JPホールディングスは調整一巡、24年3月期も収益拡大基調

JPホールディングス<2749>(東証プライム)は総合子育て支援のリーディングカンパニーである。長期ビジョンに「選ばれ続ける園・施設」を掲げ、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進するとともに、新規領域への展開も推進している。23年3月期は受入児童数の増加や効率的な施設運営などで増収増益予想としている。さらに24年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落して水準を切り下げる形となったが、少子化対策関連の好業績銘柄であり、調整一巡して出直りを期待したい。なお5月11日に23年3月期決算発表を予定している。

■総合子育て支援のリーディングカンパニー

総合子育て支援のリーディングカンパニーとして、認可保育園・学童クラブ運営を中心に子育て支援の質的向上と事業を通じた社会貢献を推進している。事業区分は認可保育園や学童クラブなどを運営する子育て支援事業、保育所向け給食請負事業、英語・体操・リトミック教室請負事業、保育関連用品の物品販売事業、研究・研修・コンサルティング事業としている。

22年4月には、連結子会社の日本保育サービスが同じく連結子会社のアメニティライフ(横浜市で保育所5園運営)を吸収合併した。23年1月には、連結子会社の日本総合保育所が同じく連結子会社のジェイキャストとジェイ・プランニング販売を吸収合併した。経営資源の効率化、更なる子育て支援サービスの質的向上、新規事業の運営や外販対応の強化、競争優位性と事業規模拡大を目指す。

22年3月期末の運営施設数は、保育園が211(認可保育園・公設民営が11、認可保育園・民設民営が182、認可外東京都認証保育所が13、認可外企業主導型保育事業が1、その他認可外保育園が4)、学童クラブが81、児童館が11、合計が303(21年3月期末は301)だった。首都圏を中心に展開している。22年3月期末時点の受入児童数は21年3月期末比72人増加の1万5653人だった。

収益は既存施設の稼働率、新規施設の開園、保育士待遇改善に伴う人件費の増加、補助金の増減などが影響する。また新規施設の開園は概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。自治体から受け取っている保育士の借り上げ社宅に対する補助金等については、従来は補助金収入として営業外収益に計上していたが、22年3月期から売上高に計上する方法に変更した。

23年1月には、中長期的な株主価値に対するグループ従業員のモチベーション向上を企図して、従業員持株会向けインセンティブ制度(特別奨励金スキーム)の導入と、第三者割当による自己株式処分(処分株式数は最大24万950株、処分価額は1株につき356円、処分予定先はジェイ・ピー従業員持株会)を発表した。

なお23年4月1日付で「こども家庭庁」が創設された。保育所と認定こども園の所管が同庁に移管され、少子化、こどもの貧困、虐待防止対策など幅広い分野において同庁が一元的に企画・立案・総合調整を行う。さらに岸田首相が「異次元少子化対策」を掲げ、国や地方自治体において、さまざまな子育て支援政策が打ち出されている。

■長期経営ビジョンは「選ばれ続ける園・施設」

長期経営ビジョンでは「選ばれ続ける園・施設」を目指し、連結売上高1000億円(既存事業500億円、新規事業500億円)に向けて、既存事業の改善・拡大、新規事業、資本・業務提携を推進している。

さらに中期経営計画(ローリング方式により年次で見直し実施)では、当初の24年3月期計画を前倒しで達成したため、新たな目標数値に24年3月期売上高363億円、経常利益39億60百万円を掲げた。重点戦略として既存事業の収益性強化、子育て支援の更なる質的向上、社会・事業環境の変化を捉えた新たな価値創造に向けた新規事業の開発を推進する。

既存事業の収益性・効率性の向上では、新たなプログラム(幼児学習プログラム、ダンスなど)導入による受入児童数の拡大と競争優位性の確立、配置人数の適正化と運営オペレーションの効率化を捉えたICT化の推進、小さな本部の実現に向けた経営管理・収益管理の体制強化および経営の効率化を捉えたシステム化と構造改革を推進する。そして学童クラブ・児童館の拡大(現状の2倍の200施設を目指す)を推進する。

健全性の向上では、安全・安心の確保を最優先とした運営体制・対策方針の策定と徹底、選ばれる園・施設づくりとしてのブランドイメージの向上と優位性の確立、魅力ある職場環境づくり、コンプライアンスの徹底およびコーポレート・ガバナンスの更なる強化を推進する。

