綿半ホールディングスは上値試す、24年3月期収益拡大基調

綿半ホールディングス<3199>(東証プライム)は、ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとする建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開し、中期経営計画では「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」を掲げている。23年3月期は小売事業が新規出店コストや電力料金値上げ、貿易事業が円安の影響を受けるが、建設事業の順調な工事進捗が牽引し、全体として大幅営業・経常増益予想としている。積極的な事業展開で24年3月期も収益拡大基調だろう。株価は戻り高値圏から反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。なお5月12日に23年3月期決算発表を予定している。

■小売事業、建設事業、貿易事業を展開

ホームセンターを中心とする小売事業、長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事を強みとする建設事業、および医薬品・化成品向け天然原料輸入を主力とする貿易事業を展開している。

22年3月期のセグメント別売上高構成比は小売事業67%、建設事業28%、貿易事業5%、その他(不動産事業等)0%で、利益構成比(全社費用等調整前営業利益)は小売事業52%、建設事業24%、貿易事業20%、その他4%だった。なお小売事業に含まれていた木造住宅分野を22年3月期から建設事業に変更した。

■小売事業はEDLP×EDLC戦略を推進

小売事業は、綿半ホームエイドが長野県を中心にスーパーセンター業態とホームセンター業態、綿半フレッシュマーケットが愛知県を中心に食品スーパー業態、綿半Jマートが関東甲信越エリアにホームセンター業態を展開している。スーパーセンターは10万点を超える豊富な品揃えに加えて、生鮮食品を加えることで主婦層を取り込み、平日・土日の平準化を図っていることが特徴である。

基本戦略として、M&Aも活用したエリア拡大と売場面積拡大、EDLP(エブリデー・ロー・プライス)×EDLC(エブリデー・ロー・コスト)戦略、子会社の綿半パートナーズによるグループ商品仕入原価低減とPB商品共同開発・相互供給、全社を一本化する新基幹システムの導入と物流改革、ネット通販の拡大などを推進している。

22年8月には綿半スーパーセンター上田店(長野県上田市)をオープンした。食品スーパー、ホームセンター、ドラッグストアの3業態を一つにまとめたグループ最大級の店舗である。22年9月には、長野市中心部・行政庁舎にも近い長野県権藤地区に綿半スーパーセンター権堂店(長野県長野市権堂町)をオープンした。中心市街地型店舗開発を推進しており、生鮮食品、ホームセンター商品、医薬品、各種テナントを含めた複合型店舗としての出店である。

周辺領域への展開では、22年7月に綿半パートナーズが、ネットショップ立ち上げに必要な機能をワンパッケージで提供する「PayTouch」をオープンした。23年2月には綿半ドットコムが、創業25年で年間利用者2万人・年間買取100万品を誇る買取専門店「買取けんさく君」の四谷営業所をオープンした。23年4月には長野県でドラッグストアを展開する綿半ドラッグが通販サイトをオープンした。

M&Aでは、18年12月に家電・パソコン通販サイト「PCボンバー」運営のアベルネット(現:綿半ドットコム)を子会社化、19年4月に長野県内で「お茶元みはら胡蝶庵」を展開する丸三三原商店(現:綿半三原商店)を子会社化、20年10月に家具・インテリア販売や空間デザイン事業を展開するリグナ(東京都)を子会社化、20年11月に調剤薬局併設ドラッグストアを展開するほしまん(長野県)を子会社化、21年3月に組立家具「Shelfit」製造販売の大洋(静岡県)を子会社化、21年11月にヴィンテージスタイルの家具・インテリアショップ「藤越 FUGGICOSI」を展開する藤越(静岡県)を子会社化した。

22年4月には建物管理・不動産売買のAIC(東京都新宿区)を子会社化した。また藤越とリグナを合併(新社名リグナ)した。家具・インテリアの仕入機能やネット通販のノウハウを融合し、家具販売事業の効率化と収益性向上を図る。22年7月には中村ファームを子会社化(綿半ファームへ商号変更)して養豚事業に参入した。

23年3月には子会社の綿半ホームエイドを通じて小諸動物病院の全株式を取得した。綿半ドラッグと連携した動物用医薬品の取り扱い、犬猫療法食等の企画販売、店舗におけるワクチン投与やトリミング事業の展開など、幅広くペット市場に参入する方針としている。またSMBCコンシューマーファイナンスと業務提携した。綿半パートナーズが運営するネットショップ運営サービス「PayTouch」において、SMBCコンシューマーファイナンスが展開するローンが申込できるようになった。

