クレスコは上値試す、24年3月期も増収増益予想で収益拡大基調

クレスコ<4674>(東証プライム)は独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションを強化している。23年3月期は増収増益だった。ITサービス事業の受注が高水準に推移して売上高と営業利益は計画を上回った。そして24年3月期も増収増益予想としている。人材投資の増加で上期は営業減益だが、通期ベースでは受注が高水準に推移して費用増加を吸収する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は自己株式取得も好感して年初来高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。

■ITサービスを主力としてデジタルソリューションも強化

独立系のシステムインテグレータで、ビジネス系ソフトウェア開発や組込型ソフトウェア開発のITサービスを主力としている。さらに成長戦略として顧客のDXを実現するデジタルソリューションも強化している。

セグメント区分は、ITサービス(エンタープライズ、金融、製造の各分野のコンサルティング・開発・保守の総合サービス)と、デジタルソリューション(自社製品Creage、インテリジェントフォルダなど、顧客のDXを実現する製品・サービスからなるソリューション群)としている。

23年3月期のセグメント別業績は、ITサービス事業の売上高が22年3月期比7.7%増の456億12百万円で営業利益(全社費用等調整前)が11.1%増の63億54百万円(内訳は、エンタープライズの売上高が3.4%増の188億39百万円で利益が5.3%増の23億74百万円、金融の売上高が3.1%増の141億15百万円で利益が5.9%増の18億20百万円、製造の売上高が21.3%増の126億57百万円で利益が23.8%増の21億59百万円)、デジタルソリューション事業の売上高が30.7%増の27億55百万円で利益が14.3%増の1億65百万円だった。

収益面では案件別の採算性が影響し、企業のIT投資関連のため年度末にあたる第4四半期の構成比が高くなる特性がある。配当方針は、連結経常利益をもとに特別損益を零とした場合に算出される親会社株主帰属当期純利益の30%相当を目途に、継続的に実現することを目指すとしている。

■M&A・アライアンスも活用

M&A・アライアンスおよびグループ子会社再編では、20年2月に北海道大学公認AIベンチャーの調和技研と資本業務提携、20年4月にシステムインテグレータのエニシアスを子会社化、21年7月に組込型ソフトウェア開発に強みを持つOECを子会社化、22年5月に子会社クリエイティブジャパンの商号をクレスコ・デジタルテクノロジーズに変更、22年7月に子会社のアルスが同じく子会社のエヌシステムおよびネクサスを吸収合併して商号をクレスコ・ジェイキューブに変更した。

22年11月には、フォーラムエンジニアリング<7088>およびインドのSRM Globalとの3社共同で、フォーラムエンジニアリングのインド現地法人コフナビインディア社(22年10月設立)が行う第三者割当増資を引き受けて、資本出資を通じた提携に関する基本合意書を締結(23年3月に発行株式数、払込日、取得株式数など一部を変更して契約締結することを決議とリリース)した。フォーラムエンジニアリングのエンジニアに特化した人材サービス「コグナビ」のインドでの展開を加速する。23年2月には日本ソフトウェアデザイン(大阪市)の全株式を取得して子会社化した。

なお23年3月には、子会社クレスコワイヤレスに対する損害賠償請求訴訟(19年11月)について、東京地方裁判所において原告(エヌティーシーアカウンティングサービス)の請求が棄却された。その後5月18日には、原告から控訴の提起がなされたとリリースしている。

■働き方改革や健康経営を推進

中期経営計画では24年3月期の目標値として売上高500億円、営業利益50億円、ROE15%以上を掲げている。新たなビジネスの柱を生み出すための重点戦略としてデジタルソリューションの強化、機動的経営の進化、人間中心経営の深化、コアビジネス領域をより強固なものにするための基本戦略としてITサービスの拡大、品質の強化、技術の強化を推進している。なお22年4月から第2創業期として会社ロゴを変更した。

20年9月には社内デジタル変革(DX)を加速させるため「ニューノーマルな働き方」に舵を切ると発表した。テレワーク体制を強化して社員の生産性向上を目指すとともに、本社や開発センターのオフィススペースの最適化、在宅勤務手当新設や通勤手当見直しなどにより、コスト削減も推進する。

健康経営関連では、21年6月に新型コロナウイルス感染症に係る支援(1億円の寄付)が評価されて日本赤十字社から「金色有功章」の楯を拝受した。21年11月には、働き方改革を通じて生産性革命に挑む先進企業を選定する日本経済新聞社「第5回 日経スマートワーク経営調査」で3つ星の評価を獲得した。22年4月には株式会社ワーク・ライフバランスが主催する「男性育休100%宣言」に賛同すると発表した。22年6月には、さらなる健康経営の促進に向けて社員642名に「健康増進手当」を初支給した。22年9月にはスポーツ庁「FUN+WALK PROJECT」に参画した。23年3月にはスポーツ庁が認定する「スポーツエールカンパニー2023」に認定された。また、経済産業省と日本健康会議が選定する健康経営優良法人認定制度に基づく「健康経営優良法人2023」に選定された。

社会貢献関連では、22年7月に公益社団法人計測自動制御学会システムインテグレーション部門とソニーセミコンダクターソリューションズが主催する「Sensing Solution アイデアソン・ハッカソン 2022」に協賛しているとリリースしている。また22年9月には、一般社団法人全国高等専門学校連合会主催の「第33回 全国高等専門学校プログラミングコンテスト」に協賛した。今後も、さまざまな活動を通じて社会の発展に貢献する方針だ。