成長性の向上では、子育て支援の取り組みを待機児童対策から少子化社会への対応として、新たな価値創造に向けたサービス・事業を開発・展開する。

そして新規事業の開発を加速するため、子育て支援業界および異業種との資本提携・業務提携(21年1月に資本業務提携して第1位株主となった学研ホールディングス<9470>など)を積極推進して収益基盤を拡大する。また、社会・事業環境の変化に対応した幼児教育・新規プログラムのDX化によるグループ競争力の強化、子育て支援プラットフォーム事業「コドメル」のサービス機能強化と商品を拡充したグローバル展開、発達支援事業の拡充と既存施設で培った専門性の高いサービスの提供などを推進する。

21年6月には、保育園向け知育プログラムとして学研式指導システム「もじかずランド」の導入を開始した。21年9月には子会社の日本保育総合研究所が神奈川県下を中心とした保育所等訪問支援事業を開始した。児童福祉法に基づいて、障害児が地域の中で差別されることなく、障害のない子どもたちとともに育ち、ともに学び合うことができるインクルーシブな社会の実現を目指す未来志向型の事業で、発達支援(療育)の専門知識のあるスタッフが、保育園・幼稚園・小学校など日常生活の場に定期的(月1~2回程度)訪問してサポートする。

21年10月にはジェイキャストが新たな成長戦略を捉えた新規事業プログラム「保育園児向けダンスプログラム」を提供開始した。またガーデンライフスタイルメーカーのタカショー<7590>と協同で、こどもたちが「野菜を育てる楽しさ」と「野菜のおいしさ」を学べる食農・食育プログラム「VegTrug Kids」を開始した。

23年1月には日本保育サービスが、埼玉県草加市の草加市立松原児童青少年交流センター「miraton(ミラトン)」の受託運営を開始した。30歳までのこどもと若者を中心に誰でも使える施設で、児童館の機能に加えて青少年の活動の場、多世代交流の場、さらに文化交流の振興や音楽活動の場として複合機能を有する施設である。こうした複合施設の全施設の受託運営はグループ初となる。

23年4月には、同社グループ初となる英語に特化した新業態「バイリンガル保育園」を首都圏で3施設開設した。既に提供している英語プログラムのノウハウをもとに、首都圏で運営している認可保育園1園と東京都認証保育所2園を業態変更した。また、オリジナル課題解決型学習プログラム「STEAMS保育・学童」を新規導入した。理系・文系・リベラルアーツ・スポーツを横断して学ぶことにより、主体的な学びをサポートして「一人ひとりが主役になる力」を育む。

■子育て支援とSDGsの両立に向けた「コドメル」サービス

子育て支援と資源の有効活用・環境保全(SDGs)の両立を目的として、会員制の子育て支援プラットフォーム「コドメル(codomel)」サービスも強化する方針だ。全国で運営する300超の子育て支援施設(保育所、学童クラブ、児童館)の園児・児童と、その保護者を会員化して、乳児期・幼児期・学童期において子育てに関する様々な商品やサービスを幅広く提供する。

第1弾サービスとして22年4月より、子育て関連用品を中心とするリユース品に関する「子育て商品マッチングサービス」を開始した。そして企業連携によって「コメドル」寄付受付BOXの設置先も拡充する方針だ。なお22年7月には連携先の一つであるクレディセゾンにおける寄付受付BOXの設置事例をリリースしている。また「コメドル」寄付受付BOX経由で集まった子供服やおもちゃの一部を、出入国在留管理庁を通じてウクライナ避難民に寄付したとリリースしている。

今後は、第2フェーズとして子育て世代に商品や様々なサービスを提供するBtoC事業、第3フェーズとして東南アジアへのサービス展開を推進する。23年2月には第2弾サービスとして、さまざまな企業と連携して子育て世代の「お悩み」を解決する商品・サービスの提供開始(実施期間2月8日~2月26日)を発表した。そして6年目に取扱高18億円を目指し、新たな事業柱を構築する方針だ。

