【アナリスト水田雅展の銘柄分析】平山は16年6月期増収増益基調、ファンダメンタルズ面を見直して反発

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

平山<7781>(JQS)は国内製造業向けアウトソーシング事業(製造請負)を主力としている。7月10日のIPOから1ヶ月強が経過した。株価は地合い悪化も影響して調整局面だが売られ過ぎ感を強めている。16年6月期増収増益基調であり、円安や中国リスクを背景とした製造業の国内回帰も追い風となる。IPO後の目先的な売りが一巡し、ファンダメンタルズ面を見直して反発のタイミングだろう。

■国内製造業向けアウトソーシング事業(製造請負)が主力

1955年創業、1967年設立で、2015年7月JASDAQに新規上場した。国内製造業向けのアウトソーシング事業(製造請負)を主力として、技術者派遣事業(連結子会社トップエンジニアリング)、その他事業(現場改善コンサルティングサービス、教育サービス、有料職業紹介など)も展開している。製造請負事業者改善推進協議会が運営している製造請負優良適正事業者認定制度を第1号で取得した。

「設備と敷地を持たない製造業」を標榜し、「人に付いた技術で日本のもの造りを支援する」をコンセプトとしている。アウトソーシング事業においては、当社に所属する現場改善コンサルタントと連携したサービス提供して、顧客企業の製造現場における生産性向上、コスト削減、さらに「ものづくり力」強化に繋げていることが強みだ。

さらなる請負現場「ものづくり力」の高度化のために、中核になる生産管理者の育成を強化するとともに、製造企業OBシニア層の技術を再開発し、製造現場の改善をワンストップで提案できる体制を構築することに経営資源を最優先で投資している。

また従来の派遣・請負会社のイメージを脱却し、社内で育成した人材を社会に還元する「教育会社」を目指している。そして社員に対しては、キャリアカウンセリングやメンタル支援などの従業員支援制度(EAP=Employee Assistance Program)をベースとして、資格・技能取得支援制度によるキャリアアップ制度を運用し、有期雇用から無期雇用へと転換するステップを用意している。

■長期的に売上高営業利益率8%を目指す

主要取引先は、テルモ<4543>(15年6月期売上構成比47.1%)向けを主力として、LIXILグループ、TOPPANグループ、TOTOグループ、トヨタグループ、リコーグループ、三菱グループなどがある。

多種多様な業種・工程での実績を持ち、業界を超えた製造技術・ノウハウを蓄積していることも強みだ。そして国内に残る業種・商品分野に注力し、大手優良企業グループと強固な取引関係を構築している。

海外はベトナムとタイに現地法人を設置し、日本国内のエンジニア不足に対応した外国人技術者の採用、および東南アジア諸国の日系企業との取引拡大を推進している。今後はM&Aも積極活用する方針だ。

経営目標としてはグループ売上高200億円の早期達成を目指し、売上高営業利益率を中期的に5%、長期的に8%に向上させる方針だ。重点戦略としては、主力の国内製造業向けアウトソーシング事業における既存取引先の事業所拡大、既存製造派遣取引先のインソーシング(製造請負)化、自社管理業務および既存インソーシング契約取引先業務の改善、販管費の増加抑制などを推進する方針だ。

■16年6月期増収増益基調

8月13日に発表した前期(15年3月期)の連結業績は、売上高が前々期比9.0%増の89億95百万円、営業利益が同18.5%増の3億78百万円、経常利益が同16.8%増の3億80百万円、純利益が同6.3%増の1億93百万円だった。

主力のテルモ向けを中心にアウトソーシング事業が好調に推移して増収となり、業務拡大に向けた人員増加に伴う労務費の増加や採用コストの増加、内部統制推進のための業務委託費用の増加などを吸収して2桁営業増益、2桁経常増益だった。売上総利益率は同0.3ポイント上昇して17.4%となった。販管費比率は同横ばいの13.2%だった。純利益については投資有価証券評価損や関係会社出資金評価損などの計上が影響して1桁の伸びだった。

セグメント別には、アウトソーシング事業の売上高が同9.6%増の79億33百万円、営業利益(全社費用等調整前)が同12.6%増の9億43百万円、技術者派遣事業の売上高が同4.4%増の9億14百万円、営業利益が同15.1%増の54百万円、その他事業の売上高が同7.0%増の1億46百万円、営業利益が同10.2%減の36百万円だった。

配当予想は年間35円22銭(期末一括)で配当性向は24.9%となる。15年2月の株式200分割を考慮して前々期の年間6556円(期末一括)を年間32円78円に換算すると実質的に2円44銭増配だ。また15年6月期のROEは14年6月期比1.2ポイント低下して14.0%、自己資本比率は同5.2ポイント上昇して36.8%となった。

今期(16年6月期)の連結業績予想(8月13日公表)は、売上高が前期比11.4%増の100億17百万円、営業利益が同13.6%増の4億30百万円、経常利益が同13.6%増の4億32百万円、純利益が同30.9%増の2億53百万円としている。

引き続き主力のアウトソーシング事業が好調に推移し、労務費の増加や採用コストの増加を吸収して増収増益基調だ。売上総利益率は同0.5ポイント上昇の17.9%、販管費比率は同0.4ポイント上昇の13.6%の計画としている。純利益については投資有価証券評価損や関係会社出資金評価損などの一巡も寄与する。

セグメント別の売上高については、アウトソーシング事業が同11.9%増の88億75百万円、技術者派遣事業が同3.9%増の9億50百万円、その他事業が同30.6%増の1億92百万円の計画としている。アウトソーシング事業では既存取引先の生産計画等を検討した結果、主要取引先で同約5%増収、その他の既存取引先で同約14%増収を想定し、新規取引先(主に製造派遣)の開拓も寄与する。

配当予想については同2円12銭増配の年間37円34銭(期末一括)としている。予想配当性向は25.0%となる。なお利益配分については、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当の継続という観点から配当性向25%を基本としている。

■株価はIPO後の目先的な売りが一巡して反発のタイミング

株価の動き(公開価格2130円、初値7月10日2758円)を見ると、IPO直後の高値2783円から反落して調整局面だ。8月13日発表の16年6月期増収増益予想にもネガティブ反応だった。そして8月21日には全般地合い悪化も影響して上場来安値となる1890円まで下落した。

8月21日の終値1899円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS149円97銭で算出)は12~13倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間37円34銭で算出)は2.0%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1089円89銭で算出)は1.7倍近辺である。

7月10日のIPOから1ヶ月強が経過して落ち着きどころを探る時期とも言えるが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が14%程度まで拡大して売られ過ぎ感を強めている。16年6月期増収増益基調であり指標面に割高感はない。IPO後の目先的な売りが一巡し、ファンダメンタルズ面を見直して反発のタイミングだろう。

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