- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JPホールディングスの16年3月期は増益・増配予想で第1四半期順調、中期成長力を見直し
【アナリスト水田雅展の銘柄分析】JPホールディングスの16年3月期は増益・増配予想で第1四半期順調、中期成長力を見直し
- 2015/8/25 08:45
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JPホールディングス<2749>(東1)は保育所運営の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニーである。16年3月期は2桁営業増益・増配予想で、第1四半期(4月~6月)は順調に推移した。株価は地合い悪化の影響で急落して年初来安値を更新したが、個別の悪材料は見当たらず売られ過ぎ感を強めている。中期成長力を見直して反発局面だろう。
■保育所運営の最大手で、グループ力を活かした総合子育て支援カンパニー
04年持株会社に移行し、保育所・学童クラブ・児童館などを運営する子育て支援事業(日本保育サービス、四国保育サービス)を主力として、保育所向け給食請負事業(ジェイキッチン)、英語・体操・リトミック教室請負事業(ジェイキャスト)、保育関連用品の物品販売事業(ジェイ・プランニング販売)、研究・研修・コンサルティング事業(日本保育総合研究所)を展開している。
15年3月期末の子育て支援施設数は、首都圏中心に認可園・公設民営14施設、認可園・民設民営102施設、東京都認証保育所26施設、認可外(市認定)4施設、学童クラブ46施設、児童館8施設の合計200施設(14年3月期比18施設増加)だった。保育所運営の売上規模で競合他社を大きく引き離す業界最大手だ。
当社の保育所は保育理念を「生きる力を育む」として、オートロックや緊急通報機器など徹底して職員への安全研修も充実した安全・セキュリティ管理、食物アレルギー・感染症・食中毒などに対応するための各種マニュアル整備、保育用品一括購入によるコスト管理とコスト抑制、ジェイキャストや日本保育総合研究所による独自の幼児教育プログラム活動、ジェイキッチンによる安全な給食とクッキング保育、日本保育総合研究所による発育支援などに強みを持ち、グループ総合力を活かした総合子育て支援カンパニーである。
■保育士確保に向けて新たな採用も推進
人材活用面では、配偶者の転勤への対応や時短勤務などそれぞれのライフイベントに添った勤務体系、福利厚生・研修制度の充実、男女を問わず産休・育休取得の推進などに取り組んでいる。こうした取り組みが認められて15年3月には、女性活躍推進企業として東京証券取引所と経済産業省の共同企画である「なでしこ銘柄」に選定された。
また15年7月に16年春の新卒採用方針を発表した。保育士資格を有する学生230名を即戦力に近い人材として採用するとともに、別の新規採用枠として保育士資格を持たない新卒を多数(50名以上目標)採用する。
保育士資格を持たない新卒の新規採用については、入社内定後の秋口に社内で業界初の「保育士養成講座」を開設し、16年4月の保育士試験にチャレンジさせる。保育士を目指す意欲のある一般学生に保育士資格取得のサポートを行う業界初の試みで、教材などの費用は会社が負担する。
■第3四半期(10月~12月)の利益構成比が高い収益構造
15年3月期の四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)42億29百万円、第2四半期(7月~9月)44億09百万円、第3四半期(10月~12月)45億93百万円、第4四半期(1月~3月)46億37百万円、営業利益は第1四半期2億19百万円、第2四半期3億29百万円、第3四半期5億69百万円、第4四半期3億14百万円、経常利益は第1四半期2億55百万円、第2四半期3億56百万円、第3四半期5億86百万円、第4四半期4億39百万円だった。
毎年4月に新規施設の開園が集中して開園準備費用や人件費負担が先行するため、営業利益は第1四半期(4月~6月)および第4四半期(1月~3月)がやや低水準となり、稼働率が上昇する第3四半期(10月~12月)が高水準となりやすい。また経常利益は営業外での補助金収入の増減も影響する収益構造だ。
なお15年3月期の新規開設は、保育所17施設、学童クラブ4施設の合計21施設だった。また閉鎖は保育所3施設(認可保育所へ移転新設のため)、学童クラブ3施設(契約期間満了により撤退)だった。
また15年3月期の配当性向は33.3%だった。配当については配当性向30%前後の業績連動型配当の継続実施を基本方針としている。ROEは14年3月期比0.3ポイント上昇して18.5%、自己資本比率は同7.2ポイント低下して30.2%となった。
