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クリーク・アンド・リバー社は上値試す、24年2月期増収増益・連続大幅増配予想で収益拡大基調
- 2023/4/17 09:12
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
クリーク・アンド・リバー社<4763>(東証プライム)は、クリエイティブ分野を中心にプロフェッショナル・エージェンシー事業、プロデュース事業、ライツマネジメント事業を展開し、プロフェッショナル50分野構想を掲げて事業領域拡大戦略を加速している。23年2月期は日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引し、成長に向けた戦略投資を吸収して過去最高業績だった。そして24年2月期も増収増益予想としている。なお23年2月期実績が前中期経営計画の目標値を超過達成したため1年前倒しで新たな中期経営計画を策定し、前回計画に比べて24年2月期連結業績目標値を引き上げるとともに、配当性向目標を従来の20%水準から30%水準に引き上げて24年2月期も連続大幅増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏だ。好業績や配当性向引き上げを評価して上値を試す展開を期待したい。
■クリエイティブ分野中心にエージェンシー事業やプロデュース事業を展開
クリエイティブ分野(映画・TV番組・ゲーム・Web・広告・出版等の制作)で活躍するクリエイターを対象としたプロフェッショナル・エージェンシー(派遣・紹介)事業、プロデュース(制作請負・アウトソーシング)事業、およびライツマネジメント(知的財産の流通)事業を展開している。
プロフェッショナル8領域(クリエイティブ、メディカル・ヘルスケア、コンストラクション、クオリティ・オブ・ライフ、ライフサイエンス、コンピュータサイエンス、エンジニアリング、経営支援)の18分野に展開し、さらにプロフェッショナル50分野構想を掲げ、グループ資産を活用した商品・サービス・プロジェクトの開発や事業領域の拡大を推進している。23年2月期末時点でプロフェッショナルクリエイター36万8000人、クライアント4万8000社のネットワークを構築していることが強みだ。
新規エージェンシー事業としては建築、ファッション、シェフ、プロフェッサー、ドローン、舞台芸術、リサーチャー(研究開発支援者)、CXO(CEO、CFO、CMOなど企業における業務や機能の最高責任者の総称)などを展開している。
22年4月に農業分野における障がい者雇用促進および農業を基軸とした地域雇用促進を目的とする子会社コネクトアラウンドを設立、グループ内における障がい者雇用促進を目的とする子会社One Leaf Cloverを設立、22年5月に日本アニメ・コミックに特化したNFT(非代替性トークン)プラットフォーム「ANIFTY」を運営するANIFTYを子会社化、22年7月にシェフなど料理人の独立・開業を支援する子会社シェフズ バリューを設立、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」を開発する子会社Nextrekを設立した。
23年1月にはテレビ番組企画・制作や人材サービスなどを展開するシオングループ3社を子会社化し、グループは23年2月期末時点で28社となった。23年3月には経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人2023(大規模法人部門)」に認定された。
■事業シナジー強化
事業シナジーを見越した資本参加としては、バイオベンチャーのCO2資源化研究所、アグリベンチャーのプラントライフシステムズ、不動産仲介プラットフォームのエージェント・グロース(事業上の通称はケラー・ウィリアムズ・ジャパン)、弁護士保険のミカタ少額短期保険、NFT関連のブロックチェーンエンターテインメント事業を展開するシンガポールDEA社、子ども向けオンライン世界旅行のMimmyなどに出資している。
21年8月にはEPSホールディングス<4282>、ワールドホールディングス<2429>、SBSホールディングス<2384>と共同で、エルダー人材の働き方の多様性を企画・実現する新会社HATARAKUエルダー(EPSホールディングスの連結子会社)を設立した。
22年9月にはシンガポールDEA社と共同で、DEA社のGameFiiプラットフォーム「PlayMining」での23年春リリースに向けて、オリジナルのNFTiiゲーム「HERO SPIRAL(ヒーロースパイラル)」の共同開発開始を発表した。デジタル上で新たな体験として実現することをコンセプトとした「次世代拠点シミュレーションゲーム×NFT軍団バトルゲーム」である。またWeb3事業・NFT事業パートナーとしての連携強化を図るためシンガポールDEA社に追加出資した。
22年10月には投資事業を行う子会社としてC&Rインキュベーションラボを設立した。既存事業とのシナジーや新規事業立ち上げのシーズ獲得など、グループとしてのM&A・事業承継、事業再生への取り組みを本格化させる方針だ。そして23年2月期末時点で、劇団運営および公演のYTJ、食品原料のWeb売買プラットフォームを展開するICS-netに出資している。
■日本クリエイティブ分野が拡大基調
23年2月期の事業分野別の構成比は売上高がプロデュース44%、エージェンシー派遣39%、エージェンシー紹介13%、ライツマネジメント・他4%、売上総利益がプロデュース36%、エージェンシー派遣22%、エージェンシー紹介35%、ライツマネジメント・他7%だった。
