■パワー半導体の安定供給を目指す
凸版印刷<7911>(東証プライム)は4月28日、パワー半導体向けの受託製造ハンドリングサービスを2023年4月から提供を開始したと発表。
同サービスは、ウェハ(※1)製造キャパシティの確保が困難な車載・産業機器・ファクトリーオートメーション向けをはじめとするパワー半導体を対象として、デバイスメーカーが保有するウェハ製造プロセスのポーティング(※2)と、ウェハ製造を凸版印刷が受託するものである。ウェハ製造プロセスは、JSファンダリとの協業契約に基づき、同社の新潟工場(新潟県小千谷市)内に構築される。
同サービスを利用することでデバイスメーカーは、自社の製造工場でパワー半導体の旺盛な量産需要に応えつつも、その煽りで出荷困難になりがちだった多品種小ロット品についての安定供給が可能となる。
まずは6インチウェハ(直径約150mm)プロセスのポーティングおよび製造代行からサービスを開始し、「エピタキシャル工程(※3)」「裏面工程」など、ウェハ製造に関わる部分的な加工のみにも対応する。そして、2024年度内には8インチウェハ(同約200mm)プロセスにも拡大させると同時に、凸版印刷の半導体設計子会社であるトッパン・テクニカル・デザインセンターによる、パワー半導体の設計から製造までを請け負うターンキーサービスの提供も開始する予定である。
■背景
パワー半導体は、高電力・高電圧の制御に使用される半導体素子で、自動車・太陽光発電・鉄道・エアコン・データセンターなど幅広い分野で使用されている。近年のデータセンターの建設ラッシュやEV(電気自動車)の普及により、パワー半導体の需要が増大する一方で、製造キャパシティの増強は限定的であるため、需要に対して供給が追い付かない状況が続いている。その結果として、産業機器やFAなど、少量多品種向けのパワー半導体の供給不足が深刻な問題となっている。
こうした課題に対し凸版印刷は、2022年12月に創業した日本初の独立系ファウンドリーであるJSファンダリと戦略的協業契約を締結。これまで凸版印刷が培ってきたロジック・アナログ半導体の回路設計やターンキー事業のノウハウを生かし、パワー半導体ウェハの受託製造ハンドリングサービスを開始する。これによって少量多品種の産業機器や車載、FA市場向けパワー半導体の安定供給を支援する。
■パワー半導体「受託製造ハンドリングサービス」の特長
・半導体ターンキー事業20年以上の実績
凸版印刷は2001年にLSIターンキーサービスに参入以来、ロジック系、メモリ系のデバイスメーカーに半導体OEMサービスを提供してきた。パワー半導体分野においても、生産管理、品質保証体制を構築し、パワー半導体の新たなサプライチェーンを創出する。
・生産キャパシティの確保
JSファンダリが保有する6インチウェハ製造ラインの優先的な使用について、両社は合意している。これによってデバイスメーカーは、自社ブランドのパワー半導体の生産キャパシティの追加確保が可能になる。2024年夏以降は、新設される8インチウェハラインも活用可能になる予定である。
・安定した供給体制
JSファンダリは、旧三洋電機グループのLSI生産拠点として設立以来、アナログ・パワー半導体の生産を35年以上継続しており、パワー半導体に適した製造設備を保有している。JSファンダリの製造技術力と凸版印刷の長年にわたる製造ハンドリングサービスの経験を掛け合わせることで、安定供給が可能となる。
■今後の目標
凸版印刷は、パワー半導体受託製造ハンドリングサービスを、まず6インチウェハ向け製造ラインの移植から開始し、その後8インチに拡大させるす。また、既存製品の製造プロセス移植だけでなく、デバイスメーカーのパワー半導体製品を企画・設計から製造まで受託するターンキーサービスまで拡大し、2027年度に関連受注を含め、30億円の売り上げを目指していく。
■JSファンダリについて
JSファンダリは、2022に発足した国内初の独立系ファンダリビジネス専業会社である。アナログ・パワー半導体の前処理、裏面処理、EPI積層、チップサイズパッケージなどの加工・製造に対応、多岐に亘るファンダリビジネスを手掛け、国内の半導体発展に貢献することを目的として事業を展開している。前身の旧三洋電機グループのLSI生産拠点として設立以来、長年に亘り培った技術をベースに、顧客と共に半導体を創り上げ、安心と満足を提供する事を経営方針としている。
※1 半導体の材料となる、単結晶シリコンの結晶でできた円形の薄い板
※2 別の生産ラインへの移植
※3 半導体製造プロセスの一部であり、シリコンウェハ上に非常に薄い層を成長させる技術
(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)