【どう見るこの株】ニイタカは戻り試す、23年5月期減益予想だが24年5月期収益回復基調
- 2023/4/27 10:42
- どう見るこの株
ニイタカ<4465>(東証プライム)は、業務用洗剤・アルコール除菌剤・固形燃料などフードビジネス業界向け化成品事業を展開し、成長に向けた基本戦略として既存事業の拡大、新領域への展開、新規事業の開発、経営基盤強化のための投資、ESGを軸にしたサステナブル経営を推進している。23年5月期は需要が堅調に推移し、拡販も推進して増収だが、原材料価格高騰の影響で減益予想としている。ただし同社は原材料価格高騰の影響は23年5月期がピークと想定している。そして製品価格の適正化やコスト削減の取り組みも強化する方針だ。積極的な事業展開で24年5月期は収益回復基調が期待できるだろう。株価はやや小動きだが、下方修正を嫌気した1月の年初来安値圏から反発して下値を切り上げている。23年5月期減益予想を織り込み済みであり、戻りを試す展開を期待したい。
■業務用洗剤・アルコール除菌剤・固形燃料などを展開
フードビジネス業界向け化成品事業として、業務用の食器用洗剤、食器洗浄機用洗浄剤、アルコール除菌剤、漂白剤、固形燃料などを主力に、食品洗浄機メンテナンスサービスや衛生管理支援サービスなども展開している。主要顧客は飲食店や宿泊施設などで、フードビジネス業界が抱える食中毒対策に貢献している。
主力製品は、宿泊施設の「ひとり鍋」に使用される「カエン」シリーズなどの固形燃料、飲食施設で使用されるウイルス除去率99.999%のアルコール除菌剤「ノロスター」シリーズなどの業務用洗剤・アルコール除菌剤である。固形燃料は業界NO.1の品質と市場シェアを誇り、業務用洗剤・アルコール除菌剤などは食中毒原因の半数を占めるノンエンベロープウイルス(ノロウイルスなど)分野での競争優位性を特徴としている。22年5月期の売上高構成比は自社グループ製造品が80%、仕入商品等が20%だった。
事業環境の動向としては、感染症流行に伴う衛生意識の向上によって除菌剤・消毒剤の需要が拡大していること、20年6月の食品衛生法改正によって食品事業者にHACCP(衛生管理の手法)による衛生管理が義務化されたことで洗剤の需要が増加していること、22年4月のプラスチック資源循環促進法施行に伴って省資源対応の製品需要が増加していることなどが挙げられる。またコロナ禍影響の緩和で旅館やリゾートホテルなどの宿泊者数が回復基調となっている。
なお22年5月期末時点でグループは同社および連結子会社4社(国内1社、中国3社)で構成されている。23年2月にはアルコール製剤の製造販売を行う京葉糖蜜輸送(東京都)を子会社化、23年3月には乳酸菌発酵製品の製造販売を行うバイオバンク(岡山市)を子会社化した。
■中期経営計画
経営理念に「四者共栄」(取引先・ユーザーからの信頼、会社と株主の利益、社員と家族の幸福、社会と環境への貢献)を掲げ、長期ビジョンでは社会の持続可能性に配慮した高品質の製品・サービスを提供する事業を通じて「世の中の“キレイ”を支える会社」を目指し、目標には「業務用洗剤シェア国内NO.1」「業務用洗剤以外でも成長」「連結売上高400億円以上」を掲げている。
そして22年7月に策定した中期経営計画NX2025(23年5月期~25年5月期)では、目標数値に最終年度25年5月期の売上高225億円、営業利益24億円、営業利益率10.7%、ROE10%以上を掲げている。なお原材料費高騰の影響は23年5月期がピークの前提としている。
配当については23年5月期より配当方針を変更し、将来の企業価値を高める事業戦略に必要な内部留保を確保しつつ、連結配当性向30%以上もしくは株主資本配当率(DOE)2%のいずれか高い金額を目安に、配当を継続的に実施することを基本方針とした。
成長に向けた基本戦略として既存事業の拡大、新領域への展開、新規事業の開発、経営基盤強化のための投資、ESGを軸にしたサステナブル経営を推進している。
既存事業の拡大では、製品品質による差別化、製品企画力の強化、製品開発力の強化、顧客対応での差別化などにより、顧客メリットを持続的に創出し、食品衛生の向上に貢献することを目指す。特に、薬剤で不活性化されにくいノンエンベロープウイルス分野において、対応製品の研究開発に注力して感染症予防に貢献する方針だ。
新領域への展開では業務用洗剤・消毒剤における強みを生かし、既存分野への新製品・新サービス(既存の洗剤・消毒剤・固形燃料以外)の開発・提供、非食品分野(公共交通機関、教育機関、フィットネス、アミューズメントなど)や海外への既存製品の拡販、非食品分野向け洗剤・消毒剤の開発・提供を推進する。海外市場の開拓については、中国における業務用洗剤・洗浄剤事業を強化する方針だ。
