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トレジャー・ファクトリーは上値試す、24年2月期増収増益・連続増配予想
- 2023/4/24 09:19
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
トレジャー・ファクトリー<3093>(東証プライム)はリユースショップを複数業態で全国展開している。SDGsを推進するとともに、グループ一体となって生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指している。23年2月期はリユース意識の高まりや外出需要の回復などで既存店売上が好調に推移し、新規出店や売上総利益率向上も寄与して前回予想を上回る大幅増収増益で着地した。過去最高業績だった。そして24年2月期も増収増益で連続増配予想としている。中期経営計画(ローリング)でも24年2月期および25年2月期の計画を上方修正した。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は好業績や増配を好感して急伸し、一気に上場来高値を更新した。その後は利益確定売りで上げ一服の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■リユースショップを複数業態で全国展開
総合リユース業態トレジャー・ファクトリーや服飾専門リユース業態トレファクスタイルを主力として、リユースショップを複数業態で首都圏・直営店中心に全国展開している。
さらに周辺事業・新規事業としてBtoBライブネットオークション事業、引越・買取サービスのトレファク引越事業、不用品買取だけでなく不動産売買・仲介も行うトレファク不動産事業、終活・生前整理サービスのレガシー事業、ドレスやブラックフォーマルをレンタルするECレンタル事業「Cariru」なども展開している。生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指し、マルチブランドの業態展開による販売力やマルチチャネルによる仕入力を強みとしている。
19年1月にはシステム開発のデジタルクエストを子会社化、20年2月にはAIアプリのXZ(クローゼット)運営のSTANDING OVATIONと資本業務提携、20年10月には静岡県内でリユースショップ直営店12店舗を展開するピックアップジャパンを子会社化した。22年2月には子会社トレファクテクノロジーズを設立してデジタルクエストのシステム開発受託事業を承継した。
23年4月末時点の店舗数はグループ合計244店舗(タイ3店舗、台湾1店舗を含むトレジャー・ファクトリーが82店舗、トレファクスタイルが74店舗、トレファクスポーツアウトドアが7店舗、ユーズレットが9店舗、トレファクマーケットが1店舗、ブランドコレクトが6店舗、子会社のカインドオルが37店舗、ゴルフキッズが15店舗、ピックアップが13店舗)となっている。このうち直営店は210店舗である。
海外はタイ(16年3月進出)のバンコクで直営店3店舗を展開し、22年2月期に単年度黒字化した。台湾では21年4月に設立した現地法人Treasure Factory(Taiwan)が22年12月に1号店をオープンした。台湾においても複数店舗のドミナント展開を目指すとしている。
なお収益面では引越シーズンで単価の高い生活家電や家具の構成比が高まる第1四半期(3月~5月)の利益率が高くなり、単価の低い夏物衣料が主力となる第2四半期(6月~8月)の利益率が低くなる季節特性がある。
■新規出店やM&Aで成長加速
中期経営計画(ローリング方式、24年2月期~26年2月期)は、前回計画に比べて24年2月期および25年2月期の計画を上方修正した。そして最終年度26年2月期目標値に売上高393億円、経常利益36.7億円、経常利益率9.3%、親会社株主帰属当期純利益24.3億円を掲げている。25年2月期および26年2月期の既存店売上(単体ベース)と売上総利益利率の前提は不透明感を考慮して直前期並み、年間出店数の計画は24年2月期と25年2月期が25~30店舗、26年2月期が30~35店舗としている。投資計画は3年累計で約33億円~34億円(新店にかかる店舗設備や敷金など)の見通しとしている。株主還元については配当性向目標を30%以上とした。
基本方針として、リユース事業の成長、新規事業への投資、海外市場での成長、M&Aによる成長、DX投資による成長を掲げている。SDGsを推進するとともに、さらなる成長が見込まれるリユース市場においてグループ一体となってリユース・ネットワークの拡大を推進する。そして生活に密着したリユースの総合プラットフォーム構築を目指している。
リユース事業の成長では、グループ全体で複数業態を組み合わせて年間25~35店ペースの出店を継続し、リユースのネットワークを拡大する。さらに多店舗体制構築に向けた採用・教育の強化、更なる新業態開発、グループのリユース会社の収益改善を推進する。
新規事業への投資では、関東と関西の物流拠点の拡張によるBtoBライブネットオークション事業の本格展開、買取と引越をセットで行う独自の買取引越事業の成長加速、レンタル事業への継続投資と新たな柱への育成を推進する。
海外事業では、タイ事業(21年11月期に単年度黒字化)の利益体制の構築と新規出店、および台湾への進出を推進する。M&Aでは、既存事業とのシナジー効果や新たな収益事業につながるM&Aを積極的に検討する。DX投資では、自社システム部門およびシステム子会社の開発力を活用し、業務効率化、査定効率化、新たな買取機会・販売機会創出などを推進する。
M&A・アライアンスでは、22年2月に終活・生前整理分野「Regacy」において、相続対策プラットフォームの「はなまる手帳」を運営するはなまる手帳と業務提携した。22年3月にはALBERT<3906>と共同で、EC出品のために撮影した衣類画像から必要な情報をAIが自動入力する「クロスキャナ」を開発し、トレファク店舗での本格導入を開始した。EC出品業務にかかる「ささげ作業」の大幅な効率化を図り、システム導入前との比較でEC出品点数の10%増加を目指す。22年9月には東急コミュニティーの住み替えサービス「たくす」との連携を開始した。
■プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書、23年2月末時点で適合
22年4月に実施された東京証券取引所の市場再編ではプライム市場を選択し、プライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示している。中期経営計画で掲げた各種取組を推進し、業績目標の達成、株主還元の拡充、コーポレートガバナンスの充実などによって継続的に企業価値の向上(時価総額の増大)を図り、25年2月期末までにプライム市場上場維持基準への適合を目指すとしている。
