【編集長の視点】GDP成長率が往って来いならデフレ関連株のサバイバル相場に「いつか来た道」の道筋=浅妻昭治
- 2015/8/24 09:44
- 編集長の視点
ふと童謡を口ずさんでいた。「この道はいつか来た道」と歌い出すあの北原白秋作詞、山田耕作作曲の『この道』である。今年8月17日に発表された4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値をみた時に思わず知れず触発されたのである。実質GDP成長率が、前期比0.4%減(年率1.6%減)と3四半期ぶりにマイナスとなり、個人消費支出も、4四半期ぶりに0.8%減と落ち込んだ。その個人消費のマイナス転換の要因として、所得環境がなお厳しいなかで4月以降、食料品などの生活必需品の値上げが相次ぎ、消費者の間で節約志向が高まってきたと分析されていたからだ。
この「節約志向」というキーワードが、「生活防衛意識」、「低価格志向」「二極化現象」、「勝ち組・負け組」、「質への逃避」などの同義語を次々と連想させ、連想の先に何だか見覚えのある「この道」が浮かび上がったのである。「いつか来た道」とは、デフレ経済への下り坂であり、その先のあの思い出したくもないバブル経済崩壊後の「失われた20年」に行き付き、気分ははなはだよろしくない。
2012年11月からの「アベノミクス」による経済の好循環、2013年4月以降の「クロダノミクス」によるインフレ・マインドの醸成は、以来2年有余、2回り以上したものの、消費者レベルでの景気回復を実感させるにはまだ遠く、デフレ・マインドの払拭にも効果を現わさず、「いつか来た道」の既視感を強めたのである。「アベノミクス」に関しては、安倍内閣の支持率が、安全保障関連法案への批判の高まりで不支持率を下回り、往って来い以上の落ち込みとなった。政府は、4~6月期のGDPの落ち込みは一時的で、7~9月期には回復するとの公式見解を明らかにした。とくに個人消費では、7月以降のプレミアム商品券の売れ行き好調、夏の猛暑特需、さらに9月の大型連休効果などに期待をかけているようである。
しかしである。ここに世界連鎖株安が、追い討ち材料になった。中国の人民元の実質切り下げが震源地となって、中国景気の減速への懸念が強まり、株安が地球を2回り、前週末21日には米国のニューヨーク・ダウ工業株平均が、530ドル安と続暴落、これが世界同時株安の3回り目のスタートとなるのか、2回り目のダメ押しとなるのか、いずれにしる一段と警戒感を強めている。リスク回避姿勢は強まり、消費者のサイフのヒモはさらに固くなる可能性は無視できない。
もちろん、こと株式投資にとっては「政策に敵なし」である。世界の投資マネーが、逆スパイラル的にリスク回避に一辺倒になっているなかで、各国政府が打ち出す打開策次第では、売り方の買い戻しとともに暴落相場が暴騰相場に一変するマーケットの特性が発揮されることも想定される。そのキッカケが、ウワサされる中国の経済対策の発動か、再び直接市場に手を突っ込む株価対策なのか、もっと身近に安全保障関連法案が60日ルールで実質可決・成立する9月14日なのか、安倍晋三首相が、9月末の自民党総裁選挙で無投票再燃されるときなのか、それとも9月16日~17日開催のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)の結果次第なのかさまざまなケースが想定される。
そのケースでは、下げた株ほど良く戻すとする主力株の「リターン・リバーサル」買いが、最も回転の効く効率的な投資スタンスになるはずだ。問題は、その僥倖に恵まれるまでの対処方法である。童謡の歌詞通りに「この道はいつか来た道」とすれば、デフレ関連株、節約志向関連株、低価格志向関連株の「サバイバル相場」へのアプローチに一考余地が生まれてくる。このデフレ関連株は、内需関連株の一角に位置し、PER評価的に割高であることが玉にキズだが、取捨選択、精査して投資銘柄を選択、僥倖に恵まれるまで待ちたい。(本紙編集長・浅妻昭治)