セグメント別の構成比は、売上高が日本クリエイティブ分野69%、韓国クリエイティブ分野8%、医療分野12%、会計・法曹分野5%、その他(IT分野のエージェンシー事業、新規事業など)6%、営業利益(調整前)が日本クリエイティブ分野69%、韓国クリエイティブ分野▲0%、医療分野34%、会計・法曹分野4%、その他▲7%だった。
日本クリエイティブ分野の領域別構成比は売上高がゲーム38%、Web28%、映像(テレビ・映画)27%、電子書籍・YouTube等3%、新規エージェンシー4%、その他1%、営業利益がゲーム54%、Web30%、映像16%、電子書籍・YouTube等16%、新規エージェンシー▲2%、他▲14%だった。
韓国クリエイティブ分野は、TVマーケット関連事業を新設会社に承継してCREEK&RIVER ENTERTAINMENTを18年2月期第2四半期から持分法適用関連会社としたが、20年1月9日付で株式を追加取得し、改めて連結子会社化した。
収益面では、医療分野の売上と利益が季節要因で第1四半期と第2四半期に偏重するため、全体としても上期の構成比が高い特性がある。主力の日本クリエイティブ分野は売上・営業利益とも拡大基調である。新規事業分野は人件費などの費用が先行するが順次収益化を見込んでいる。
■プロフェッショナル50分野構想
中長期の成長戦略として「プロフェッショナル50分野構想」を掲げ、23年4月策定の新中期経営計画(23年2月期実績が前中期経営計画の目標値を超過達成したため1年前倒しで新たな中期経営計画を策定)では、前回計画に比べて24年2月期連結業績の目標値を引き上げるとともに、最終年度26年2月期の目標値には売上高605億円、営業利益56.5億円、営業利益率9.3%を掲げている。株主還元については、配当性向目標を従来の20%水準から30%水準に引き上げた。
基本戦略としては、プロフェッショナル分野のさらなる拡大(プロフェッショナル50分野構想)、新規サービスの創出(プロフェッショナルの能力を活かす新たな価値の創造)、経営人材の創出、コーポレートガバナンスの強化を推進する。M&A・アライアンスも積極活用して事業領域拡大戦略を加速する方針だ。
グループ資産を活かした商品・サービス・プロジェクトとしては、漫画家発掘・デジタル配信事業のプラットフォーム「漫画LABO」、クリニックの経営支援、メタバース関連のVR建築展示場「XR EXPO」、独自のVR映像配信技術を活用した低遅延VRリアルタイム配信システム・VR遠隔医療教育システム、AR胸腔ドレナージ(順天堂大学と医療ARを共同研究・開発中)、AI需要予測「Forecasting Experience」、事業承継・M&A事業、アパレル分野のDXを支援する「sture(ストゥーラ)」、漫画に音楽や音声を融合した動画「モーションコミック」(プラットフォーム開発中)などがある。
21年12月には国内最大のクリエイティブ(ゲーム・映画・TV・動画・XR・Web・漫画・小説・建築)開発スタジオとして「C&R Creative Studios」を始動した。22年9月には「C&R Creative Studios」が、日本マーケティングリサーチ機構(JURO)が実施した市場調査において「所属クリエイター数」および「制作案件実績数」部門NO.1となり、日本最大のクリエイティブスタジオの認証を受けた。
そして23年3月には、日本初のクリエイター専用の仕事・交流特化型メタバース「C&R Creative Studios Metaverse」β1版を一般公開した。世界中のクリエイターが客船「C&R Creative Studios号」に乗船して交流とアイテムの融合を図ることで、世界を革新するコンテンツやサービスを生み出すことをコンセプトとしている。今後の予定としては、23年夏までに展示エリア、交流エリア、セミナールームなどを追加したβ版に発展させ、さらに機能を充実させて24年春ごろの本格稼働を目指す計画としている。
22年5月には「2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)とともに、地域の未来社会を創造する首長連合」(万博首長連合)と、地域の産業や経済の発展を目指す支援包括連携協定を締結した。
22年11月には、メタバース空間での住宅展示場プラットフォーム「超建築メタバース」の本格提供を開始した。既に今秋のメタバース関連展示会において、イベント用として企業で活用され始め、ハウスメーカー、デベロッパー、工務店などで導入提案が複数進展している。
22年12月にはYouTube上で展開するマルチチャンネルネットワーク(MCN)のThe Online Creators(OC)が、TV番組制作会社4社と共同で企業の重要目標達成指標(KGI)の実現を図る動画制作サービスOCPX(The Oline Creators Production Transformation)を開始した。
23年3月には、オリジナル音楽付きの動くマンガ映像を無料で配信するモーションコミックアプリ「モブコミ」をリリースした。第1弾として12作品を公開した。さらにアグリテックを活用した新サービス(23年2月に川崎市に6次化農業・実習施設開設、24年7月に福島県大熊町にスマート農業施設開設予定など)や、ChatGPT活用製品の開発なども推進している。なお23年4月には新卒社員299名が入社(22年は160名)した。
■24年2月期増収増益・連続大幅増配予想で収益拡大基調