22年5月開催の第27回定時株主総会から、東京証券取引所の関連会社であるICJが運営する「機関投資家向け議決権電子行使プラットフォーム」に参加した。第26回定時株主総会から個人株主の議決権行使の選択肢を増やすためインターネットを利用した議決権行使を導入しており、国内外の機関投資家に対しても議決権を行使しやすい環境を整備した。また定款を変更し、将来的に株主総会の開催方法の選択肢の一つとしてバーチャルオンリー株主総会の開催も可能にした。22年10月には中間および期末の「株主通信」を廃止すると発表した。地球環境に配慮して紙の使用量削減を含む省資源化を推進する。一方で、自社HPのコーポレートサイトにおけるIR情報の充実を推進する。
そして23年3月にプライム市場上場維持基準適合に向けた計画書の進捗状況をリリースした。21年6月30日の移行基準日時点ではプライム市場上場維持基準のうち流通株式時価総額が基準を充たしていなかったが、23年2月28日時点においてプライム市場の上場維持基準の全ての項目で適合した。今後も中期経営計画達成に向けた経営方針の実行に注力し、持続的な業績向上と企業価値増大に取り組むとしている。
■23年2月期大幅増益着地、24年2月期増収増益・連続増配予想
23年2月期連結業績は売上高が22年2月期比21.0%増の282億12百万円、営業利益が2.6倍の25億65百万円、経常利益が2.5倍の26億22百万円、親会社株主帰属当期純利益が2.4倍の17億10百万円だった。EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却費)は2.2倍の29億17百万円だった。配当(2月10日付で期末5円上方修正)は22年2月期比20円増配の37円(第2四半期末12円、期末25円)とした。配当性向は24.2%となる。
前回予想(1月12日付で3回目の上方修正、売上高276億67百万円、営業利益23億76百万円、経常利益24億22百万円、親会社株主帰属当期純利益15億08百万円)を上回る大幅増収増益で着地した。過去最高業績だった。リユース意識の高まり、物価高による節約志向の高まり、行動制限緩和に伴う外出需要の回復、メディア露出増加による認知度向上などで既存店売上が好調に推移し、新規出店、売上総利益率向上、グループ会社の利益貢献なども寄与した。
連結ベースで見ると、新規出店は年間20~25店舗の計画に対して、グループ合計で過去最多となる20店舗(海外1店舗およびFC1店舗を含む)を出店した。なお23年4月末時点のグループ店舗数(海外およびFCを含む)は244店舗となっている。仕入高(買取)は多様なチャネルを生かして26.1%増加と順調だった。差引売上総利益率は61.7%で0.7ポイント上昇した。
単体ベースで見ると、既存店の売上高は110.5%、販売件数は107.7%、1件あたり販売単価は102.7%だった。売上総利益率は65.8%で1.0ポイント上昇した。販売件数、販売単価ともに上昇し、値下げや廃棄の抑制なども寄与した。仕入高は22.6%増加した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が67億33百万円で営業利益が7億66百万円、第2四半期は売上高が60億91百万円で営業利益が2億36百万円、第3四半期は売上高が75億63百万円で営業利益が8億99百万円、第4四半期は売上高が78億24百万円で営業利益が6億64百万円だった。なお新入学・入社に伴う引越シーズンにあたる第1四半期(3月~5月)の利益率が高く、第2四半期(6月~8月)の構成比が小さい季節特性がある。
24年2月期の連結業績予想は、売上高が23年2月期比11.9%増の315億60百万円、営業利益が11.4%増の28億57百万円、経常利益が9.6%増の28億74百万円、親会社株主帰属当期純利益が9.2%増の18億68百万円としている。配当予想は21円(第2四半期末10円、期末11円)としている。23年3月1日付の株式2分割遡及修正後で23年3月期(18円50銭)比2円50銭増配となる。連続増配予想で予想配当性向は26.0%となる。
新規出店(連結ベース)は25店舗前後、既存店売上(単体ベース)は第1四半期が海外客の本格回復で免税売上増加が見込まれるため前年比107.0%、第2四半期以降は不透明感を考慮して前年並み、売上総利益率は通期を通じて前年並みの前提としている。コスト面では人件費の増加(単体ベース23年4月新卒入社115名、前期に続いて従業員給与ベースアップ実施)や電気代の増加などを見込んでいる。
中期経営計画(ローリング方式、24年2月期~26年2月期)では、前回計画に比べて24年2月期および25年2月期の計画を上方修正している。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
月次売上状況(単体直営店の店舗売上、前年同月比速報値)を見ると、23年3月は全店が122.7%、既存店が113.6%だった。気温が高く推移して春物衣料が好調だったことに加えて、外国人観光客向けの販売が伸長してブランド品も好調だった。新生活需要で生活家電も伸長した。既存店売上は21年9月から19ヶ月連続前年比プラスと好調が続いている。新規出店は1店舗だった。
■株主優待制度は毎年2月末の株主対象
株主優待制度は毎年2月末時点の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。
■株価は上値試す
なお4月12日に公表した自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式取得(上限20万株・2億円)については、4月17日に11万300株を取得して終了した。
株価(23年3月1日で株式2分割)は好業績や増配を好感して急伸し、一気に上場来高値を更新した。その後は利益確定売りで上げ一服の形となったが、自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。4月21日の終値は1760円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS80円62銭で算出)は約22倍、今期予想配当利回り(会社予想の21円で算出)は約1.2%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS291円34銭で算出)は約6.0倍、そして時価総額は約428億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)