【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ラクーンは急伸後の自律調整一巡、8月27日に第1四半期業績発表予定

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ラクーン<3031>(東マ)はアパレル・雑貨分野の企業間電子商取引サイト運営を主力として事業領域拡大戦略を加速している。株価は株式3分割も好感した7月の年初来高値599円から利益確定売りで一旦反落した。ただし中期成長力を評価する流れに変化はなく急伸後の自律調整の範囲だ。16年4月期増収増益基調であり、自律調整が一巡して7月高値を目指す展開だろう。なお8月27日に第1四半期(5月~7月)の業績発表を予定している。

■アパレル・雑貨分野の企業間ECサイト「スーパーデリバリー」運営が主力

 アパレル・雑貨分野の企業間(BtoB)電子商取引(EC)サイト「スーパーデリバリー」運営を主力として、クラウド受発注ツールのCOREC(コレック)事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービスのPaid(ペイド)事業、売掛債権保証事業など周辺分野にも事業領域を広げている。

 なお15年4月期から事業セグメント区分を、スーパーデリバリーとCORECのEC事業、およびPaid事業、売掛債権保証事業の3区分とした。

 15年4月期末のスーパーデリバリー経営指標は、会員小売店数が14年4月末比3929店舗増加の4万4370店舗、出展企業数が同117社増加の1065社、商材掲載数が同3234点増加の45万6349点だった。14年12月にはアパレル大手のワールド、15年5月には多数の有名スポーツブランドアイテムを扱うゼットが出展した。

 15年3月にはPaid加盟企業数が1200社を突破した。当初はアパレルや雑貨の卸メーカーが中心だったが、サービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスに導入できるようになり、グラフィックが運営する「印刷の通販グラフィック」(15年1月現在で27万件の法人・個人会員登録)、GMOコマースが運営するO2O事業、三菱自動車工業の「三菱自動車 電動車両サポート」にも導入された。

 15年6月にはスーパーデリバリーにおける越境ECサービス(海外販売)の詳細を発表した。商品を販売するメーカー側の配送業務を簡潔にするため、ディーエムエス(DMS)の物流代行サービスを利用し、日本最大級の輸出販売サービス「SD export」として、8月25日(予定)からサービス開始する。約134ヶ国以上の小売店・企業への卸販売が可能となる。

■M&A・アライアンスも積極活用

 M&Aやアライアンスも積極活用している。14年10月にSquare社と業務提携し、スーパーデリバリーおよびCORECと、POSレジアプリ「Squareレジ」がシステム連携した。

 14年11月には子会社トラスト&グロースがスタンドファームと業務提携した。スタンドファームのクラウド請求書管理サービス「Misoca」登録業者に対して売掛保証サービスを提供する。

 14年12月にはトラスト&グロースがトラボックスと業務提携した。荷物を運んで欲しい人とトラック運送業者を結ぶオンライン物流サービス「トラボックス」登録会員に対して運賃全額保証サービスを提供する。

 15年6月にはロックオンと業務提携した。ロックオンのECオープンプラットフォーム「EC-CUBE」のユーザー向け決済ツールとして、Paidが標準搭載される。

 15年7月にはトラスト&グロースが信用交換所大阪本社に対して、同社と商品設計した同社会員向け専用の売掛保証サービス「シンコー保証」の提供を開始した。これによってクライアント増加による保証残高の拡大、および売上高の増加を狙うとしている。

■クラウド受発注ツール「COREC」のユーザー数が急増

 15年4月にはクラウド受発注ツール「COREC」が「Yahoo!ショッピング」と連携した。発注にかかる作業時間や手間が大きく改善されるため「Yahoo!ショッピング」出店者のショップ運営業務が効率化される。またCOREC利用頻度向上にも繫がるとしている。

 15年4月には「COREC」ユーザー数が2000社(バイヤー1191社、サプライヤー809社)を突破した。会員ユーザーの業種別構成比は雑貨20%、アパレル13%、飲食料14%、IT12%、建築・設備3%、その他38%だった。

 また15年7月にはCORECユーザー数が3000社(バイヤー1836社、サプライヤー1164社)を突破した。2000社突破から4ヶ月弱での達成だ。アパレル企業(サプライヤー)による取引先(バイヤー)の積極的な誘致で、数十店規模でチェーン展開している企業のチェーン全店舗が登録する事例や、農園(サプライヤー)による取引先(バイヤー)の誘致で、レストランが数十店舗まとめてユーザー登録する事例もあるようだ。

■16年4月期も増収増益基調

 企業間ECサイト・スーパーデリバリー流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店がスーパーデリバリーを通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、15年4月期から商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によってスーパーデリバリー流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となっている。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。

 なお15年4月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)4億90百万円、第2四半期(8月~10月)5億06百万円、第3四半期(11月~1月)5億22百万円、第4四半期(2月~4月)5億38百万円で、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期93百万円、第3四半期1億04百万円、第4四半期82百万円だった。

 また配当性向は19.7%だった。ROEは14年4月期比4.5ポイント上昇して13.1%、自己資本比率は同12.2ポイント低下して35.6%となった。

 今期(16年4月期)の連結業績予想(6月10日公表)は、売上高が前期比10.4%増の22億70百万円、営業利益が同23.5%増の4億15百万円、経常利益が同25.4%増の4億10百万円、純利益が同29.4%増の2億60百万円としている。配当予想は未定としている。

 売上面では新規出展企業の獲得などでスーパーデリバリー流通額が順調に拡大する。そして海外取引サービス「SD export」を開始して一段の規模拡大に取り組む。スーパーデリバリー運営におけるコスト構造見直しも進める。またCORECの収益寄与本格化、Paid事業と売掛債権保証事業の一段の収益改善も期待される。ストック型の収益構造であり、中期的にも収益拡大基調だろう。

■株価は急伸後の自律調整一巡

 株価の動き(15年8月1日付で株式3分割)を見ると、株式分割も好感して急伸した7月の年初来高値599円から利益確定売りで一旦反落した。ただし急伸後の自律調整の範囲だろう。

 8月21日の終値451円を指標面(株式3分割後)で見ると、今期予想連結PER(会社予想に株式3分割を考慮した連結EPS15円24銭で算出)は29~30倍近辺、前期実績連結PBR(前期実績に株式3分割を考慮した連結BPS90円29銭で算出)は5.0倍近辺である。

 週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して過熱感が解消した。16年4月期も増収増益基調である。中期成長力を評価する流れに変化はなく、急伸後の自律調整が一巡して7月高値を目指す展開だろう。

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