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アルコニックスはモミ合い上放れの動き、24年3月期収益拡大期待
- 2023/5/9 09:18
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アルコニックス<3036>(東証プライム)は非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社で、非鉄金属素材・部品・製品の生産から卸売りまで、全てをONE‐STOPで供給する非鉄金属業界の総合ソリューションプロバイダーを目指している。23年3月期は減益予想としている。原材料供給不足による生産・出荷の一時的な落ち込みなど事業環境の不透明感を考慮している。ただし積極的な事業展開で24年3月期の収益拡大を期待したい。株価は小幅レンジでモミ合う形だが、徐々に水準を切り上げてモミ合い上放れの動きを強めている。高配当利回りや低PBRなど指標面の割安感も評価して戻りを試す展開を期待したい。なお5月12日に23年3月期決算発表を、5月26日に中期経営計画(1年ごとに見直すローリング方式)発表を、それぞれ予定している。
■商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」
非鉄金属、電子材料、金属加工部品などを取り扱う商社である。さらに商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、M&Aも積極活用して、非鉄金属の周辺分野も含めた川上(製造)~川中(流通)~川下(問屋)を網羅するビジネス展開を推進している。
18年12月に摩擦調整材カシューパーティクル製造販売の東北化工を子会社化、19年2月にカーボンブラシ製造販売の富士カーボン製造所を子会社化、19年7月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社の自動車部品用精密金属プレス部品事業を譲り受け、19年10月に香港でリチウムイオン電池材料事業の合弁会社を設立、19年11月に中国で建設用仮設資材の輸入・製造・販売の合弁会社を設立した。
20年3月に子会社の平和金属を完全子会社化、20年8月に子会社のアドバンストマテリアルジャパン(AMJ社)がタングステン化合物メーカーの台湾・Lianyou Metals社に出資、20年12月に空調機器向け配管部品製造販売の富士根産業を子会社化、21年3月にメキシコFUJI ALCONIXがメキシコFNA社から工場用地・建物を取得した。
22年4月には精密コネクタ金属端子部品プレス加工のジュピター工業を子会社化した。また、商社流通セグメントに所属する国内関係子会社(平和金属、林金属、アルコニックス・三高、アルミ銅センター)の財務・経理・総務・労務等の管理業務を集約して行うシェアードサービスの子会社ACメタルズを設立した。22年7月には各種レーザー機器・装置の製造・販売を手掛ける金門光波を子会社化した。
22年11月には金属加工メーカーでリチウムイオン電池用機構部品の製造に強みを持つソーデナガノを子会社化した。EV用バッテリー向けの需要拡大が期待されるほか、グループ内のプレス専業子会社と「総合プレス加工グループ」を形成して多種多様な顧客ニーズに対応する戦略だ。また22年11月にはDKSHマーケットエクスパンションサービスジャパンの金属製品部の事業(チタン展伸材の欧州向け輸出など)の全てを取得した。
なお21年12月には、投資事業(アルコニックスグローバルイノベーション投資事業有限責任組合、21年8月設立の子会社アルコニックスベンチャーズが運用)を開始した。先端材料・高成長事業および素材・モノづくりに関連のあるベンチャー企業または事業を投資先として成長支援し、投資先が生み出すアイデアや技術を取り込んで新規事業開拓と更なる業容拡大を目指す方針だ。
■製造も収益柱に成長
報告セグメント区分は、商社流通の電子機能材事業(化合物半導体、電子材料、チタン製品、ニッケル製品、レアメタルなど)、商社流通のアルミ銅事業(アルミニウム製品、伸銅品、非鉄スクラップ、各種配管機材など)、製造の装置材料事業(非破壊検査装置、マーキング装置、カシュー樹脂、カーボンブラシなど)、製造の金属加工事業(精密機構部品、精密研削加工部品、精密金属プレス部品、金属加工部品など)としている。
22年3月期のセグメント別売上高構成比は商社流通60%(電子機能材22%、アルミ銅38%)で製造40%(装置材料22%、金属加工17%)だが、経常利益構成比は商社流通57%(電子機能材39%、アルミ銅18%)で製造43%(装置材料11%、金属加工31%)だった。レアメタル・レアアースの取り扱いが特徴とされているが、M&Aも積極活用して「非鉄金属の総合企業」を目指す成長戦略により、製造(特に金属加工)も収益柱に成長している。
■高水準の投資を継続
中期経営計画(23年3月期~25年3月期、1年ごとに見直すローリング方式)では、25年3月期の目標値に売上高2100億円、営業利益131億円超、経常利益130億円超、当期純利益100億円超、EBITDA175億円超、ROE(株主資本利益率)15%超、ROIC(投下資本利益率)7%以上、DOE(株主資本配当率)3.0%以上を掲げた。セグメント別経常利益は、商社流通が52億円(電子材料37億円、アルミ銅15億円)で製造が78億円(装置材料24億円、金属加工54億円)としている。製造が全体の60%を占める計画だ。