■16年3月期は2桁営業増益・連続増配予想、第1四半期は順調に推移
7月30日に発表した今期(16年3月期)第1四半期(4月~6月)の連結業績は売上高が前年同期比15.4%増の48億81百万円、営業利益が同13.4%増の2億48百万円、経常利益が同9.5%増の2億80百万円、純利益が同9.3%増の1億97百万円だった。
新規開設は保育所17施設、学童クラブ12施設、児童館2施設の合計31施設で、新たに名古屋市に参入した。この結果15年6月末の子育て支援施設数は、認可園・公設民営14施設、認可園・民設民営118施設、東京都認証保育所26施設、認可外(市認定)1施設、認可外1施設、学童クラブ55施設、児童館10施設の合計225施設(15年3月期末比25施設増加)となった。
通期の連結業績予想は前回予想(5月8日公表)を据え置いて、売上高が前期比14.2%増の204億11百万円、営業利益が同21.5%増の17億40百万円、経常利益が同6.3%増の17億40百万円、そして純利益が同26.5%増の12億70百万円としている。配当予想は前期比1円増配の年間5円(期末一括)で予想配当性向は32.9%となる。
新規施設開設による増収効果で、新規施設開設費用および保育士募集採用費や人件費の増加などを吸収して2桁営業増益見込みだ。なお全施設の平均稼働率は保育士不足の影響で85%程度にとどまっているが、保育士の補充が進展すれば稼働率の向上が可能としている。
通期会社予想に対する第1四半期の進捗率は売上高が23.9%、営業利益が14.3%、経常利益が16.1%、純利益が15.5%である。低水準の形だが、第3四半期の構成比が高い収益構造のためネガティブ要因とはならない。通期ベースで増収増益基調に変化はないだろう。
■中期経営計画で18年3月期経常利益21億円目指す
15年5月に発表した新中期経営計画では基本方針として、総合子育て支援企業のリーディングカンパニーとして待機児童問題の解消に寄与するため、良質な子育て支援サービス提供の拡充を加速するとともに、子育て支援事業に次ぐ第2の柱となる事業の育成を図るとしている。
また重点目標を、保育サービスの量的・質的向上、人材獲得に向けた採用活動の強化、第2の収益源の創設、経営管理の高度化、コンプライアンスの徹底およびコーポレートガバナンスの強化とした。
目標数値には18年3月期の売上高246億円、経常利益21億円を掲げている。3期間合計の開設数は保育所47施設、学童クラブ・児童館28施設、合計75施設の計画で、このうち17年3月期には東北や近畿にも進出して保育所15施設、学童クラブ・児童館7施設の開設を予定している。
■子育て支援や待機児童解消など国の重点政策を背景に中期成長
全国の保育所利用児童数は増加基調で、待機児童数は緩やかに減少傾向となっているが依然として解消せず、潜在需要も顕在化して首都圏や地方主要都市など、都市部を中心に保育サービスの需要は高水準である。
そしてアベノミクス成長戦略では「女性活用推進」を重点分野に位置付け、17年度の待機児童解消を目指して15年4月に新「子ども・子育て新支援制度」がスタートした。15年度~17年度を「取組加速期間」として約40万人分の保育の受け皿を確保する方針だ。
保育士の確保が課題だが、国家戦略特区における保育士試験の年2回実施など規制緩和、制度面での支援、運営補助金拡大などの動きが活発化している。また収益構造の改善に向けた取り組みとして、体育講師や英語教師の派遣、物販の充実、給食の請負なども推進している。国の重点政策を背景とする中期成長シナリオに変化はないだろう。
■株価は地合い悪化の影響で急落したが売られ過ぎ感
株価の動きを見ると、地合い悪化が影響した7月9日安値303円から切り返してほぼ一本調子に8月17日の356円まで上伸したが、その後の地合い悪化の影響で急反落し、24日には年初来安値となる294円まで調整した。ただし個別の悪材料は見当たらず地合い悪化に押された形だ。そして売られ過ぎ感を強めている。
8月24日の終値299円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS15円22銭で算出)は19~20倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間配当5円で算出)は1.7%近辺、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS69円14銭で算出)は4.3倍近辺である。
週足チャートで見ると26週移動平均線が戻りを押さえる形となったが、日足チャートで見ると25日移動平均線に対するマイナス乖離率が10%を超えて売られ過ぎ感を強めている。地合い悪化の影響以外に個別の悪材料は見当たらない。16年3月期は2桁営業増益・増配予想であり、中期成長力を見直して反発局面だろう。