■あえて相場アノマリーの逆の「Buy in May」にトライ
5月相場の最大テーマといえば、米国の相場格言「Sell in May、and go away(5月に売り逃げろ)」ではないか?リスク回避のアノマリーである。ゴールデンウイーク中にダウ工業株30種平均(NYダウ)は、4日続落して970ドル超も下げたの目にすれば、投資家の多くが、そう覚悟しても不思議はない。一件落着とされた地域銀行の経営破綻による金融システム不安が、連休の谷間の5月1日に3行目の倒産として再燃し、FRB(米連邦準備制度理事会)が、市場予想通りに政策金利を0.25%引き上げ、これで期待通りに利上げ打ち止めとなるかは不確かとなったからだ。
ところがである。大型連休明けの東京市場ではやや方向感が変わる可能性が出てきた。前週末5日のNYダウが、一転して546ドル高と急反発し、4日間の下げ幅の56%超も戻して帰ってきたからだ。半値戻しであり、これは今度は相場アノマリーの「半値戻しは全値戻し」への期待感を刺激する。しかも急落していた地銀株が5割高、2割高と急反発し、なかには投資判断を引き上げられた地銀株も相次いだと伝えられた。週明けは、米国地銀株安にツレ安した邦銀株の今度はツレ高もあるかもしれない。今週は、10日に米国の4月の消費者物価指数発表の重要イベントが控えてはいるものの、そうなると大型連休をエンジョイし心身ともリラックスした投資家は、どうしたって「Sell in May」ではなく「Buy in May(5月に買い向かえ)」のリスクオンを試してみたくなるはずである。
今週の東京市場は、決算発表のピークとなる。週間で2100社超が決算発表を予定し、週末の12日は1100社超とラッシュになる。もし「Buy in May」にトライするなら当然、業績相場となるはずである。好決算銘柄、増配銘柄、自己株式取得銘柄などへの個別株物色を強めることになると想定される。
そこで参考にしたいのが、連休の谷間の5月1日に3月期決算を発表したイビデン<4062>(東証プライム)である。同社は、今2024年3月期の純利益を330億円(前期比36.8%減)の減益転換と予想し、市場コンセンサスを下回ったものの、前期純利益が、521億8700万円(前々期比26.6%増)と期中の下方修正値を大きく上ぶれて着地したことを評価して年初来高値を更新した。しかも、これには前段のストーリーがあった。4月28日に経済産業省が、経済安全保障推進法に基づき、同社の半導体搭載基板の生産能力増強計画を認定し助成金の交付決定を発表したことである。株価は、4月28日、5月1日と続伸して520円高、そこに2日の業績評価分が上乗せしわずか3営業日間で1160円高した。
■業績評価に政策人気がオンの電鉄株に順張り
今週の当特集では、このイビデン型の個別業績相場を展開可能性のあるセグメントとして電鉄株に注目することにした。大型連休中もテレビ、新聞では再三再四、帰省・Uターンラッシュや行楽地での賑わいが報道されていた。きょう8日に新型コロナウイルス感染症の感染法上の位置付けが、5類に引き下げられてこのリオープン(経済活動再開)に拍車掛かり、鉄道事業の輸送人員がさらに回復するうえに、インバウンド関連需要や一部電鉄株では新線開業効果も加わるなど事業環境はフォローとなっており、そこに政策支援としては鉄道駅バリアフリー料金制度による運賃値上げがオンするのである。
すでに大型連休前に3月期決算を発表した電鉄株は、前期業績が期中の上方修正値を上ぶれて黒字転換・V字回復して着地し今期業績も続伸を見込み、年初来高値を更新する銘柄が目立っている。今週に決算発表を予定している後続組を含めて「Buy in May」の順張りにチャレンジし上値追いを期待したい。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)