なお22年10月には、子育て支援プラットフォーム「コドメル」が「BabyTech Awards 2022」の保護者支援サービス部門で大賞を受賞した。

■23年3月期増収増益予想、24年3月期も収益拡大基調

23年3月期の連結業績予想(22年11月10日付で売上高予想を据え置き、利益予想を上方修正)は、売上高が22年3月期比3.7%増の356億40百万円、営業利益が8.6%増の36億33百万円、経常利益が10.5%増の37億11百万円、親会社株主帰属当期純利益が12.6%増の25億66百万円としている。配当予想は22年3月期比1円50銭増配の6円(期末一括)としている。普通配当を50銭増配するとともに、創業30周年記念配当1円を実施する。

通期予想は期初計画に対して営業利益を73百万円、経常利益を1億31百万円、親会社株主帰属当期純利益を2億41百万円、それぞれ上方修正している。各施設の人員再配置などによる効率的な施設運営、各種仕入商品の価格高騰に対応した発注体制の見直しなどで、各利益は期初計画を上回る見込みだ。親会社株主帰属当期純利益については固定資産売却益も寄与する。

デジタルを活用した園見学、英語・体操・リトミック・ダンスなどのプログラムのオンライン化、新たな幼児学習プログラムの導入など「選ばれる園・施設づくり」としての取り組みを推進するとともに、新規事業としての子育て支援プラットフォーム「子育て商品マッチングサービス」も推進する。

第3四半期累計は売上高が前年同期比2.6%増の260億51百万円、営業利益が16.2%増の24億99百万円、経常利益が16.2%増の25億22百万円、親会社株主帰属四半期純利益が26.5%増の17億77百万円だった。増収・2桁増益と順調だった。

売上面は受入児童数の増加で増収だった。依然としてコロナ禍の影響が残り、部分的な休園・休室があったが、新規施設の開設(保育所2園、学童クラブ・児童館12施設の合計14施設)や新規受託に加えて、他社に先駆けてデジタルを活用した園見学の実施、英語・体操・リトミック・ダンスなどのオンラインプログラムの実施、新たな幼児学習プログラム導入など「選ばれ続ける園・施設づくり」の取り組みが奏功した。なお第3四半期末時点の施設数は保育所209園、学童クラブ89施設、児童館10施設、合計308施設となった。

利益面は2桁増益だった。各施設における水道光熱費の増加があったものの、受入児童数増加による増収効果に加えて、各施設の人員再配置など効率的な施設運営、各種仕入商品の価格高騰の影響抑制に向けた発注体制の見直しなどにより、各施設の収益改善およびコスト削減を推進した。また、前期に発生していた特殊要因費用(新人事制度導入に伴う賞与支給対象期間変更による賞与引当金の増額、システム導入に伴う費用の増加など)の一巡も寄与した。特別利益には固定資産売却益2億39百万円を計上した。土地・建物を保有して運営する保育園7園に関して、保有リスクを回避するため将来的な売却等を視野にオフバランス化を検討し、7園のうち2園の固定資産(土地・建物)を売却した。

四半期別に見ると、第1四半期は売上高が85億96百万円で営業利益が7億26百万円、第2四半期は売上高が86億11百万円で営業利益が7億76百万円、第3四半期は売上高が88億44百万円で営業利益が9億97百万円だった。新規施設開園が概ね4月のため、期前半は各施設への保育士配置に係る費用が先行するが、児童数が増加して稼働率が上昇する期後半に向けて収益が拡大する特性がある。

通期予想は据え置いている。第3四半期累計の進捗率は売上高が73.1%、営業利益が68.8%、経常利益が68.0%、親会社株主帰属当期純利益が69.3%だった。ただし、期後半に向けて稼働率が上昇する効果なども勘案すれば、通期利益予想には再上振れ余地がありそうだ。

なお23年4月1日よりバイリンガル保育園3園、保育園1園、学童クラブ7施設の運営を開始した。6月1日にはバイリンガル保育園2園、学童クラブ1施設の運営を開始予定である。24年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は調整一巡

株価は戻り高値圏から反落して水準を切り下げる形となったが、少子化対策関連の好業績銘柄であり、調整一巡して出直りを期待したい。4月25日の終値は314円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS29円64銭で算出)は約11倍、前期推定配当利回り(会社予想の6円で算出)は約1.9%、前々期実績連結PBR(前々期実績連結BPS136円91銭で算出)は約2.3倍、そして時価総額は約276億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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