インテージホールディングスは上値試す、23年6月期3Q累計利益高進捗率で通期は上振れ余地

インテージホールディングス<4326>(東証プライム)は市場調査事業を主力としてシステムソリューション分野や医薬情報分野にも展開し、さらなる成長と企業価値向上に向けて脱リサーチへの事業拡張など戦略投資を加速させている。23年6月期第3四半期累計は売上高が小幅増収にとどまり、人員増強などの先行投資も影響して減益だった。そして通期の営業・経常利益横ばい予想(親会社株主帰属当期純利益は繰延税金資産を計上して2桁増益予想)を据え置いた。ただし第3四半期累計の利益進捗率が高水準であり、通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。さらに積極的な事業展開で24年6月期も収益拡大基調だろう。株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。23年6月期第3四半期累計業績に対しても利益高進捗率を好感する動きとなった。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。

■国内首位の市場調査が主力

子会社インテージのSCI(全国個人消費者パネル調査)やi-SSP(インテージシングルソースパネル)など、国内首位・世界10位(GRBN 2018 Global Top25 Report)の市場調査事業を主力として、システムソリューション分野や医薬情報分野にも展開している。

セグメント区分は消費財・サービス分野のマーケティング支援、ヘルスケア分野のマーケティング支援、ITソリューション分野のビジネスインテリジェンスとしている。22年6月期のセグメント別構成比は売上高が消費財・サービス分野のマーケティング支援64%、ヘルスケア分野のマーケティング支援24%、ビジネスインテリジェンス12%、営業利益が消費財・サービス分野のマーケティング支援49%、ヘルスケア分野のマーケティング支援47%、ビジネスインテリジェンス3%だった。

消費財・サービス分野のマーケティング支援では、データサービスやカスタムリサーチなどを展開している。独自収集した各種パネル調査やカスタムリサーチから得られたデータを基に、高度なリサーチ技術やデータ解析力を駆使して、消費財メーカーを中心に企業のマーケティング活動をトータルサポートしている。主な事業会社はインテージ、インテージリサーチ、海外子会社、21年5月に子会社化したリサーチ・アンド・イノベーション(RNI)などである。

21年8月にはインテージ・ベトナムがベトナム国家大学ハノイ校日越大学(ハノイ)と産学連携の基本協定を締結した。21年10月にはアジア地域で展開する海外インターネット調査パネル「Asian Panel」が、新たな対象エリアとしてインドを追加し、11の国・地域を対象としてモニター数が1100万人を突破して業界最大級になった。21年11月には、子会社インテージとインティメート・マージャー<7072>の業務提携(21年10月)を強固にすることを目的として、インティメート・マージャーと資本提携した。

ヘルスケア分野のマーケティング支援では、一般用医薬品・医療用医薬品の市場調査、製薬企業からの委託によるデータマネジメント・解析業務、医薬品開発をサポートするCRO業務などを展開している。事業会社はインテージヘルスケアの直下に協和企画、インテージリアルワールド(医療情報総合研究所が21年7月1日付で社名変更)、プラメド、Plamed Koreaの4社を置く体制としている。

22年8月にはインテージヘルスケアと岡山大学が悪性腫瘍をはじめとする難治性疾患治療薬開発プロジェクトとして、AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet(ディープカルテット)」を活用した新薬開発の共同研究を開始した。22年12月にはインテージヘルスケアがAI創薬アカデミックプログラム(IAAP)を開始した。AI創薬プラットフォーム「Deep Quartet」などの新規化合物を得るサービスを活用し、アカデミアとの共同研究プログラムを開始する。

23年2月にはインテージヘルスケアと広島大学がAI創薬によるペプチド擬態化合物の共同研究を開始、インテージヘルスケアと名古屋大学がAI創薬による胃酸抑制剤の共同開発を開始した。

ビジネスインテリジェンスでは、ソフトウェア開発やシステム構築・運用などを展開している。事業会社はインテージテクノスフィア、ビルドシステム、エヌ・エス・ケイなどである。