小売事業の月次売上(速報値)を見ると、23年3月は全店が100.4%、既存店が97.4%だった。気温上昇で灯油等が低調だった。なお22年4月~23年3月累計では全101.1%、既存店99.8%と概ね堅調だった。既存店の客単価は21年12月から16ヶ月連続前年比プラスとなっている。

なお23年1月には、綿半魚類 一宮漁港および綿半フレッシュマーケット平島店(綿半魚類 さかなまみれ)の惣菜部門人気NO.1商品「綿半名物 海賊カレー」が、一般社団法人全国スーパーマーケット協会主催「お弁当・お惣菜大賞2023」に入選した。海賊の荒々しさを表現するために、大きなエビフライと豪快な串焼きをつけたカレーである。23年2月には綿半スーパーセンター権堂店において、デリバリーサービスUber Eatsを利用した海鮮惣菜の配達サービスを開始した。長野県内のスーパーマーケットとしては初となるサービスで、今後は県内の各店舗へ展開する予定としている。

■建設事業は長尺屋根工事や自走式立体駐車場工事に強み

建設事業は、綿半ソリューションズが建築・土木・住宅リフォーム工事、鉄骨・鋼構造物の加工・製造などを展開し、長尺屋根工事および自走式立体駐車場工事を強みとしている。長尺屋根工事は、工場の操業を止めずに老朽化した屋根の改修工事を行う「WKカバー工法」で特許を取得している。自走式立体駐車場工事は、柱が少なく利用者が使いやすい「ステージW」など、多数の国土交通省認定を有して国内トップシェアを誇っている。

21年2月に引き渡し完了したSUBARU矢島工場従業員専用立体駐車場の建設工事、および工場と駐車場を繋ぐ連絡橋工事では、駐車場屋上階に自走式駐車場発電設備として日本最大級規模の太陽光発電システムを設置した。21年7月には、新宿駅東口「クロス新宿ビジョン」が設置されているクロス新宿ビルに、自社オリジナル製品の超大型大開口サッシ「GLAMO」が採用されて竣工した。21年11月には(仮称)門真市松生町商業施設計画に併設される大型立体駐車場2棟の建設工事を受注し着工した。

なお19年8月に戸建木造住宅FC事業を展開するサイエンスホーム(静岡県)を子会社化、21年8月に戸建木造住宅販売・加盟店運営の夢ハウス(新潟県)を子会社化した。木造住宅分野を第4の柱として注力する。

22年12月には、自然素材・天然無垢材で造る木造住宅の新ブランド「cotton1/2」(木造軸組パネル工法)を発表した。子会社の綿半林業の生産ラインと品質、および同じく子会社のサイエンスホームの合理化工法と販売戦略を合わせて第3の住宅グループとして23年1月より始動した。将来的には年間1万2000棟という目標を掲げ、木造住宅のニュースタンダードを目指すとしている。

■貿易事業はジェネリック医薬品向け天然原料などを販売

貿易事業は、医薬品・化成品向け天然原料輸入専門商社の綿半トレーディングが展開している。

ジェネリック医薬品向けアセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)や、メキシコ特産でヘアワックス・口紅などに使用するキャンデリラワックス(取り扱い数量国内1位)など特定分野に強みを持ち、製造部門はHMG(ヒト尿由来の排卵障害治療薬)原薬を製造して医薬品メーカーに販売している。

21年12月には、海外市場への販売拡大に向けてAlibaba.comに自社サイトを掲載し、自社原料商品の取引を開始した。22年7月には、100%天然植物由来の動物飼料添加物「Nutrafito Plus」の販売を開始した。

23年1月には綿半トレーディングが、果実・野菜等の食品輸入を展開するカサナチュラルの株式20%取得して資本業務提携した。天然原料の新規開拓・調達を加速し、グループ小売業店舗で取り扱う食品の拡充にも取り組む方針としている。

■中期経営計画

22年5月に発表した新・中期経営計画(23年3月期~25年3月期)では、新たな経営方針に「地域に寄り添い地域と共に新しい価値を創造する」を掲げ、目標数値は25年3月期売上高1350億円、経常利益40億円、経常利益率3%としている。