23年2月期の連結業績(収益認識会計基準適用で売上高に影響、営業利益以下への影響は軽微)は、売上高が22年2月期比5.6%増の441億21百万円、営業利益が16.0%増の39億56百万円、経常利益が17.0%増の40億02百万円、親会社株主帰属当期純利益が人材確保等促進税制適用も寄与して30.4%増の28億99百万円だった。日本クリエイティブ分野や医療分野の好調が牽引し、戦略投資を吸収して過去最高業績だった。
なお収益認識会計基準適用により、日本クリエイティブ分野の電子書籍取次事業およびライセンス販売代理人事業で売上高の総額表示を純額表示に変更、請負事業で完成基準から進行基準に変更している。この影響額として、従来方法に比べて売上高が19億19百万円減少、売上原価が20億51百万円減少、営業利益、経常利益、税金等調整前当期純利益がそれぞれ1億31百万円増加している。旧基準による売上高は10.1%増の460億40百万円だった。営業利益以下への影響は軽微だった。
日本クリエイティブ分野は、売上高が3.1%増の303億59百万円(旧基準では9.6%増収)で営業利益(調整前)が10.9%増の27億49百万円だった。ゲーム・WEB関連のプロデュース事業が好調に推移し、新規事業投資(メタバース関連等)やDX投資を吸収した。
韓国クリエイティブ分野は、売上高が0.3%減の34億58百万円で営業利益が16百万円の損失(22年2月期は0百万円の利益)だった。TV局への派遣稼働数が減少したが、収益回復に向けて体制再構築を進めている。
医療分野は売上高が18.6%増の52億26百万円で営業利益が54.1%増の13億39百万円だった。医師マッチングシステム「民間医局ポータル」による成約件数増加も寄与して医師紹介やイベント「レジナビFair」が好調に推移し、新規事業(クリニック経営支援)投資を吸収した。
会計・法曹分野は売上高が9.4%増の23億06百万円で営業利益が34.4%増の1億59百万円だった。紹介事業や事業承継サービスが伸長した。
その他事業(新規事業合計16社)は、売上高が16.8%増の27億69百万円で営業利益が2億75百万円の損失(同32百万円の損失)だった。新規設立・グループ化子会社が6社と投資段階の事業が多いため全体として営業損失が拡大した。売上面は16社のうち5社が増収(5億60百万円増収)で、5社が減収(1億80百万円減収、うち1社は連結除外)だった。営業利益は16社のうち4社が増益で、IT子会社は下期に黒字化した。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高113億71百万円で営業利益16億87百万円、第2四半期は売上高109億63百万円で営業利益8億24百万円、第3四半期は売上高108億90百万円で営業利益8億09百万円、第4四半期は売上高108億97百万円で営業利益6億35百万円だった。医療分野の収益は上期偏重(特に第1四半期偏重)という季節特性がある。
成長に向けた戦略投資としては、日本クリエイティブ分野におけるC&Rクリエイティブスタジオのメタバース化、生産性向上に向けたDX化、新卒採用・研修の強化(22年4月入社実績160名に対して、23年4月入社299名)、および子会社新規設立・グループ化(6社)などを推進した。なお23年1月にテレビ番組企画・制作のシオングループを子会社化した。
24年2月期の連結業績予想は、売上高が23年2月期比13.3%増の500億円、営業利益が13.7%増の45億円、経常利益が12.4%増の45億円、親会社株主帰属当期純利益が3.5%増の30億円としている。日本クリエイティブ分野や医療分野を中心に各事業分野が好調に推移し、成長に向けた新規事業投資を吸収して増収増益予想としている。
日本クリエイティブ分野は売上高が18%増の358億円で営業利益(調整前)が13%増の31億円、韓国クリエイティブ分野は売上高が横ばいの34億60百万円で営業利益が0百万円の利益(23年2月期は16百万円の損失)、医療分野は売上高が8%増の56億40百万円で営業利益が5%増の14億円、会計・法曹分野は売上高が11%増の25億60百万円で営業利益が19%増の1億90百万円、その他は売上高が34%増の41億円で営業利益が50百万円の損失(同2億75百万円の損失)の計画としている。
新中期経営計画では、最終年度26年2月期の計画を売上高605億円、営業利益56.5億円、営業利益率9.3%としている。売上高・営業利益の着実な成長とともに、利益率の向上を目指す方針だ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
なお23年2月期の配当は4月6日付で期末4円上方修正して、22年2月期比7円増配の27円(期末一括)とした。配当性向は20.7%となる。さらに新中期経営計画では、24年2月期より配当性向を従来の20%水準から30%水準に引き上げることとし、24年2月期の配当予想は23年2月期比14円増配の41円(期末一括)とした。連続大幅増配で予想配当性向は30.4%となる。
■株価は上値試す
株価は戻り高値圏だ。好業績や配当性向引き上げを評価して上値を試す展開を期待したい。4月14日の終値は2300円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS135円04銭で算出)は約17倍、今期予想配当利回り(会社予想の41円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS637円32銭で算出)は約3.6倍、そして時価総額は約529億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)