22年12月にはインテージテクノスフィアが、クラウド型健康管理システム「すこやかサポート21」の豊富な機能の中から利用頻度の高い機能だけを厳選したライトプラン「すこやかサポート21 Light」の提供を開始した。23年2月にはインテージテクノスフィアが、APAC(アジア太平洋地域)で発行されているITビジネス誌APAC CIO Outlookにおいて、Top10 BI and Analytics Solution Providers in APAC2022賞を受賞した。

なお海外事業に関して23年1月に連結子会社CSG香港の株式譲渡および特別目的会社IAHの清算を発表した。第3四半期連結決算にCSG香港株式売却益30百万円(利益にプラス)、CSG香港向け貸付金に関する貸倒引当金繰入2億80百万円(利益にマイナス)、さらにIAHに対する投資に係る将来減算一時差異について繰延税金資産を計上し、同額の法人税等調整額6億80百万円(利益にプラス)を計上予定である。市場環境の変化に対応して、アジアにおける事業展開の役割を本社へ移管するとともに、中国市場への事業展開は英徳知市場諮詢(上海)有限公司を中心に推進する方針に変更した。

■次世代SRIサービス「SRI+」を核に総合力向上

第13次中期経営計画では目標値に23年6月期売上高625億円、営業利益50億円、営業利益率8.0%を掲げている。目指すべき姿を「データを核として、顧客ビジネス課題解決や意思決定に深く関与・伴走し、ビジネス創造と変革に寄与できる存在」として、次世代成長ドライバー確立などグループ間の連携による対応領域の創造と拡張を推進している。またデジタル環境の変化に対応するため、積極的な戦略投資やM&Aも継続して実施する方針だ。

資本政策については、資本効率を重視し、最終利益を全額、成長投資と株主還元に振り向ける方針としている。配当は連結配当性向40%、DOE(自己資本配当率)4.5%以上を目標としている。自己株式取得も機動的に対応する。

消費財・サービス分野のマーケティング支援では、次世代SRI(全国小売店パネル調査)サービスの「SRI+」(ECデータ含む)を21年1月にリリースした。今後は「SRI+」を核としてソリューションおよびパートナー連携による総合力向上を図り、収益拡大につなげる方針だ。また定量的な行動観察を可能にした動画解析プラットフォーム「Label Note(仮)」のリリースに向けて準備中である。さらに子会社リサーチ・アンド・イノベーション(RNI)が持つ特許を活用し、CXマーケティングプラットフォーム(仮称、CXMPF)の開発を推進する。

SBIインベストメントと共同設立のINTAGE Open Innovation Fundは、パーソナルAI「al+」開発のオルツ、WEBリサーチのリサーチ・アンド・イノベーション、IoTデータ流通プラットフォームの米EverySense、訪日外国人向けショッピングサポートアプリ「Payke」のPaykeなどに投資している。IPO実績としてはAI CROSS<4476>、QDレーザ<6613>、メンタルヘルステクノロジーズ<9218>がある。なお23年1月現在の投資実績は26社、合計約26.5億円となっている。

また、ESG経営・SDGsへの取り組みの一例として、日本赤十字社の「ACTION!防災・減災プロジェクト」に参画している。23年3月にはインテージグループが日本赤十字社の「ACTION!防災・減災」プロジェクトをサポートしていると発表した。また、経済産業省と日本健康会議が主催する健康経営優良法人認定制度において「健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)」に認定された。

■23年6月期3Q累計減益だが利益高進捗率で通期上振れ余地

23年6月期連結業績予想(23年2月7日付で売上高と営業・経常利益を下方修正、親会社株主帰属当期純利益は繰延税金資産を計上するため据え置き)は、売上高が22年6月期比5.1%増の633億円、営業利益が0.0%増の46億50百万円、経常利益が1.0%増の50億円、親会社株主帰属当期純利益が17.0%増の40億円としている。配当予想は22年6月期比4円増配の42円(期末一括)としている。連続増配予想である。