商社機能と製造業を融合する「非鉄金属の総合企業」を目指し、財務体質の強化、人的資源の強化、ガバナンスの強化、ESG・SDGsへの取り組み強化を推進し、高水準の投資も継続する方針だ。
なお23年2月には、非鉄リサイクル事業を展開するグループ会社の移転および拡充を目的として土地取得(北九州市若松区)を発表した。本件土地取得を契機にグループを横断した総合リサイクルセンターを建設し、環境配慮型企業グループの実現を目指すとしている。
■23年3月期減益予想だが24年3月期収益拡大期待
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比8.8%増の1700億円、営業利益が17.4%減の91億円、経常利益が18.3%減の90億円、親会社株主帰属当期純利益が9.4%減の68億円としている。配当予想は22年3月期と同額の52円(第2四半期末26円、期末26円)としている。
第3四半期累計は売上高が前年同期比18.9%増の1357億12百万円、営業利益が13.9%減の72億55百万円、経常利益が13.1%減の76億50百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が22.1%減の50億92百万円だった。
売上面は一部商材の取扱数量増加、非鉄市況の上昇、自動車関連の新規案件などで増収だったが、利益面は円安による調達コストの上昇、新規連結した子会社の損益取込に伴う販管費の増加などで減益だった。営業外収益では為替差益が増加(前年同期は65百万円、今期は3億24百万円)した。特別利益では投資有価証券売却益が減少(前年同期は2億74百万円、今期は87百万円)したが、負ののれん発生益3億46百万円を計上した。特別損失ではのれん償却額1億70百万円を計上した。
セグメント別利益(経常利益)は、商社流通の電子機能材が市況および為替要因による取扱数量増加で6.0%増の33億74百万円、商社流通のアルミ銅が調達コストの上昇で20.2%減の13億01百万円、製造の装置材料が自動車関連材料や検査・試験装置の出荷減少で10.3%減の11億06百万円、製造の金属加工が自動車関連や半導体実装装置向け部品の出荷減少で31.6%減の18億83百万円だった。
商社流通の電子機能材は、スマホ関連需要減速の影響で二次電池材料の取扱数量が減少したが、電子部品・半導体材料向けのニッケル製品が堅調に推移した。レアメタル・レアアースは、自動車生産調整の影響で取扱数量が伸び悩んだが、市況上昇効果で売上高・利益とも増加した。
商社流通のアルミ銅は、製品分野においては堅調な国内建設需要を背景にアルミ圧延品や伸銅品の取扱数量が増加したが、IT関連事業の減速で電子部品向け伸銅品の取扱数量が減少した。原料分野においては自動車生産調整の影響で銅・アルミスクラップおよびアルミ再生塊の取扱数量が減少したが、非鉄市況の上昇や円安の影響でアルミ再生塊の取扱数量が増加した。
製造の装置材料は、米国および中国の両拠点でめっき材料の需要が拡大したが、装置分野において、自動車を中心とする部品調達不足に伴う顧客の操業度低下の影響により、非破壊検査およびマーキング双方の装置需要が落ち込んだ。
製造の金属加工は、金属精密加工部品が堅調だったが、半導体実装装置向け精密切削加工部品がスマホ需要減速の影響で低調となり、精密金属プレス部品も自動車生産調整の影響で減少した。
四半期別に見ると、第1四半期は売上高が468億37百万円、営業利益が39億31百万円、経常利益が42億51百万円、第2四半期は売上高が453億77百万円、営業利益が17億51百万円、経常利益が18億54百万円、第3四半期は売上高が434億98百万円、営業利益が15億73百万円、経常利益が15億45百万円だった。
通期連結業績予想は据え置いている。コロナ禍や地政学リスクに起因する物流の混乱、原材料の供給不足などによる生産・出荷の一時的な落ち込みなど、事業環境の不透明感を考慮して期初時点で減益予想としている。セグメント別利益(経常利益)の計画は組み替えて、商社流通の電子機能材が10.1%減の38億40百万円(前回予想は28億円)、商社流通のアルミ銅が29.1%減の14億40百万円(同12億円)、製造の装置材料が6.8%減の11億60百万円(同12億円)、製造の金属加工が25.8%減の25億60百万円(同38億円)としている。前回予想に比べて商社流通分野を上方修正、製造分野を下方修正した形となる。
第3四半期累計の進捗率は売上高が79.8%、営業利益が79.7%、経常利益が85.0%、親会社株主に帰属する当期純利益が74.9%と順調だった。積極的な事業展開で24年3月期の収益拡大を期待したい。
■株主優待制度は3月末の株主対象
株主優待制度は、毎年3月末時点の株主を対象として、保有株式数および保有期間に応じて優待商品を贈呈(詳細は会社HP参照)する。なお3月30日には株主優待制度の優待内容をリリースしている。
■株価はモミ合い上放れの動き
株価は小幅レンジでモミ合う形だが、徐々に水準を切り上げてモミ合い上放れの動きを強めている。高配当利回りや低PBRなど指標面の割安感も評価して戻りを試す展開を期待したい。5月8日の終値は1404円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS225円87銭で算出)は約6倍、前期推定配当利回り(会社予想の52円で算出)は約3.7%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1889円53銭で算出)は約0.7倍、そして時価総額は約435億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)