朝日ラバーは戻り試す、24年3月期収益回復期待

朝日ラバー<5162>(東証スタンダード)は自動車内装LED照明光源カラーキャップを主力として、医療・ライフサイエンスや通信分野の事業拡大も推進している。さらに2030年を見据えた長期ビジョンではSDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。23年3月期は自動車生産低迷やエネルギーコスト上昇の影響で減益予想としている。今後は価格転嫁交渉やエネルギーコスト削減を進める方針としている。積極的な事業展開で24年3月期の収益回復を期待したい。株価は地合い悪化も影響して上げ一服の形だが、高配当利回りや低PBRなど指標面の割安感も評価して戻りを試す展開を期待したい。なお5月11日に23年3月期決算発表を予定している。

■自動車内装LED照明の光源カラーキャップが主力

シリコーンゴムや分子接着技術をコア技術として、自動車内装照明関連、卓球ラケット用ラバー、RFIDタグ用ゴム製品などの工業用ゴム事業、およびディスポーザブル用ゴム製品などの医療・衛生用ゴム事業を展開している。車載用LED照明の光源カラーキャップASA COLOR LEDなどを主力としている。

22年3月期のセグメント別構成比は、売上高が工業用ゴム事業83%、医療・衛生用ゴム事業17%、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が工業用ゴム事業84%、医療・衛生用ゴム事業16%だった。

主要製品の売上高は、ASA COLOR LEDが21年3月期比5.6%増の28億64百万円、ディスポーザブル用ゴム製品が3.7%増の11億80百万円、卓球ラケット用ラバーが36.2%増の4億21百万円、RFIDタグ用ゴム製品が34.5%減の3億12百万円だった。

■重点分野は光学、医療・ライフサイエンス、機能、通信

2030年を見据えた長期ビジョンを「AR-2030VISION」として、SDGs・ESG経営を意識して経営基盤強化を目指している。

中期事業分野を、光学事業(ASA COLOR LEDなど)、医療・ライフサイエンス事業(薬液混注用ゴム栓、プレフィルドシリンジ用ガスケットなど)、機能事業(車載スイッチ用ラバー、卓球ラケット用ラバーなど)、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品、ビーコンなど)として、それぞれの製品群を成長させるコア技術や工場の役割を整理し、これまで整えてきた生産環境を最大限に生かす取り組みを推進する。

22年3月期の中期事業分野別売上高は、光学事業が21年3月期比7.4%増の31億03百万円、医療・ライフサイエンス事業が2.1%増の12億32百万円、機能事業が22.5%増の21億55百万円、通信事業が15.7%減の5億32百万円だった。

最初のステージとなる第13次三カ年中期経営計画では、数値目標に23年3月期売上高80~90億円、営業利益率8%以上を掲げ、設備投資額は約10億円としている。

光学事業(23年3月期売上高計画約40億円)では、自動車の内装照明市場から外装照明、アンビエント照明に向けた技術開発を推進する。医療・ライフサイエンス事業(約15億円)では、診断・治療分野、理化学機器分野、介護・予防分野に向けて制御技術と感性技術を磨く。機能事業(約21億円)では、ビークル分野、エネルギー分野、環境発電分野、スポーツ分野において制御技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。通信事業(約12億円)では、自動認識分野、通信機器分野、センシング分野において、センシング技術、触覚・熱・振動・光関連技術、感性技術を磨く。

技術開発では、簡易睡眠ポリグラフ検査用着衣型ウェアラブルシステム、風車用プラズマ気流制御用電極、視認性に優れ疲労低減特性のある自動車内装照明用LED、超親水性シリコーンゴム、ウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムなどの開発を推進している。

20年1月には、切り紙構造とゴムの複合により低応力で伸長し、耐久性に優れた新しい伸縮配線の開発を発表した。ゴムの復元力と立体的な構造によって生体センシング分野での活用が見込まれ、早稲田大学と北里大学の共同研究で発表されたウェアラブル筋電計測デバイスの一部に採用された。20年10月にはレンズの光学設計受託ビジネス開始を発表した。

20年11月には独自の配合技術と表面改質およびマイクロ加工技術を活かして、シリコーンゴムに親水性に優れた処理を施す技術の開発を発表した。またウイルス不活性化のための深紫外線LEDシステムの研究開発および実証実験が、さいたま市令和2年度イノベーション技術創出支援補助金に採択された。

また20年11月には、白河工場が自動車産業の国際的な品質マネジメントシステム規格であるIATF16949の認証を取得した。さらに22年7月には、白河第2工場で医療機器に関する国際的な品質マネジメントシステム規格であるISO13485の認証を取得した。品質を高めて事業拡大を加速させる方針だ。

23年3月にはフェローテックマテリアルテクノロジーズとの相互製品販売特約店契約締結(23年2月)を発表した。やわらかいサーモモジュール「F-TEM」を共同開発した両社の協業により、多様な分野の製品開発において新たな可能性を提案する方針としている。