第3四半期累計は売上高が前年同期比1.8%増の478億89百万円、営業利益が19.6%減の40億46百万円、経常利益が19.5%減の42億25百万円、親会社株主帰属四半期純利益が1.9%減の37億67百万円だった。

一部顧客の予算引き締めの影響などで全体として売上高が小幅増収にとどまり、人員増強などの先行投資も影響して減益だった。営業利益9億84百万円減益の要因分析は、増収効果+8億68百万円、変動費▲1億34百万円、人件費▲10億円、経費▲5億05百万円、投資▲2億14百万円だったとしている。

マーケティング支援(消費財・サービス)事業は、売上高が3.8%増の314億13百万円、営業利益が30.2%減の18億86百万円だった。売上高の内訳はパネル調査が2%増収、カスタムリサーチWebが1%増収、カスタムリサーチWeb以外が2%増収、コミュニケーション分野が3%減収、海外が23%増収、その他が2%増収だった。売上面は全体として増収だが、消費財メーカーを中心とした予算圧縮の影響を受けて計画を下回り、小幅増収にとどまった。利益面は、主力製品の売上が計画を下回ったことに加えて、新SCIを中心とした投資が拡大したことも影響して減益だった。

マーケティング支援(ヘルスケア)事業は、売上高が3.7%減の109億55百万円、営業利益が18.7%減の16億39百万円だった。減収減益だった。CRO(医薬品開発業務受託機関)は構造改革効果で収益改善したが、主力のインテージヘルスケアのリサーチ事業が前期の体制変更の影響で減収だった。協和企画のプロモーション事業・エデュケーション事業も新薬上市案件減少の影響などで低調だった。

ビジネスインテリジェンス事業は、売上高が2.5%増の55億19百万円、営業利益が67.0%増の5億19百万円だった。売上面はコロナ禍の影響を受けていた旅行業界を中心に既存業界向けソリューションが回復傾向となり、利益面は原価低減や経費削減も寄与して大幅増益だった。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が141億19百万円で営業利益が5億73百万円、第2四半期は売上高が158億41百万円で営業利益が14億03百万円、第3四半期は売上高が179億29百万円で営業利益が20億70百万円だった。

通期連結業績予想は据え置いている。売上面は増収だが、営業利益と経常利益は売上構成変化に加えて、人件費や開発費の増加など先行投資も影響する見込みだ。親会社株主帰属当期純利益については、香港の事業会社の株式譲渡、およびこれに伴う特別目的会社の清算による繰延税金資産を計上するため2桁増益予想としている。

セグメント別計画は消費財・サービス分野マーケティング支援の売上高が0.7%減の410億円で営業利益が18.0%減の20億50百万円、ヘルスケア分野マーケティング支援の売上高が2.6%減の149億円で営業利益が4.2%減の23億円、ITソリューション分野ビジネスインテリジェンスの売上高が3.1%増の74億円で営業利益が198.7%増の3億円としている。

通期の営業・経常利益横ばい予想を据え置いたが、第3四半期累計の進捗率は売上高が75.7%、営業利益が87.0%、経常利益が84.5%、親会社株主帰属当期純利益が94.2%で、利益進捗率が高水準だった。通期会社予想に上振れ余地がありそうだ。主力のマーケティング支援(消費財・サービス)事業では、24年以降のCXマーケティングプラットフォーム確立に向けた各種施策、SCIの刷新、リサーチ・アンド・イノベーションの次世代リサーチの拡販などを推進する方針としている。積極的な事業展開で24年6月期も収益拡大基調だろう。

■株主優待は毎年12月末の株主対象

株主優待制度は、毎年12月31日現在の1単元(100株)以上保有株主を対象として実施(詳細は会社HP参照)している。

■株価は上値試す

株価は水準を切り上げて戻り高値圏だ。23年6月期第3四半期累計業績に対しても利益高進捗率を好感する動きとなった。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。5月19日の終値は1659円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS105円06銭で算出)は約16倍、今期予想配当利回り(会社予想の42円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS776円32銭で算出)は約2.1倍、そして時価総額は約671億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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