新規事業の開発では「“キレイ”を支える」を軸にした事業開発を推進する。海外における新規ビジネスとして、20年5月にインドネシアに現地法人を設立して市場開拓を検討している。国内では化粧品OEMメーカーであるヴィーナス化成を21年3月にM&Aした。
経営基盤強化のための投資では、研究開発体制の強化、生産体制の強化、DXの活用を推進している。設備投資では、有事にも対応できるアルコール除菌剤の生産能力増強、およびプラスチック使用量削減を加速するための濃縮パウチ洗剤の生産能力増強を予定している。
ESGを軸にしたサステナブル経営では、東証プライム上場企業としての社会的責任を果たすためサステナブル経営を推進する。22年6月にはつくば工場で、22年7月にはびわ湖工場で、それぞれCO2フリー電力(発電時にCO2を排出しない電力)の利用を開始した。年間約1200トンのCO2排出量の削減を見込んでいる。
■プライム市場適合に向けた計画書
なお同社は、22年4月に実施された東京証券取引所の市場区分見直しに伴ってプライム市場を選択したが、流通株式時価総額が上場基準を充たしていなかったため、21年12月24日付でプライム市場上場維持基準適合に向けた計画書を開示し、その後22年8月19日付で計画の進捗状況を開示している。
22年6月30日末時点における流通株式時価総額が上場維持基準を充たしていないため、計画期間の25年5月末(中期経営計画の最終年度)までに上場維持基準を充たすよう、中期経営計画で掲げた業績目標を達成すべく各種取組を推進するとともに、配当方針変更による株主還元施策の実行、サステナビリティ・IR推進室の新設によるIR活動の強化、サステナブル経営の強化などにより、企業価値の向上(時価総額の増大)に努める方針としている。
■23年5月期減益予想だが24年5月期収益回復基調
23年5月期連結業績予想(22年12月23日付で売上高を据え置き、営業利益以下を下方修正)は、売上高が22年5月期比9.6%増の195億円、営業利益が34.3%減の12億円、経常利益が34.8%減の12億10百万円、親会社株主帰属当期純利益が35.0%減の8億百万円としている。配当予想は22年5月期比36円増配の64円(第2四半期末32円、期末32円)としている。予想配当性向は47.2%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比8.6%増の142億90百万円、営業利益が47.8%減の7億55百万円、経常利益が47.5%減の7億81百万円、親会社株主帰属四半期純利益が49.5%減の5億19百万円だった。
洗剤洗浄剤や固形燃料の販売が伸長して増収だが、原材料価格や物流費の高騰の影響で減益だった。自社グループ製造品売上高は5.8%増の111億66百万円、仕入商品等売上高は19.9%増の31億24百万円だった。
四半期別にみると、第1四半期は売上高が46億52百万円で営業利益が3億57百万円、第2四半期は売上高が48億85百万円で営業利益が2億48百万円、第3四半期は売上高が47億53百万円で営業利益が1億50百万円だった。
通期も需要が堅調に推移し、拡販も推進して増収だが、原材料価格や物流費の高騰の影響で減益予想としている。第3四半期累計の進捗率は売上高が73.3%、営業利益が62.9%、経常利益が64.5%、親会社株主帰属当期純利益が64.9%で利益進捗率がやや低水準の形だが、コロナ禍影響の緩和で飲食店や宿泊施設の客数が回復基調であることなどを勘案すれば、通期会社予想の達成は可能だろう。
同社は原材料価格高騰の影響は23年5月期がピークと想定している。そして製品価格の適正化やコスト削減の取り組みも強化する方針だ。積極的な事業展開で24年5月期は収益回復基調が期待できるだろう。
■株価は戻り試す
株価はやや小動きだが、下方修正を嫌気した1月の年初来安値圏から反発して下値を切り上げている。23年5月期減益予想を織り込み済みであり、戻りを試す展開を期待したい。4月26日の終値は2171円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS135円51銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の64円で算出)は約2.9%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2121円49銭で算出)は約1.0倍、そして時価総額は約129億円である。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)