なお23年1月には、同社IRサイトが昨年度に続いて、主要IRサイト評価機関3社から優秀なIRサイトとして表彰されたとリリースしている。日興アイ・アールの2022年度全上場企業ホームページ充実度ランキングの総合部門で最優秀サイト、ブロードバンドセキュリティのGomez IRサイトランキング2022で銀賞、大和インベスター・リレーションズの2022年インターネットIR表彰で優良賞を受賞した。

■デジタルソリューションや自社オリジナル製品を拡大

中期成長に向けて、デジタルソリューションや自社オリジナル製品の拡大を推進している。オリジナル製品・サービスではIoTのKEYAKI、AIのMinervae、クラウドのCreageを3大ブランドと定義し、ソフトウェア開発・システム開発の需要喚起を推進している。

22年4月にはUiPath社の認定リセラー「ゴールドパートナー」に認定された。UiPath製品の教育・トレーニングにおいても豊富な実績と評価の高いコンテンツを有している。22年8月には、サイバー攻撃の兆候を検知・分析し、その情報をもとに専門家による対策支援を提供するサービス「マネージドセキュリティサービス for SIEM」の販売を開始した。

22年10月には、大容量ファイル共有サービス「インテリジェントフォルダ」のiOSアプリをリリース、ベトナム子会社におけるフードデリバリー市場向け最新POSシステムの販売開始リリース、企業のDX人材を育成するDX研修サービスの提供開始をリリースした。22年11月には、画像認識AIの画像分類根拠を可視化する手法の特許を取得した。

22年12月には、セキュリティおよびネットワークソリューションの新サービスとして、脆弱性情報提供サービスとネットワーク調査サービスの提供を開始した。また、日本航空(JAL)と共同で、医療AIによる画像認識技術を活用した「航空機エンジン内部検査ツール」を開発すると発表した。23年3月にはビジネスパートナー契約を締結しているUiPath社のダイヤモンドパートナーに認定された。23年4月にはUiPath社の「UiPath Japan Partner Awards 2022」において「Revenue Growth Partner of the Year」を受賞した。

■23年3月期は増収増益着地、24年3月期も増収増益予想

23年3月期の連結業績は、売上高が22年3月期比8.8%増の483億68百万円、営業利益が12.1%増の49億98百万円、経常利益が7.4%増の51億35百万円、親会社株主帰属当期純利益が2.8%増の33億28百万円だった。配当(23年3月7日付で期末4円上方修正)は22年3月期比6円増配の50円(第2四半期末23円、期末27円=普通配当23円+創立35周年記念配当4円)とした。

増収増益で着地した。営業外費用でデリバティブ評価損が増加し、特別損失では投資有価証券評価損やコーポレートロゴ変更費用などを計上したが、ITサービス事業の受注が高水準に推移して売上高と営業利益は計画を上回った。

ITサービス事業は、売上高が7.7%増の456億12百万円で、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が11.1%増の63億54百万円だった。全体として受注が高水準に推移した。

このうちエンタープライズは、売上高が3.4%増の188億39百万円、利益が5.3%増の23億74百万円だった。運輸分野および人材紹介・人材派遣分野で大型案件が収束したが、流通サービス分野、建設・不動産分野、情報・通信・広告分野および公共分野で新規案件獲得を含めて売上拡大した。

金融は売上高が3.1%増の141億15百万円、利益が5.9%増の18億20百万円だった。主に銀行分野で基盤構築・移行案件が増加した。

製造は売上高が21.3%増の126億57百万円、利益が23.8%増の21億59百万円だった。機械・エレクトロニクス分野や自動車・輸送機器分野において、クラウド・セキュリティ案件や先行投資目的の案件が増加した。自動車・輸送機器分野の新規顧客獲得も寄与した。

デジタルソリューション事業は売上高が30.7%増の27億55百万円で、利益が14.3%増の1億65百万円だった。主力のクラウドサービス「Creage」やRPAライセンスの販売が増加し、増収効果でコスト増加を吸収した。

なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が113億81百万円で営業利益が8億91百万円、第2四半期は売上高が119億28百万円で営業利益が13億54百万円、第3四半期は売上高が120億67百万円で営業利益が14億52百万円、第4四半期は売上高が129億92百万円で営業利益が13億01百万円だった。

24年3月期の連結業績予想は売上高が23年3月期比8.5%増の525億円、営業利益が5.0%増の52億50百万円、経常利益が4.6%増の53億70百万円、親会社株主帰属当期純利益が7.6%増の35億82百万円としている。配当予想は23年3月期と同額の50円(第2四半期末25円、期末25円)としている。22年3月期の50円には記念配当4円が含まれているため普通配当ベースでは4円増配の形となる。予想配当性向は29.4%である。

24年3月期は教育研修プログラムの実施・強化、従業員確保を目的とした給与水準の引き上げ、さらに過去最大規模の新卒社員採用など、人材投資の増加で上期は営業減益(前年同期比7.4%減の20億80百万円)の計画だが、通期ベースでは受注が高水準に推移して費用増加を吸収する見込みだ。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は上値試す

5月10日に自己株式取得(上限50万株・10億円、取得期間23年5月11日~23年11月30日)、および自己株式消却(100万株、消却予定日は自己株式取得完了後に公表)を発表した。

株価は自己株式取得も好感して年初来高値更新の展開だ。利益確定売りをこなしながら上値を試す展開を期待したい。5月22日の終値は1937円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS170円00銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の50円で算出)は約2.6%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS1160円39銭で算出)は約1.7倍、そして時価総額は約446億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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