となる第3四半期を前に概ね順調だったとしている。

リフォーム事業は売上高が0.1%減の13億51百万円、利益が42.0%増の1億32百万円だった。不動産流通(仲介)事業の店舗統合の影響で中古+リフォームの受注が減少したが、販管費抑制効果などで利益率が向上した。リフォーム契約件数は122件減少の841件、完工件数は12件増加の959件だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が96億12百万円、営業利益が3億43百万円、経常利益が2億90百万円、第2四半期は売上高が158億24百万円、営業利益が14億06百万円、経常利益が15億63百万円だった。なお四半期業績はハウス・リースバック事業におけるファンドへの譲渡、不動産売買事業における大型物件によって変動する傾向が強い。

通期予想は据え置いている。第2四半期累計の進捗率は売上高54.6%、営業利益50.7%、経常利益56.2%、親会社株主帰属当期純利益52.0%だった。ハウス・リースバック事業におけるファンドへの譲渡、不動産売買事業における大型物件によって変動する傾向があることを考慮しても順調な水準だろう。第2四半期累計が計画を上回ったことを勘案すれば通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。

なお23年3月には、ハウス・リースバック資産の信託受託権をHLB13号ファンドに譲渡(対象不動産件数178件、譲渡価格29億94百万円、帳簿価格23億40百万円、譲渡益6億54百万円)した。通期業績予想に織り込み済みである。成長強化事業が牽引して収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

株価は地合い悪化の影響を受ける場面があったが、調整一巡して水準を切り上げている。週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いて基調転換を確認した形だ。高配当利回りなど指標面の割安感も評価材料であり、上値を試す展開を期待したい。4月12日の終値は944円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS111円33銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の40円で算出)は約4.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS706円07銭で算出)は約1.3倍、そして時価総額は約185億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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