■SDGsへの取り組みを強化

21年8月には「サステナビリティビジョン2030」を策定した。SDGsへの取り組みを強化し、持続可能な社会の実現に貢献する。

21年12月には、福島県にある生産4拠点の購入電力をCO2フリー電力に転換した。年間約3000tの温室効果ガス排出削減を見込んでいる。また、みずほ銀行のホームページに、SDGs推進サポートローン実行事例として、同社の取り組みが紹介された。

23年3月には未来を拓くパートナーシップ構築推進会議の趣旨に賛同して「パートナーシップ構築宣言」を宣言した。

■23年3月期減益予想だが24年3月期収益回復期待

23年3月期連結業績予想(2月10日付で売上高、利益とも下方修正)は、売上高が22年3月期比1.5%増の71億27百万円、営業利益が36.5%減の1億85百万円、経常利益が39.3%減の1億90百万円、親会社株主帰属当期純利益が38.3%減の1億47百万円としている。配当予想は22年3月期と同額の20円(期末一括)としている。

前回予想に対して、売上高を3億27百万円、営業利益を70百万円、経常利益を61百万円、親会社株主帰属当期純利益を40百万円、それぞれ下方修正した。医療用ゴム製品が好調に推移するが、自動車用ASA COLOR LEDが第4四半期も自動車生産低迷の影響を受ける見込みだ。

修正後のセグメント売上高の計画は、工業用ゴム事業が2.1%減の57億10百万円(前回予想の61億80百万円から4億70百万円下方修正)で、医療・衛生用ゴム事業が18.8%増の14億17百万円(同12億74百万円から1億43百万円上方修正)としている。また中期事業分野別には光学事業が17.0%減の25億75百万円、医療・ライフサイエンス事業が17.8%増の14億51百万円、機能事業が14.0%増の24億57百万円、通信事業が21.1%増の6億44百万円としている。

第3四半期累計は、売上高が前年同期比3.6%増の54億70百万円、営業利益が18.1%減の2億12百万円、経常利益が17.2%減の2億18百万円、親会社株主帰属四半期純利益が15.2%減の1億71百万円だった。

医療用ゴム製品や卓球ラケット用ラバーが好調だったが、主力の自動車向けゴム製品が部材調達難に伴う自動車生産低迷の影響を受け、エネルギーコストの上昇や、営業販売力や技術サービス力の向上に向けた人員強化に伴う販管費の増加なども影響して減益だった。売上総利益は5.5%増加し、売上総利益率は25.0%で0.5ポイント上昇した。原価改善効果などが寄与した。販管費は11.4%増加し、販管費比率は21.1%で1.5ポイント上昇した。

工業用ゴム事業は売上高が0.3%増の44億08百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が19.5%減の3億57百万円だった。売上面では卓球ラケット用ラバーが好調に推移し、RFIDタグ用ゴム製品も受注が回復傾向となったが、主力のASA COLOR LEDなどの自動車向けゴム製品が自動車生産低迷の影響を受けたため、全体として小幅増収にとどまった。利益面はエネルギーコストの上昇や販管費の増加などで減益だった。

医療・衛生用ゴム事業は売上高が20.2%増の10億62百万円、セグメント利益が61.6%増の1億04百万円だった。通常の医療活動が回復傾向となったため在庫調整が終息し、ディスポーザブル用ゴム製品(プレフィルドシリンジガスケット製品や採血用・薬液混注用ゴム栓など)の売上が増加した。

なお中期事業分野別の売上高は、光学事業(ASA COLOR LEDなど)が13.6%減の20億52百万円、医療・ライフサイエンス事業(ディスポーザブル用ゴム製品など)が21.9%増の11億円、機能事業(自動車スイッチ用ラバーや卓球ラケット用ラバーなど)が11.6%増の17億98百万円、通信事業(RFIDタグ用ゴム製品など)が33.6%増の5億18百万円だった。

国内・海外別の売上高は国内が2.8%増の41億15百万円、海外が6.2%増の13億55百万円(アジアが6.7%増の12億58百万円、北米が2.6%増の88百万円、ヨーロッパが15.3%減の8百万円)だった。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が17億54百万円で営業利益が70百万円、第2四半期は売上高が18億24百万円で営業利益が65百万円、第3四半期は売上高が18億92百万円で営業利益が77百万円だった。

23年3月期は下方修正して減益幅が拡大する見込みとなったが、今後はエネルギーコスト上昇に対する価格転嫁交渉と、生産現場でのエネルギーコスト削減を進める方針としている。積極的な事業展開で24年3月期の収益回復を期待したい。

■株価は戻り試す

株価は地合い悪化も影響して上げ一服の形だが、週足チャートで見ると13週移動平均線が26週移動平均線を上抜いてゴールデンクロスを示現した。基調転換を確認した形であり、高配当利回りや低PBRなど指標面の割安感も評価して戻りを試す展開を期待したい。4月17日の終値は537円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS32円40銭で算出)は約17倍、前期推定配当利回り(会社予想の20円で算出)は約3.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1030円86銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約25億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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