地域との繋がりを大切にしながら、地域の発展に尽くすとともに、目標数値達成に向けて諸施策を実践し、企業価値向上を図るとしている。なお20年6月には長野県SDGs推進企業に登録されている。

■23年3月期大幅営業増益予想、24年3月期収益拡大基調

23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比9.2%増の1250億円、営業利益が22.8%増の29億50百万円、経常利益が14.1%増の33億50百万円、そして親会社株主帰属当期純利益が2.1%増の22億50百万円としている。配当予想は22年3月期比1円増配の22円(期末一括)としている。連続増配予想である。

第3四半期累計は売上高が前年同期比18.4%増の1005億93百万円、営業利益が27.0%増の21億08百万円、経常利益が21.4%増の25億72百万円、親会社株主帰属四半期純利益が前期計上の負ののれん発生益の剥落や税負担の増加で13.7%減の13億90百万円だった。

小売事業が新規出店コストや電力料金値上げの影響を受け、貿易事業も円安影響を受けたが、建設事業における順調な工事進捗が牽引し、全体として増収、大幅営業・経常増益だった。

小売事業は売上高が1.8%増の592億73百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が35.0%減の9億76百万円だった。売上面は、22年8月にオープンした綿半スーパーセンター上田店、22年9月にオープンしたグループ初の都市型店となる権堂店も寄与して増収だが、コスト面では、新規出店コストや電力料金値上げの影響で減益だった。

建設事業は売上高が64.6%増の366億57百万円で、利益が297.3%増の13億81百万円だった。資材価格高騰の影響を受けたが、豊富な受注残を背景に各分野の工事が順調に進捗して大幅増収増益だった。

貿易事業は売上高が5.7%減の39億94百万円で、利益が36.0%減の3億53百万円だった。円安や輸送コスト上昇などの影響で減収減益だった。

その他(不動産事業など)は売上高が214.9%増の6億68百万円で、利益が7.2%増の1億16百万円だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が309億69百万円で営業利益が4億97百万円、第2四半期は売上高が333億19百万円で営業利益が6億29百万円、第3四半期は売上高が363億05百万円で営業利益が9億82百万円だった。

通期も大幅営業増益予想としている。セグメント別の計画は、小売事業の売上高が22年3月期比1.9%増の780億円でセグメント利益が0.6%増の18億26百万円、建設事業の売上高が25.9%増の400億85百万円で利益が71.5%増の14億53百万円、貿易事業の売上高が1.7%増の59億15百万円で利益が0.3%増の7億円としている。小売事業が新店も寄与して堅調に推移し、受注好調な建設事業が回復する見込みだ。

重点施策として、小売事業では店舗改装・新規出店の継続的な推進、流通網の拡大(仕入・販売網の拡大、物流拠点の整備)、新業態の開発(綿半スーパーセンター権堂店オープン)を推進する。建設事業では鉄骨分野のFA化加速(加工能力の向上と効率化による収益性の向上)、木の加工・流通網の構築(地場産の木材の加工・流通)、木を使った商品開発(木製倉庫等の開発)を推進する。貿易事業では食品分野への進出(中南米の果物輸入・小売各店での販売)、肥料・飼料分野の拡大(天然肥料・飼料の拡大)を推進する。

第3四半期累計の進捗率は売上高が80.5%、営業利益が71.5%、経常利益が76.8%、親会社株主帰属当期純利益61.8%と概ね順調だった。期初時点で下期偏重の利益計画(営業利益は上期10億42百万円で下期19億08百万円、経常利益は上期12億24百万円で下期21億26百万円)である。積極的な事業展開で24年3月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待制度は毎年9月末の継続保有株主対象

株主優待制度は毎年9月30日現在で1単元(100株)以上を継続的に保有している株主を対象として、信州特産品や綿半ホームエイドPB商品詰め合わせなどを贈呈(100株以上継続保有は1点、300株以上継続保有は2点を選択)している。なお22年8月に株主優待制度の変更(拡充)を発表し、選択優待品を従来の13点から14点に拡充(詳細は会社HP参照)した。22年9月末対象から実施した。

■株価は上値試す

株価は戻り高値圏から反落したが、調整一巡して切り返しの動きを強めている。上値を試す展開を期待したい。4月26日の終値は1412円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS113円31銭で算出)は約12倍、前期推定配当利回り(会社予想の22円で算出)は約1.6%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS974円25銭で算出)は約1.4倍、そして時価総額は約281億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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